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第5章 いらっしゃい南国パナマナ
第62話 招かねざる客
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どれだけ進んだか、いくつもの戦闘を繰り返して奥に進めど、目的地には辿り着かない。
私は既に足が限界を迎え、しゅーさんに背負われて進んでいたが、しゅーさんもまだ六歳なのだ。そろそろ、疲れも見えてきている。決して弱音は吐かないけれど。
「だりぃー飽きたー腹減ったー」
弱音吐く狼がウザイ。
兄とアールは戦闘要員なので、両手を塞ぐわけにはいかない。
「やはり、アーリーは留守番が良かったのでは」
「でも、こいつじゃないと必要な食材がわからん」
そうだよ、それに今さら帰れって言われても、無理だかんね。
とりあえず腹ペコ狼が、もう働きたくないとストライキを起こしたので、仕方なく飯の準備に取り掛かった。
といっても、たいした物も用意していないのだが。
近くの壁の岩を運び、小さな竈を作り、折りたたみ軽量鍋を置く。終わり。
「終わりじゃないだろーが!」
狼が駄々こねてうるさい。
固形燃料を下に置き、とりあえず私の身につけたエバの火の力を出そうとしたが……。
「駄目でしゅ。精霊使えないでしゅ。ちっ」
「精霊が使えないんじゃなく、ここが魔界に近い位に、魔素が強いのが悪い」
ジョージ曰く、胸がモヤモヤして喉に引っかかるから、くしゃみしたらまとめて出たそうで、こらアカンと近くの洞窟に封印したと。
うん、年寄りあるあるだ。痰とか絡むよね?
……じゃないな。
リュックの中をがさごそ漁っても、こんなに時間がかかると思っていなかったので、乾燥保存の芋パン程度と、あとは飴と調味料は沢山持ってきている。
だって食材は、現地調達予定だったんだもの。ちぇっ。
「芋粥……かなぁ」
とりあえず芋パンを、ボロボロと手で潰して水に入れた。
「火つけて欲しいでしゅ」
「はい、ここで残念なお知らせです。うちは馬鹿鳥がいたので、火おこしの道具がありません」
「馬鹿はお前だーっ! 馬鹿狼ーっ!」
私とアールが喧嘩している隙に、うちの兄としゅーさんがこそこそと何かしていた。
チラリと見ると、何かの木に剣を勢いよくこすりつけて、小さな火花を出している。
それにロコがリュックから出した葉っぱを細かくしたのを火種にして、なんと火が付いた。
「ふぉぉおーっ!」
「火はついたけどね、でも食材が限られるね」
「ちょっと、さっきのネズミとってくるわ」
「まてアール、ふざけんなアール」
絶対に嫌だ!
とりあえず、崩した芋パンは溶けて、芋がゆ風味のトロトロになった。
「あーえんやーさっさー俺の塩っ、ほいほいっと」
小声で歌いながら、やる気のないロコの出した塩も投入。
だが、そこで手詰まりだ。
このままでも仕方ないか……と思っていると、またまた兄としゅーさんが、こそこそ何かしていた。
「……というわけで兄上、僕のおやつを進呈します」
「まだ結婚は認めていないが、その肉は受け取ろう」
兄がしゅーさんのおやつの、乾燥ジャーキーもどきの肉を、剣で細かく裂きながら、鍋に投入してくれた。
もはや、ここまでかと思ったその時に、アールが素早く反応した。
「クソがっ、向こうから来やがった」
「魔物でしゅか?」
「やっかいな気配をまとった、招かねざる客だ」
私たちは一斉に、この先に進むであろう道から、逆にこちら側に向かって来た気配を警戒する。
「さっきは、あちら側にいたから、わざわざ避けてやったのにな!」
アールは何かを感じているみたいだが、私にはわからない。
せめて精霊の力が通じれば、アールやエバなど契約した精霊の思考を少しは読み取れるのに。
小さな何か引きずる音が、ざっ、ざざっと近づいてくる。
アールを先頭に、兄がその次に私たちを守る盾のように身構えた。
私を抱きしめる、しゅーさんの手に力がこもる。
「万が一の時は、彼女を連れて逃げて下さい。あなたはこの洞窟に詳しいのでしょう?」
しゅーさんの問いかけは、ロコにだ。
ロコも緊張した顔つきながらも、私を見つめて頷いた。
「しゃーねー。俺が担いで逃げてやる」
「頼みました」
「嫌でしゅよ、もうしゅーさんと離れないでしゅ」
異次元を超えて巡り合えたのに、離れる話なんか勝手に決めるな。
そんな私たちのやり取りを聞いていたのか、兄が私たちを背中に庇いながら言った。
「アーリーだけじゃない、お前たち三人共に逃げる準備はしておきなさい。何があっても、私とアールで時間を稼いであげるから」
「に、にーたん」
「そうだよ、お兄ちゃんだからね」
まだ十八そこらの、この世界では、やっと成人している方向音痴小僧を、置いて逃げれるはずがないじゃないか。
「気弱な事を言うなでしゅ!」
「そうだ、チビの言う通り! やっちまえばいい話だ」
美形のアールが、ペロリと舌で唇を舐めるさまは、まさに獣だ。
近づく音に警戒する中で、とうとうそいつは姿を現した。
「ふっ、ふぐぅ……飯……久しぶりの飯の匂いがするぅ……ううっ」
ボロボロの黒の布を身にまとい、頭にお揃いの汚れた黒いターバンを身に着けた、うだつのあがらなさそうな、小太りのおっさんだった。
「え、人間?」
「アールは大袈裟でしゅ!」
「いやまて、こいつは、おい! 何者だ!」
アールの怒鳴り声に、男はビクリと身をすくませて、そして勢いよくその場に土下座した。
「お願いやぁぁああーっ! ごはん食べさせて下さぁーいっ!」
私は既に足が限界を迎え、しゅーさんに背負われて進んでいたが、しゅーさんもまだ六歳なのだ。そろそろ、疲れも見えてきている。決して弱音は吐かないけれど。
「だりぃー飽きたー腹減ったー」
弱音吐く狼がウザイ。
兄とアールは戦闘要員なので、両手を塞ぐわけにはいかない。
「やはり、アーリーは留守番が良かったのでは」
「でも、こいつじゃないと必要な食材がわからん」
そうだよ、それに今さら帰れって言われても、無理だかんね。
とりあえず腹ペコ狼が、もう働きたくないとストライキを起こしたので、仕方なく飯の準備に取り掛かった。
といっても、たいした物も用意していないのだが。
近くの壁の岩を運び、小さな竈を作り、折りたたみ軽量鍋を置く。終わり。
「終わりじゃないだろーが!」
狼が駄々こねてうるさい。
固形燃料を下に置き、とりあえず私の身につけたエバの火の力を出そうとしたが……。
「駄目でしゅ。精霊使えないでしゅ。ちっ」
「精霊が使えないんじゃなく、ここが魔界に近い位に、魔素が強いのが悪い」
ジョージ曰く、胸がモヤモヤして喉に引っかかるから、くしゃみしたらまとめて出たそうで、こらアカンと近くの洞窟に封印したと。
うん、年寄りあるあるだ。痰とか絡むよね?
……じゃないな。
リュックの中をがさごそ漁っても、こんなに時間がかかると思っていなかったので、乾燥保存の芋パン程度と、あとは飴と調味料は沢山持ってきている。
だって食材は、現地調達予定だったんだもの。ちぇっ。
「芋粥……かなぁ」
とりあえず芋パンを、ボロボロと手で潰して水に入れた。
「火つけて欲しいでしゅ」
「はい、ここで残念なお知らせです。うちは馬鹿鳥がいたので、火おこしの道具がありません」
「馬鹿はお前だーっ! 馬鹿狼ーっ!」
私とアールが喧嘩している隙に、うちの兄としゅーさんがこそこそと何かしていた。
チラリと見ると、何かの木に剣を勢いよくこすりつけて、小さな火花を出している。
それにロコがリュックから出した葉っぱを細かくしたのを火種にして、なんと火が付いた。
「ふぉぉおーっ!」
「火はついたけどね、でも食材が限られるね」
「ちょっと、さっきのネズミとってくるわ」
「まてアール、ふざけんなアール」
絶対に嫌だ!
とりあえず、崩した芋パンは溶けて、芋がゆ風味のトロトロになった。
「あーえんやーさっさー俺の塩っ、ほいほいっと」
小声で歌いながら、やる気のないロコの出した塩も投入。
だが、そこで手詰まりだ。
このままでも仕方ないか……と思っていると、またまた兄としゅーさんが、こそこそ何かしていた。
「……というわけで兄上、僕のおやつを進呈します」
「まだ結婚は認めていないが、その肉は受け取ろう」
兄がしゅーさんのおやつの、乾燥ジャーキーもどきの肉を、剣で細かく裂きながら、鍋に投入してくれた。
もはや、ここまでかと思ったその時に、アールが素早く反応した。
「クソがっ、向こうから来やがった」
「魔物でしゅか?」
「やっかいな気配をまとった、招かねざる客だ」
私たちは一斉に、この先に進むであろう道から、逆にこちら側に向かって来た気配を警戒する。
「さっきは、あちら側にいたから、わざわざ避けてやったのにな!」
アールは何かを感じているみたいだが、私にはわからない。
せめて精霊の力が通じれば、アールやエバなど契約した精霊の思考を少しは読み取れるのに。
小さな何か引きずる音が、ざっ、ざざっと近づいてくる。
アールを先頭に、兄がその次に私たちを守る盾のように身構えた。
私を抱きしめる、しゅーさんの手に力がこもる。
「万が一の時は、彼女を連れて逃げて下さい。あなたはこの洞窟に詳しいのでしょう?」
しゅーさんの問いかけは、ロコにだ。
ロコも緊張した顔つきながらも、私を見つめて頷いた。
「しゃーねー。俺が担いで逃げてやる」
「頼みました」
「嫌でしゅよ、もうしゅーさんと離れないでしゅ」
異次元を超えて巡り合えたのに、離れる話なんか勝手に決めるな。
そんな私たちのやり取りを聞いていたのか、兄が私たちを背中に庇いながら言った。
「アーリーだけじゃない、お前たち三人共に逃げる準備はしておきなさい。何があっても、私とアールで時間を稼いであげるから」
「に、にーたん」
「そうだよ、お兄ちゃんだからね」
まだ十八そこらの、この世界では、やっと成人している方向音痴小僧を、置いて逃げれるはずがないじゃないか。
「気弱な事を言うなでしゅ!」
「そうだ、チビの言う通り! やっちまえばいい話だ」
美形のアールが、ペロリと舌で唇を舐めるさまは、まさに獣だ。
近づく音に警戒する中で、とうとうそいつは姿を現した。
「ふっ、ふぐぅ……飯……久しぶりの飯の匂いがするぅ……ううっ」
ボロボロの黒の布を身にまとい、頭にお揃いの汚れた黒いターバンを身に着けた、うだつのあがらなさそうな、小太りのおっさんだった。
「え、人間?」
「アールは大袈裟でしゅ!」
「いやまて、こいつは、おい! 何者だ!」
アールの怒鳴り声に、男はビクリと身をすくませて、そして勢いよくその場に土下座した。
「お願いやぁぁああーっ! ごはん食べさせて下さぁーいっ!」
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