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第5章 いらっしゃい南国パナマナ
第64話 わいの名はゼン
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私は鍋に向かって、手をかざす。
「二日目が熟成していい感じ、おいちくなぁーれ!」
そうです皆さま。カレーは二日目が命!
シュピンと輝く光の中で、私はフンス! と気合を入れて仁王立ちした。
「おおっ、神々しい」
今こそ私のスキルが、輝く時! 熟せよカレー!
「ナマステ~」
「「ナマステ~」」
しゅーさんと小太り行商の声は続く。
「なんの呪文だよ、こえーな」
そか、ロコにはわかんないよね?
ならば食べて、思い知るがいいと思い、ふと気付いた。
「入れ物どうしゅるでしゅか?」
各自の水筒の蓋や、それ以外で代用は効くが、なんせ洗う水が貴重すぎる。
リュックを軽量化したのが仇になった。せめて、南国のヤシの葉っぱとか持っていれば、ペーパータオル代わりに使えたのに。
一人ずつ、鍋から直食べは嫌だなと思案していると、行商は言った。
「器なら、いいのありまっせ」
背負っていた小汚いリュックから、オッサンは茶色の器を取り出した。
「原料が土の焼き物なんで、使い終わったら、割って土に埋めたらいいんですわ」
「よこせでしゅ!」
器にカレーを盛って、皆に配分した。
ワクワク顔の転生組プラス雑食狼と、警戒心マックス小僧と、怯える兄がいた。
「では、いただきまーしゅ!」
我慢できずに、フライングして食べ始めたのは、アールだった。
「うま! てかなんだこれ! 美味すぎるだろ!」
「中辛でしゅね。スープで薄まってるでしゅが、パンが欲しくなるでしゅ」
「まゆまゆ、やっぱライスでしょ」
「懐かしい! ああっ生き返る!」
私たちが貪っていると、やっと兄とロコが食べ始めた。
「アールに異常がないなら、食べて大丈夫だな」
「シリウス王子めぇ……」
アールと兄は仲良しだなあ。
ロコも一口食べて、目を輝かせた。
「マジで美味い! チビは天才だな!」
「チビじゃないでしゅが、天才でしゅよ」
拝め讃えよ、そしてひれ伏せ。
ロコは夢中で食べている。
「お前、そんなチビなのに料理が得意なんだな」
「でしゅでしゅ」
「姫なのに、生活に苦労してんのか?」
「昔は苦労してたでしゅ」
まだ四歳だがな。
ロコはジッと私を見つめて、こう言った。
「いい嫁さんになりそうだし、俺の嫁になれ」
「なるわけないだろーっ!!」
立ち上がって叫ぶしゅーさんに、皆の視線が釘付けになった。
本気でキレたしゅーさんは、本当にレアだ。
器を持ったまま、ロコに迫りしゅーさんは怒鳴りつけた。
「彼女は僕の婚約者だ!」
「まだ結婚してねーなら、確定じゃないよな?」
十歳対六歳の、男と男の対決だ。
「ここは、喧嘩をやめて、取り合わないでと、いい女を気取るべきでしゅかね?」
「お嬢ちゃんは人気者やなー。まあ子供同士の喧嘩やし、放置が一番やで」
行商のおっさんに、おいでおいでされたので、器を持っておっさんの横に座りなおして、しゅーさん達を見守りながら食事を続けた。
「おじしゃんの正体を、教えて欲しいでしゅ」
どストレートに聞いてみた。
器の中身を、ズズッと全てすすり上げた行商は、フゥと溜息をつく。
「まず名前から名乗ろうか。この世界では、ゼン言いますねん。大昔に魔界で転生したんやが、この通り人間として生まれてもうてん」
「ま、魔界っ!!」
私の悲鳴に、喧嘩していた二人まで停止する。
兄は無言で剣に手をやり、アールは薄く笑った。
「いやいや、魔界もこの世界程度に広いんや。大昔に攫われた、人間だけが集まる集落とかもある位やで」
「そうでしゅか、楽しい場所でしゅか? テストも学校もないでしゅか?」
「それはないんやが、お嬢ちゃん中身割と古いんか?」
「こっちはいいから、そっちがキリキリ吐けぃ! でしゅ!」
ほれほれと促すと、ゼンはそやなと頷いた。
「ともかく恩人やしな、お嬢ちゃんは。なんにせよ、前の世界で生き別れた妹を探して、なんとか見つけたんはええんやが、問題があってな」
「問題?」
「妹が鬱になってしもうて、わいがなんとか元気づけたくてな。魔界中を旅して、美味しいもの食べさせてやろ思ってん。けどな、魔界って不毛な場所ばかりやし、妹ももう飽きてる食べ物しかなくって、ほなどないしようと迷ってたんや」
「魔界にも、食材あるでしゅか?」
「あるけど、こっちに来るのは危険やし、お勧めせん。簡単に行き来できやんやろうし、わいみたいに人間でも魔素の影響受けて、体質が変化して辛いことになるねん」
「なら、どうやってここに来た」
兄が突然口を挟むと同時に、私はヒョイと抱き上げられゼンと隔離された。
足をブンブン振って抗議するが、無視された。
「そら、どっかの精霊が隙みせるさかいに、魔界との境界線が少し開いた事があってん。わいは、たまたまその隙間に転がってしもうて、慌てて戻ろうとしたら隙間が消えてしもうてん」
「なら被害者でしゅね」
「ほんまやで。まあ仕方ないから、わいの収納スキル使って行商でもしながら、この世界の美味しい食材を集めて、妹に持って帰って元気づけたろうと思ってたけど、さっき体質の話したやろ?」
「うん! でしゅ」
「こっちの世界では、食事しても飢えて飢えて仕方なかってん」
「でしゅ?」
「最低限の命の維持はできても、なんかこう……力がこもってないというか、飢えて飢えて仕方なかった時に、ここの洞窟から美味しい匂いがして入ってみたら、塩があってな」
「俺の塩ーっ!」
ロコが叫んだ。うるさい。
「二日目が熟成していい感じ、おいちくなぁーれ!」
そうです皆さま。カレーは二日目が命!
シュピンと輝く光の中で、私はフンス! と気合を入れて仁王立ちした。
「おおっ、神々しい」
今こそ私のスキルが、輝く時! 熟せよカレー!
「ナマステ~」
「「ナマステ~」」
しゅーさんと小太り行商の声は続く。
「なんの呪文だよ、こえーな」
そか、ロコにはわかんないよね?
ならば食べて、思い知るがいいと思い、ふと気付いた。
「入れ物どうしゅるでしゅか?」
各自の水筒の蓋や、それ以外で代用は効くが、なんせ洗う水が貴重すぎる。
リュックを軽量化したのが仇になった。せめて、南国のヤシの葉っぱとか持っていれば、ペーパータオル代わりに使えたのに。
一人ずつ、鍋から直食べは嫌だなと思案していると、行商は言った。
「器なら、いいのありまっせ」
背負っていた小汚いリュックから、オッサンは茶色の器を取り出した。
「原料が土の焼き物なんで、使い終わったら、割って土に埋めたらいいんですわ」
「よこせでしゅ!」
器にカレーを盛って、皆に配分した。
ワクワク顔の転生組プラス雑食狼と、警戒心マックス小僧と、怯える兄がいた。
「では、いただきまーしゅ!」
我慢できずに、フライングして食べ始めたのは、アールだった。
「うま! てかなんだこれ! 美味すぎるだろ!」
「中辛でしゅね。スープで薄まってるでしゅが、パンが欲しくなるでしゅ」
「まゆまゆ、やっぱライスでしょ」
「懐かしい! ああっ生き返る!」
私たちが貪っていると、やっと兄とロコが食べ始めた。
「アールに異常がないなら、食べて大丈夫だな」
「シリウス王子めぇ……」
アールと兄は仲良しだなあ。
ロコも一口食べて、目を輝かせた。
「マジで美味い! チビは天才だな!」
「チビじゃないでしゅが、天才でしゅよ」
拝め讃えよ、そしてひれ伏せ。
ロコは夢中で食べている。
「お前、そんなチビなのに料理が得意なんだな」
「でしゅでしゅ」
「姫なのに、生活に苦労してんのか?」
「昔は苦労してたでしゅ」
まだ四歳だがな。
ロコはジッと私を見つめて、こう言った。
「いい嫁さんになりそうだし、俺の嫁になれ」
「なるわけないだろーっ!!」
立ち上がって叫ぶしゅーさんに、皆の視線が釘付けになった。
本気でキレたしゅーさんは、本当にレアだ。
器を持ったまま、ロコに迫りしゅーさんは怒鳴りつけた。
「彼女は僕の婚約者だ!」
「まだ結婚してねーなら、確定じゃないよな?」
十歳対六歳の、男と男の対決だ。
「ここは、喧嘩をやめて、取り合わないでと、いい女を気取るべきでしゅかね?」
「お嬢ちゃんは人気者やなー。まあ子供同士の喧嘩やし、放置が一番やで」
行商のおっさんに、おいでおいでされたので、器を持っておっさんの横に座りなおして、しゅーさん達を見守りながら食事を続けた。
「おじしゃんの正体を、教えて欲しいでしゅ」
どストレートに聞いてみた。
器の中身を、ズズッと全てすすり上げた行商は、フゥと溜息をつく。
「まず名前から名乗ろうか。この世界では、ゼン言いますねん。大昔に魔界で転生したんやが、この通り人間として生まれてもうてん」
「ま、魔界っ!!」
私の悲鳴に、喧嘩していた二人まで停止する。
兄は無言で剣に手をやり、アールは薄く笑った。
「いやいや、魔界もこの世界程度に広いんや。大昔に攫われた、人間だけが集まる集落とかもある位やで」
「そうでしゅか、楽しい場所でしゅか? テストも学校もないでしゅか?」
「それはないんやが、お嬢ちゃん中身割と古いんか?」
「こっちはいいから、そっちがキリキリ吐けぃ! でしゅ!」
ほれほれと促すと、ゼンはそやなと頷いた。
「ともかく恩人やしな、お嬢ちゃんは。なんにせよ、前の世界で生き別れた妹を探して、なんとか見つけたんはええんやが、問題があってな」
「問題?」
「妹が鬱になってしもうて、わいがなんとか元気づけたくてな。魔界中を旅して、美味しいもの食べさせてやろ思ってん。けどな、魔界って不毛な場所ばかりやし、妹ももう飽きてる食べ物しかなくって、ほなどないしようと迷ってたんや」
「魔界にも、食材あるでしゅか?」
「あるけど、こっちに来るのは危険やし、お勧めせん。簡単に行き来できやんやろうし、わいみたいに人間でも魔素の影響受けて、体質が変化して辛いことになるねん」
「なら、どうやってここに来た」
兄が突然口を挟むと同時に、私はヒョイと抱き上げられゼンと隔離された。
足をブンブン振って抗議するが、無視された。
「そら、どっかの精霊が隙みせるさかいに、魔界との境界線が少し開いた事があってん。わいは、たまたまその隙間に転がってしもうて、慌てて戻ろうとしたら隙間が消えてしもうてん」
「なら被害者でしゅね」
「ほんまやで。まあ仕方ないから、わいの収納スキル使って行商でもしながら、この世界の美味しい食材を集めて、妹に持って帰って元気づけたろうと思ってたけど、さっき体質の話したやろ?」
「うん! でしゅ」
「こっちの世界では、食事しても飢えて飢えて仕方なかってん」
「でしゅ?」
「最低限の命の維持はできても、なんかこう……力がこもってないというか、飢えて飢えて仕方なかった時に、ここの洞窟から美味しい匂いがして入ってみたら、塩があってな」
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ロコが叫んだ。うるさい。
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