転生幼女は発酵スキルで、異世界に和食革命を起こす!味噌、醤油、酢を作って餌付けしたら、いつの間にか世界に名が轟いていた件

西野和歌

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第5章 いらっしゃい南国パナマナ

第65話 帰りたいんや

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「なんにせよ、改めてお嬢ちゃんに感謝や。こんなに腹が満ちたんは久しぶりや」

 涙目で、ゼンは大きなお腹をさすりながら、ペコペコと頭を下げた。

「アール、このデブを魔界に返せないんでしゅか?」
「無理」
「うわぁああっ、あかんのかーいっ! やっと帰れる思ったのに!」

 今度はゼンはむせび泣く。いちいちオーバーアクションで、デブうざい。
 私はアールに尋ねてみた。

「精霊の隙がうんちゃら~で、隙間からデブなのに、転がって来たらしいでしゅよ?」
「我はそんなヘマはしない」
「お前がどーではないでしゅ。なんとかならないでしゅか?」
「魔界の扉を開ければ、いけるかもな」
「デブ、あきらめろでしゅ」

 うぉおーん! とこれでもかと泣きわめき、ダンジョン内にて音が響いてうるさい。
 皆で耳に指をつっこみつつ、アールが心から嫌そうに確認した。

「まず、こっちに来た時は、どの国だった?」
「ううっ、雪が降ってました」
「よし、わかった。あきらめろ」

 ちゃんと説明してやれよ馬鹿犬。ほら、絶望の顔してこっちをガン見してるだろうが。
 両手をすり併せて、何卒・何卒ってされても、こっちは宗派が違うんだわ。
 うちはインチキ女神教ですわ。

「出た場所から戻るのが一番なんだが、今聞いた限り、一発でわかった。ゼファーのとこなら、あきらめろ」
「ど、どうしてや!」
「あいつは、自暴自棄になってるからな。もうしばらく待てば勝手に消えて、魔界の隙間ができるかもな」
「ちょっと待て! でしゅー!!」

 今、なんか怖いこと言わなかった? サラリと言ったよね? あの馬鹿狼。
 ブルブル振るえる拳を握りしめて、アールに念のために確認した。

「ゼファーって、なんでしゅか?」
「北の国の事だな。そこの精霊の名がゼファーってんだが、俺たちの中でも一番面倒なやつで、一番状態が良くない」
「し……死にかけてるでしゅか?」
「死ぬという概念はないが、消えるつもりらしいなアイツ。陰鬱で根暗な奴だったが、さらに拍車がかかって、もう加護する気もないらしい」
「ち、ちちち、ちょっと待つでしゅ! 米はどうなるでしゅかーっ!」
「しらん」

 まてまて、デブや精霊はともかく、お米は一番大事だろ。
 というか、どんな嫌な精霊だよ、それ。

「そんな精霊やから、わいが転がり出てしもうたんや」
「まあ、結局は運だろうな。たくましく生きろよ」
「なんとかならんのかいっ! わいはともかく、妹が心配なんや!」

 うぉんうぉん泣いてるデブに、さすがに私は何も言えなかった。
 なぜなら、こいつも魔界から来たとはいえ、被害者だからだ。

 ジロリとアールを見ると、私の視線を感じたのか、頭をガリガリと掻いてあーあと上を見た。

「まあ、あいつが元気を取り戻せば、まだなんとかできるかもな? しらねーけど」

 やけっぱちで言うアールに、やっとデブは泣き止んだ。

「てか、お嬢ちゃん、デブデブ聞こえてるんやが」
「ごめんでしゅ、デブ」
「ともかく、北の国に向かいますわ」

 よっこいしょとデブは立ち上がり、そして私の頭を撫でてくれた。

「ありがとうなお嬢ちゃん。お礼にいい事教えたるわ」

 こそこそと耳打ちされてる姿を、すごい目で兄としゅーさんが睨んでた。

「帰れるといいでしゅね」
「おおきに、ほなまた」

 お腹をポンポコリーンして、去ろうとするデブに、私は保存食の乾パンを差し出した。

「これやるでしゅよ、生き延びるでしゅ」

 それは、荒れ地で私のスキルを込めた非常食だ。
 アールやエバが小腹が減るたびに、チビチビと与えていた残り。
 どれだけ食べても飢えが止まらないなんて、地獄でしかないだろう。

「ほれ、以後も恩に着るでしゅよ?」
「ありがたやーありがたやー」

 エグエグと泣きながら、受け取ったゼンは大きく手を振って、私たちが来た入り口に向かって歩いて行った。

「……たとえ人間だろうと、あいつは魔界に染まってるんだが? 人の姿の我を精霊だと見抜いたり、危険な存在だ」
「それでも、人に危害を加えない限りは、デブは被害者でしゅ」
「それが、お前の答えなんだな?」

 アールが真剣に、私の目を見つめてきた。
 私はそらさずに答えた。

「私たちが転生してきたのは、この世界の意思だよね?」
「さあな」
「こちらに被害がないうちは、仲間でしゅよ」

 数少ない、懐かしい思い出の地の仲間だ。
 しゅーさんが、下をうつむく。
 私はトテチテとしゅ-さんの前に立ち、ギュッと抱きついた。

「ちゃんとアタチを覚えていてくれて、ありやとでしゅよ」
「この世界で、何も知らずに新しい人生を歩んだ方が良かった?」

 きっと、何度も何度も悩んだ迷いを、しゅーさんは絞るような声でつぶやいた。
 私はブンブンと大きく首を横に振る。

「あのでしゅね、わかったんでしゅよ」
「何をだい? まゆまゆ」
「過去の幸せも引き継いで、この世界でも幸せを足していくとでしゅね……」
「うん」

 私は今度は、私としゅーさん以外を、てぃてぃと指さしていった。

「ほら、愉快な仲間たちがでしゅね」
「誰が愉快な仲間だチビ姫め」
「俺をなんで愉快に入れた!」
「アーリー、お兄ちゃんだよ」

 私は、奴らを一通り指さした後に、しゅーさんにニッコリと笑った。

「楽しさが、前と今で倍プッシュだーっ!」
「あははっ、まゆまゆ! 大好き!」

 ダッコされて、グルグルと二人で回る。
 私もしゅーさんも、なぜか楽しくて笑いが止まらない。

「しゅーさん大好きっ!」

 私の叫びに、別の声がかぶさった。

「アーリー、私も大好きだーっ!」
「うっさいでしゅー!!」

 ともかく空気読め!


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