転生幼女は発酵スキルで、異世界に和食革命を起こす!味噌、醤油、酢を作って餌付けしたら、いつの間にか世界に名が轟いていた件

西野和歌

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第5章 いらっしゃい南国パナマナ

第66話  やっと到着でしゅよ

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 デブことゼンと別れて、私たちは再び奥を目指した。

「あのオッサンは、魔物に襲われなかったんだな」

 ロコの言葉に、アールが反応する。

「お仲間の匂いがしたから、攻撃しなかった可能性が高い。そもそも、お前の塩に惹かれてここに来たらしいぞアイツ」
「知らねーよ!」

 二人で先頭で、なんだかんだと言っている。
 私は、しゅーさんと手を繋いで、なぜか兄とも繋いでいる。
 つまり、両手をそれぞれに繋がれている状態だ。

 魔物も出ずに、やがて開けた広い空間にたどりついた。
 天井に少しの隙間があり、そこから緑の蔦が茂って壁を覆っている。
 太陽の光らしい明かりも、糸のように注いでいた。

「なんだか空気が違うね」

 しゅ-さんがいう通り、先ほどの洞窟独特のような匂いと違い、久しぶりの新鮮な森林浴のような、清々しい空気が循環していた。

 その広い空間の先は見えない。きっと、奥へ奥へと続くのだろうが、両壁のみえる部分は、茶色と灰色に変色した人口石の跡があり、少し前方に階段状の祭壇のようなものも設置されている。

「ここがゴールでしゅか?」
「そうだ、ここが最後の試練の部屋だ」
「試練? 何をするでしゅか?」
「あの祭壇に、スキルを流し込むんだ」
「へー」

 兄としゅーさんの手を振り切って、私はドタバタと走って、祭壇の前に来た。
 後ろで何か叫んでいるが、とっとと無視して階段を駆けのぼり、祭壇の台に手をかざす。

 何段かの石階段の祭壇を登った先にあった、石灯篭のような四方が窓のように空いた台に手を突っ込む。

「スキル発動! おいちくなーれっじゃなくって、なんかちょーらいっ!!」

 ピカーッと私の金色の光が周囲を覆い、階段を登り切った兄と、しゅーさんは眩しさに目を閉じた。
 階段下の呑気二人も、口笛をふく狼や、うわぁと驚く小僧の声がする。
 けれど、私は知ったこっちゃない。

 実はさっき、こっそり教えて貰った事の一つ。
 この台座には秘密がある。

『たぶん力を注げば、何か出てくる仕掛けがあると思いますねん。昔、ワイの魔界で本で見た記憶がありますさかい、試す価値はあると思うで?』

 デタラメ関西弁だが、いい事を教えてくれた。
 ともかく試す価値ありと、私は欲望のままにスキルを注ぐと、台座に光が吸い込まれていき、どこかに流れていく気配はする。

「んんーっ?」
「へー、あいつ面白い仕掛け使ってんなー。まあ面倒くさがりの、あいつらしいけどな」
「これは、どこに流れて行ってるでしゅか?」
「そら決まってる。サウスの中だ。つまり、あいつ自身が動かなくても、ここに注げば、あいつに補充される仕組みだ。古いカラクリだな」
「ジョージが元気になるなら、それでいいでしゅ」

 亀はあまり動かないものでしゅよ。
 三男が小さいときに、友達が夜店で買ったけど、いらないからと川に捨てようとしたミドリガメを、泣いて引き受け隠れて飼育していたんだよね。
 そこで次男がこっそり、辞典で調べて給食の残りから餌を確保して、長男は私に当時の流行テレビの、世界の色んな秘境紹介テレビを見せたんだ。

 そこで、たった一匹残ったロンサム・ジョージ特集を見せて、私が大泣きしているタイミングで隠していた亀を持ってきて、自分たちで世話をするから飼育させてくれと交渉してきた。
 わが子たちながら、三兄弟の連携にあっぱれだ。
 しゅ-さんも、亀の飼育経験があるというので、あの亀だけは我が家の一員として迎えられることになった。

「お母さんが名前決めてよ」
「なら、宝石店の名前で、カメリヤ」

 まさか、あんな小さなミドリガメが大きくなるなんて。
 しかも、冬には冬眠するんだよ? 家亀なのに。
 こうして、カメリヤはすくすくと何年も育ち、最後は我が家の庭に埋められた。

 私が前世で唯一飼育したのが、この亀だけだ。
 どうして他を飼育しなかったのかって?

 金が、かかるでしょ?
 餌だけでなく、病気になった時の命の責任まで、負える余裕はなかったからね。
 それに、もう別れの悲しい気持ちはゴメンだったんだよ。

「ん? どうしたチビ姫様」
「はっ! ちょっと昔を思い出していたでしゅ……って、んー?」
「なんだ?」
「手のひらに、なんかあるでしゅ」

 手を引き出して見てみると、手のひらにキラキラの飴玉が一つポツンとあった。

「あーサウスからだな」
「しけてるでしゅね、飴玉一つだけでしゅか」

 仕方ないなーと、ポイッと口に放り込むと、周囲があーあという顔をしていた。
 レロレロ、ガリガリ、ゴックン。

「うまかったか?」
「甘かったでしゅけど、物足りないでしゅ」
「……あいつも、こいつでいいのかな?」
「でしゅ?」

 兄としゅ-さんは、その飴玉に覚えがあるみたいだ。
 ワナワナとしている二人に、可愛く小首を傾げて聞いてみた。

「どうしたでしゅか?」
「知らないものを、未確認で口に入れてはいけません!」
「にーたんうるちゃい。しゅーさん?」
「今のって、精霊様の契約の飴じゃないの?」
「……はっ!」

 そういえば、こんな味だったような?
 ソロリとアールを見ると、ニッコリと私の肩を叩いて宣言した。

「よし、土のサウスの力も取り込んで、おめでとうかな?」
「「ええ――――っ!!」」

 私と、そしてロコの叫びが重なった。
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