転生幼女は発酵スキルで、異世界に和食革命を起こす!味噌、醤油、酢を作って餌付けしたら、いつの間にか世界に名が轟いていた件

西野和歌

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第5章 いらっしゃい南国パナマナ

第69話 ビバ! 豊作でしゅ!

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 なんでもゼンいわく、この石は土壁から生まれているらしく、ある種の生命体に近いそうだ。
 石は石を生み土の中で成長させ、育った時に出産のために壁の側面まで露出するのでは? と言っていた。
 実際に、壁深く掘ると育成中の小さな小石はあったものの、一度でも小石が空気に触れると大きくなる事はなかったし、掘って空気を含ませた部分に石が発生する事はない。

「魔界にも似た石があるそうでしゅ。あっちは宝石みたいな、特殊な石を作るらしいでしゅけど、生石って言うらしいでしゅよ」
「……まあ、奴は生かしておいて正解だったかもな。また聞きたい情報があれは、絞めればいいし」
「狼が物騒で、鼻に胡椒を詰め込んでやりたいでしゅよ」
「遊んでやったのに、なんだよ」

 プンスコ怒るアールの相手なんぞしていられない。
 私は兄の手を引いて、グルリと目の前の大きな祭壇の横を回って裏に向かう。
 やはり奥は広く先が見えないが、行けば行くほどに緑の蔦が壁や天井から垂れ下がっていた。

 (息子たちが好きだった、天空の飛ぶお城の中みたいな雰囲気はあるけどなぁ)

 私はそのまま、壁際の太そうな茎を触る。

「うへぁ」
「こら危ないアーリー。お兄ちゃんに任せな……うわぁ気持ち悪い、なんだブヨブヨ」

 太い緑の蔦の部分を触ると、見た目の硬そうな印象と違って、ブヨブヨとした柔らかさがあった。
 これでゼンに教えて貰った、この迷宮の最後の秘密が明かされる。

「にーたん、この蔦切って」

 私は再度、気持ち悪いのを我慢して、プヨプヨとした蔦を揉んでいき、なんとなく感触があった部分を指さした。
 ここだ、ここと指さすと、兄は嫌そうな顔をしながらも私を背後にかばって、剣で切り裂いた。

 プシュッと水と共に、黄色と赤の固形がゴロンと転がり出てきた。

「バニャニャー!」
「は? え? 確かに……は?」

 南国の名産品で、我が国では高級品のバナナ様である。
 うちの国で、なんとか無理やり栽培している小ぶりの白っぽいのと違って、色合いも鮮やかな、ツヤツヤなバナナが転がり出てきた。
 しかもグローブみたいな大きさの、黄色と赤のバナナの房が一つずつだ。

 そう……本来ならバナナの木からとれる果物だが、ここのは格別な味だそうだ。
 一応、デブが毒見をしているが、格別な味というのが気になって、一本黄色をもいで皮をむいて、ワクワクと口に運ぼうとしたら、兄にサッと横取りされた。

「シャアアーッ!!」
「威嚇してもダメです。いきなり食べない。ちょっと待ちなさい」

 ヒョイと兄がアールに渡すと、なんのためらいもなくアールは食べた。
 大きな口で三回程度で一気に食べ終えると、たった一言。

「うん、うまい」
「よし食べよう、アーリー」
「……おい、待て、王子……お前」
「アタチのバニャニャー!」
「うん、赤いのは私が食べるから、先に安全だった黄色を食べようね」

 むきむきと、剥いた黄色のバナナを渡されて、私は大口を開けてパクついた。

「あまーぃでしゅーっ!」

 脳内南国パラダーイス! 生きていて良かったよーっ! ビバ人生四年間!

「ほら君たちも食べなさい。赤も大丈夫みたいだから」

 そういって世話焼きの兄は、しゅーさんやロコにも差し出した。
 しゅーさんは素直に、私と同じ黄色を受け取って礼を述べる。
 けれど、ロコは悪態をついた。

「それは別に、外に出たらいくらでもあるから、食べ飽きてるよ」
「味が違うかもしれないでしゅ。一緒に食べようでしゅよ」

 一応は勧めた。

「いらないなら、よこせでしゅ」
「はい、まゆまゆは、僕の分けてあげるからね」
「ありやとでしゅよー」

 二人で仲良く半分こ。
 人に貰った食い物は美味しいや、へへ。
 なぜかムッとするロコが、赤いバナナを受け取って、ヤケ気味に食いついた。

「え、なんだこれ……甘い」
「良かったでしゅね。赤いほうが熟して甘いんでしゅかね?」
「いや、種類がもともと違うから、赤の方が甘い。赤で緑で黄色の順番で甘味が違う」

 流石は島の子だ。南国のフルーツに詳しいらしい。

「緑も甘いんでしゅね。黄色しか食べた事ないでしゅよ」

 孫のハヤトの入院見舞いは、バナナかみかんが定番だった。
 二人で病室でバナナを食べながら、今度の新作のラノベの話なんかで盛り上がったものだ。
 懐かしい思い出が蘇り、そこで気づく。

 ああ、なんとなくロコはハヤトに似ているな。
 そう思って顔を見ていたら、ロコがぶっきらぼうに私にバナナを半分差し出した。

「ほらチビ、赤いの分けてやる。てか食べすぎじゃないか? 腹痛くならねーか?」

 誰に似たのか、生意気な口をききながら、私を心配してくれた孫のハヤト。

『ほらばーちゃん、年寄りは目が悪いからな。スマホはこう指で文字を大きくできんだよ』

 私はニコニコと笑ってロコから、赤いバナナを分けて貰った。

「やっぱり、人からもらう食べ物は美味しいでしゅ」
「……お前、姫様だよな?」
「関係ないでしゅ。みんなで食べると美味しいでしゅね」

 そして、皆が私に分け与えてくれれば、最高です。というか、すべてを捧げよ。
 みんなは私の為に、私は鉄板で私の為に決まってますよね? ね?

 こうして私達は、その後に蔦をプヨプヨ・プヨプヨと揉みこみながら、中から大量のバナナをゲットした。
 そして、蔦から生えている葉っぱを何枚か引きちぎる。
 この葉っぱこそが、本来の一番の目当てなのだ。

 リュックも程よくパンパンになったところで、私達は洞窟から脱出して帰路についたのだった。




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