78 / 134
第6章 拝啓・北の国から
第79話 女神の願い
しおりを挟む
ムニュっとした温かいボリュームに包まれて、ひたすらムギュムギュと抱きしめられて堪能される……これは!
「何するでしゅか! 女神でしゅね!」
「やーん、やっぱり可愛いっ!」
「なんとなく、呼ばれた気がしたんでしゅよ!」
「うんうん偉いね、よく来てくれたわね『まゆみ』……じゃなくって、ここでは『アリアナ』ちゃんね」
何を言いたいのか、女神が初めて私の名を呼んだ。
その気配に、私は真剣な何かを感じてピタリと抵抗を止めた。
私を背後から抱きしめながら、女神が小さく呟いた。
「あなたには本当に感謝している。あの子たちに、元気を分けてくれてありがとう。あの子たちだけでなく、あなたに関わった人たちが、美味しい物を食べて幸せになっていくわ」
「……別に、アタチが食べたいからでしゅ。ついででしゅよ」
「ふふっ、精霊のあの子たちも、少しずつ力を取り戻しているの。それは確かなんだけど、どうも異常が発生しているのよ」
嫌な予感がする。
「本来なら、もう回復していてしかるべき量なのに、どうも精霊の力がどこかに漏れている気配がするの。ごめんなさいね、私がこれ異常関わると災害が発生するレベルの影響だから、手出しができない。わかるのは、あなたの与えた力が、どこかに行っていて、世界のパランスがおかしくなっているって事よ」
「どういう事でしゅか?」
「あなたを呼び寄せたのが、この世界に干渉する最後のパランスのギリギリだったのよ。あくまで、あなたの旦那君はオマケなんだけど。最近新しい疾病が発生しているの知ってる?」
なんだそれは? 聞いた事もない。
私は、前を向きながら小さく首を横に振った。
怖くないよと、頭を撫でられたけど、ブンと頭をふって拒絶する。
「おかしいでしゅ。頑張ってるのに、状況が良くなってないでしゅ!」
「その病は、北の国で猛威をふるっているわ。なんとか北のあの子が、自分のエリア内で治めようとしたけれど、どうもあの子は自分もそのまま消えるつもりみたいね。もう、どれだけ私が声をかけても、あの子に届かないのよ」
「そいつを、元気にすればいいんでしゅか?」
「それと、あの国の新しい病を治療方法を教えるわね。それには、あの子の力も必要なのよ……だけど、あの子は私も人も嫌いだから……」
「アタチも女神が嫌いでしゅ! 人任せすぎるでしゅよ!」
私の言葉に、女神はビクンと体を震わせた。
少しの沈黙が私達を包む。
私を抱きしめる、白く細い腕が小刻みに震えた。
「未熟な女神でごめんなさいね……私はただ、みんなが幸せになって欲しかったの……」
だったら、何でこの結果なんだ。
自分たちだけでなく、異世界の魂である私やしゅーさん、そしてゼンや、その妹さんまで、知ってるだけでも巻き込んでいるじゃないか。
なのに、これ以上責められず私は口ごもっていると、別の声が女神を慰めた。
「あなたは、私達の命をすくって下さいました。女神様」
それはエバ、そして隣にはいつの間にか現れたアールもいた。
「女神って言ったって、万能神じゃないんだぜ。しかも、その女神は割とドジだからな。俺たちや、ただ救われるのを待つだけの他の生き物たちも、力を合わせなきゃならねーのさ」
知ってたよ、女神なのに手間のかかる娘っ子だって事位はさ。
それでも、自らの立場はきちんと理解して責任は負わなくちゃダメなんだ。
人に任せて、はいゴメンじゃダメなんだよ。
そう思った私の心を、女神は読み取った。
「そうよね、その通りよ。だから、ちゃんと最後の責任は取るし、私にしか出来ない事があるなら言いなさい」
「人の心を読んだんでしゅか!」
私はクルリと向きを変えられ、向かい合い抱きなおされた。
顔が互いに向かい合い、女神はこれでもかと神々しい笑顔を向けた。
「私の愛しい子よ、あなたに祝福を。あなたと私は心で繋がっているのよ」
その笑顔の美しさに私が見惚れていると、頬にキスをされた。
「お願いね、チビちゃん。最後はちゃんと責任をとるから、私の愛しい者たちと世界を託すわね」
「おいまて女神、ゴラァ! アタチは美味しい物さえ食べられたらって、何勝手に消えてるんでしゅかーっ!」
言うだけ言って、女神は消えた。
祭壇の上で天に向かって、私は悪態をつく。
「出てこい乳デカのドジ女神! アタチはもっと言いたい事が山ほどあるんでしゅよーっ!」
ダムダムしていると、エヴァにヒョイと拾い上げられた。
「乳デカ族は滅べでしゅ!」
「あらあら可愛い、大きくなーれ、大きくなーれ」
いい子いい子と、乳に顔を埋められた。ギブギブ!!
私を撫でながら、エバはアールに言う。
「ともかく、北の方に行くのは確定ね」
「あいつが自爆すんのは勝手だが、そうか、病の噂は本当だったんだな」
「あちらの王国が消滅したのも、その病のせいでしょう?」
「だから、他国は国交を切ったんだ」
「凄い勢いよね、たかだか20年程度で国が滅びそうなんて……」
「まあ、このチビが女神様より治療方法を聞いたのと、あと何より今は大事な事がある」
乳に埋もれて窒息寸前で足掻いている私を、アールが指さした。
「おかえり会の御馳走」
「何するでしゅか! 女神でしゅね!」
「やーん、やっぱり可愛いっ!」
「なんとなく、呼ばれた気がしたんでしゅよ!」
「うんうん偉いね、よく来てくれたわね『まゆみ』……じゃなくって、ここでは『アリアナ』ちゃんね」
何を言いたいのか、女神が初めて私の名を呼んだ。
その気配に、私は真剣な何かを感じてピタリと抵抗を止めた。
私を背後から抱きしめながら、女神が小さく呟いた。
「あなたには本当に感謝している。あの子たちに、元気を分けてくれてありがとう。あの子たちだけでなく、あなたに関わった人たちが、美味しい物を食べて幸せになっていくわ」
「……別に、アタチが食べたいからでしゅ。ついででしゅよ」
「ふふっ、精霊のあの子たちも、少しずつ力を取り戻しているの。それは確かなんだけど、どうも異常が発生しているのよ」
嫌な予感がする。
「本来なら、もう回復していてしかるべき量なのに、どうも精霊の力がどこかに漏れている気配がするの。ごめんなさいね、私がこれ異常関わると災害が発生するレベルの影響だから、手出しができない。わかるのは、あなたの与えた力が、どこかに行っていて、世界のパランスがおかしくなっているって事よ」
「どういう事でしゅか?」
「あなたを呼び寄せたのが、この世界に干渉する最後のパランスのギリギリだったのよ。あくまで、あなたの旦那君はオマケなんだけど。最近新しい疾病が発生しているの知ってる?」
なんだそれは? 聞いた事もない。
私は、前を向きながら小さく首を横に振った。
怖くないよと、頭を撫でられたけど、ブンと頭をふって拒絶する。
「おかしいでしゅ。頑張ってるのに、状況が良くなってないでしゅ!」
「その病は、北の国で猛威をふるっているわ。なんとか北のあの子が、自分のエリア内で治めようとしたけれど、どうもあの子は自分もそのまま消えるつもりみたいね。もう、どれだけ私が声をかけても、あの子に届かないのよ」
「そいつを、元気にすればいいんでしゅか?」
「それと、あの国の新しい病を治療方法を教えるわね。それには、あの子の力も必要なのよ……だけど、あの子は私も人も嫌いだから……」
「アタチも女神が嫌いでしゅ! 人任せすぎるでしゅよ!」
私の言葉に、女神はビクンと体を震わせた。
少しの沈黙が私達を包む。
私を抱きしめる、白く細い腕が小刻みに震えた。
「未熟な女神でごめんなさいね……私はただ、みんなが幸せになって欲しかったの……」
だったら、何でこの結果なんだ。
自分たちだけでなく、異世界の魂である私やしゅーさん、そしてゼンや、その妹さんまで、知ってるだけでも巻き込んでいるじゃないか。
なのに、これ以上責められず私は口ごもっていると、別の声が女神を慰めた。
「あなたは、私達の命をすくって下さいました。女神様」
それはエバ、そして隣にはいつの間にか現れたアールもいた。
「女神って言ったって、万能神じゃないんだぜ。しかも、その女神は割とドジだからな。俺たちや、ただ救われるのを待つだけの他の生き物たちも、力を合わせなきゃならねーのさ」
知ってたよ、女神なのに手間のかかる娘っ子だって事位はさ。
それでも、自らの立場はきちんと理解して責任は負わなくちゃダメなんだ。
人に任せて、はいゴメンじゃダメなんだよ。
そう思った私の心を、女神は読み取った。
「そうよね、その通りよ。だから、ちゃんと最後の責任は取るし、私にしか出来ない事があるなら言いなさい」
「人の心を読んだんでしゅか!」
私はクルリと向きを変えられ、向かい合い抱きなおされた。
顔が互いに向かい合い、女神はこれでもかと神々しい笑顔を向けた。
「私の愛しい子よ、あなたに祝福を。あなたと私は心で繋がっているのよ」
その笑顔の美しさに私が見惚れていると、頬にキスをされた。
「お願いね、チビちゃん。最後はちゃんと責任をとるから、私の愛しい者たちと世界を託すわね」
「おいまて女神、ゴラァ! アタチは美味しい物さえ食べられたらって、何勝手に消えてるんでしゅかーっ!」
言うだけ言って、女神は消えた。
祭壇の上で天に向かって、私は悪態をつく。
「出てこい乳デカのドジ女神! アタチはもっと言いたい事が山ほどあるんでしゅよーっ!」
ダムダムしていると、エヴァにヒョイと拾い上げられた。
「乳デカ族は滅べでしゅ!」
「あらあら可愛い、大きくなーれ、大きくなーれ」
いい子いい子と、乳に顔を埋められた。ギブギブ!!
私を撫でながら、エバはアールに言う。
「ともかく、北の方に行くのは確定ね」
「あいつが自爆すんのは勝手だが、そうか、病の噂は本当だったんだな」
「あちらの王国が消滅したのも、その病のせいでしょう?」
「だから、他国は国交を切ったんだ」
「凄い勢いよね、たかだか20年程度で国が滅びそうなんて……」
「まあ、このチビが女神様より治療方法を聞いたのと、あと何より今は大事な事がある」
乳に埋もれて窒息寸前で足掻いている私を、アールが指さした。
「おかえり会の御馳走」
50
あなたにおすすめの小説
積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!
ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。
悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。
ヒロインですが、舞台にも上がれなかったので田舎暮らしをします
未羊
ファンタジー
レイチェル・ウィルソンは公爵令嬢
十二歳の時に王都にある魔法学園の入学試験を受けたものの、なんと不合格になってしまう
好きなヒロインとの交流を進める恋愛ゲームのヒロインの一人なのに、なんとその舞台に上がれることもできずに退場となってしまったのだ
傷つきはしたものの、公爵の治める領地へと移り住むことになったことをきっかけに、レイチェルは前世の夢を叶えることを計画する
今日もレイチェルは、公爵領の片隅で畑を耕したり、お店をしたりと気ままに暮らすのだった
元侯爵令嬢の異世界薬膳料理~転生先はみんな食事に興味が無い世界だったので、美味しいご飯で人の身も心も癒します~
向原 行人
ファンタジー
異世界へ転生して数日。十七歳の侯爵令嬢、アリスとして目覚めた私は、早くも限界を迎えていた。
というのも、この世界……みんな食事に興味が無くて、毎食パンとハムだけとか、ハムがチーズに変わるとか、せいぜいその程度だ。
料理というより、食材を並べているだけって感じがする。
元日本人の私としては温かいご飯がたべたいので、自分で食事を作るというと、「貴族が料理など下賤なことをするのは恥だ!」と、意味不明な怒られ方をした。
わかった……だったら、私は貴族を辞める!
家には兄が二人もいるし、姉だっているから問題無いでしょ。
宛てもなく屋敷を飛び出した私は、小さな村で更に酷い食事事情を目の当たりにする。
育ち盛りの子供たちや、身体を使う冒険者たちが、それだけしか食べないなんて……よし、美味しいご飯でみんなも私も幸せになろう!
医食同源! 大食いモフモフ聖獣に、胃袋を掴んでしまった騎士隊長と一緒に、異世界で美味しくて身体に良い食材探しだ!
※第○話:主人公視点
挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点
となります。
不倫されて離婚した社畜OLが幼女転生して聖女になりましたが、王国が揉めてて大事にしてもらえないので好きに生きます
天田れおぽん
ファンタジー
ブラック企業に勤める社畜OL沙羅(サラ)は、結婚したものの不倫されて離婚した。スッキリした気分で明るい未来に期待を馳せるも、公園から飛び出てきた子どもを助けたことで、弱っていた心臓が止まってしまい死亡。同情した女神が、黒髪黒目中肉中背バツイチの沙羅を、銀髪碧眼3歳児の聖女として異世界へと転生させてくれた。
ところが王国内で聖女の処遇で揉めていて、転生先は草原だった。
サラは女神がくれた山盛りてんこ盛りのスキルを使い、異世界で知り合ったモフモフたちと暮らし始める――――
※第16話 あつまれ聖獣の森 6 が抜けていましたので2025/07/30に追加しました。
貴族令嬢、転生十秒で家出します。目指せ、おひとり様スローライフ
凜
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞にて奨励賞を頂きました。ありがとうございます!
貴族令嬢に転生したリルは、前世の記憶に混乱しつつも今世で恵まれていない環境なことに気が付き、突発で家出してしまう。
前世の社畜生活で疲れていたため、山奥で魔法の才能を生かしスローライフを目指すことにした。しかししょっぱなから魔物に襲われ、元王宮魔法士と出会ったり、はては皇子までやってきてと、なんだかスローライフとは違う毎日で……?
転生チート薬師は巻き込まれやすいのか? ~スローライフと時々騒動~
志位斗 茂家波
ファンタジー
異世界転生という話は聞いたことがあるが、まさかそのような事を実際に経験するとは思わなかった。
けれども、よくあるチートとかで暴れるような事よりも、自由にかつのんびりと適当に過ごしたい。
そう思っていたけれども、そうはいかないのが現実である。
‥‥‥才能はあるのに、無駄遣いが多い、苦労人が増えやすいお話です。
「小説家になろう」でも公開中。興味があればそちらの方でもどうぞ。誤字は出来るだけ無いようにしたいですが、発見次第伝えていただければ幸いです。あと、案があればそれもある程度受け付けたいと思います。
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
異世界リナトリオン〜平凡な田舎娘だと思った私、実は転生者でした?!〜
青山喜太
ファンタジー
ある日、母が死んだ
孤独に暮らす少女、エイダは今日も1人分の食器を片付ける、1人で食べる朝食も慣れたものだ。
そしてそれは母が死んでからいつもと変わらない日常だった、ドアがノックされるその時までは。
これは1人の少女が世界を巻き込む巨大な秘密に立ち向かうお話。
小説家になろう様からの転載です!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる