転生幼女は発酵スキルで、異世界に和食革命を起こす!味噌、醤油、酢を作って餌付けしたら、いつの間にか世界に名が轟いていた件

西野和歌

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第6章 拝啓・北の国から

第82話 とーたんと、かーたん

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 初めて見る父の素顔を、ジッと見てみた。

「とーたんは、にーたんと顔が似てるでしゅね?」
「ははっ、あいつがワシに似てるんじゃよ。そしてアリアナ、お前も似てるぞ?」
「……小指の第二関節が似てるでしゅか?」

 嫌だ……凄く嫌だという顔をすると、ヨシヨシと頭を撫でられる。

「顔立ちは、母親のメリッサに似て優しい顔をしているが、目の色と髪色は王家の色じゃな」
「割とありふれてるでしゅよ?」
「ふっ、それでもこんなに可愛い娘がいて、一緒にとる食事は最高じゃな」

 あまりにベタ褒めなので、つい照れてしまう。

「……甘いのは、とーたんのハチミツだけで十分でしゅよ」
「懐かしいな。お前の母親にも、よくそう言われたな」
「ピーマン大好きで、いきなり消えたかーたんでしゅか?」
「歳の差もあったし、身分差を気にしていたし、何よりワシの一方的な片思いで、メリッサは迷惑だったのかも知れんなあ」

 おいおい、おっさん。飯が不味くなる話なんぞするなよ。
 私は手に掴んでいるパンを、モシャモシャと食った。

「ワシは気づいてやれんかったんじゃよ。ワシと結婚する事が、平民の身分でそれ程にプレッシャーじゃと言うことに。だから、妊娠した途端にバレないように逃げ出したんじゃ」
「どういう出会いだったんでしゅか?」
「メリッサは親が城勤めでな。その伝手で親を亡くした時に働きに来たんじゃが、不憫に思ったシリウスの母、つまり前王妃でワシの最初の妻じゃな。それがメリッサを可愛がって、専属のメイドにしたんじゃよ」
「へー」

 (やっぱ、しゅーさんの言う通りパンより米が欲しいなぁ)

「王妃にもよく仕え、幼いシリウスの世話も良くしてくれたから、あいつも懐いてな。王妃が病で急死した後に、ワシやシリウスを支えてくれたのがメリッサじゃった」
「ほーん」

 (おっさんの昔話って長いんだけど、今ちょっとガス抜きがてらに機嫌取りしとかないとなー)

「いつしか、ワシとメリッサ、そしてシリウスと三人で家族のようになっての。だから、ワシは何度もメリッサに妻になって欲しいと懇願したんじゃ。だが、断られてばかり」
「どうちて断られたんでしゅか?」
「王妃面倒くさい」
「間違いなく、アタチのかーたんでしゅ」

 (遺伝子ってこぇーな)

「なんとかメリッサの気を引きたくて、どれだけ宝石やドレスを見せても無駄じゃった。唯一受け取ってくれたのは、ピーマンの首飾りだけじゃったよ」
「これでしゅね」

 ガサゴソとずっと首にかけている形見を取り出すと、父の目がうるんだ。

「くっ……メリッサが消えたのは、ワシが不甲斐ないせいじゃ」

 ギュッと強く抱きしめられた。
 やばかった……持ってたパンを食べて終えていてセーフセーフ。
 ちなみに首飾りは、私がいた教会で唯一の親の形見だからと持たされた品だ。
 イザという時に、銀だから売り飛ばしてやろうと思って身に着けている。
 どうせ母が受け取ったのも、わざわざこんなもんオーダーメイドで作りやがってという気持ちからだろう……返品されても職人困るしな。

 私が知っているのは、私を生んだその日に力尽きたという事だけ。
 臨月の母が教会を訪れた。
 少しだけ休ませてほしいと、雨の日に宿を求めて教会にきたその晩に、産気づいたそうだ。
 軽く身の上を聞いても、天涯孤独で名前を聞くのがやっとだったそう。
 看取ったシスターが、必死に手を握って励ましてくれたらしい。

 『最後に彼女は、女の子だったからアリアナと名付けて……とだけ告げて亡くなったのよ』

 ふと感極まり、男泣きを堪えている父に聞いてみた。

「アタチの名前は、かーたんがアリアナってつけたらしいんでしゅよ。なんでかわかるでしゅか?」
「……前王妃の名じゃよ。メリッサはシリウスの母であるアリアーナに、とても感謝していたからの」
「名前中古なんかーぃ」

 おいこら出てこい、もっとオリジナルで名前つけろゴラ!
 
 遠くの席では、アールがシチューのお替り争奪戦に参加して、エバが手を叩いて煽ってる。
 なんか南の国でも見たような……デジャブ? 
 しゅーさんは兄と話しながら、こちらを心配そうに見ている。
 そして、私は王座の上座で、父にホールドされている。タ・ス・ケ・テ。

 だが我慢だ、この後の北の国行きを穏便に進めるために、一番反対しそうなこいつの機嫌を、取っておかなくてはいけない。

 今、奴の中では亡くなった前妻や、私の母を思い浮かべているんだろう。
 うむ、私の中では、ともかく米が欲しいで一杯だ。

 遠くでは、お替り合戦に負けたらしいアールが皿ぶん投げて、三人がかりでボコられている。
 精霊なのに正体を明かすわけにいかなくて、必死に乱闘してる所に警備の騎士が数人がかりで抑えに行った。
 エバはメイド達とキャッキャして応援している。
 お前ら一体……あっち楽しそうだな……、あ、しゅーさんも向こうに気づいたらしい。
 うん、見なかった振りしてる。賢いな。
 兄なんか見る気はなさそうで放置してる。いや、お前の護衛騎士な?

 このままじゃ、おっさんのお涙話が終わらないと、そろそろ引導を渡してやる事にした。
 私は首のピーマンアクセサリーを父に見せつけて、あざと可愛いく破顔した。

「とーたんの事をかーたんが本当に嫌いなら、アタチはここに存在してないでしゅ。ついでに、ピーマンも捨ててたでしゅよ」
「アーちゃん……」
「笑ってとーたん。家族でしゅ、慰めてやるでしゅ元気だせーぃでしゅ」

 ね? と小首をコテンとしてやった。
 どうだ、必殺技だ! クリティカルヒットだ!

 私の攻撃に父はノックダウンで、皆の前にも関わらず、私を抱きしめ声をあげて泣いた。
 潰されんばかりに抱きしめられた、私の頬が引きつっていた。
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