転生幼女は発酵スキルで、異世界に和食革命を起こす!味噌、醤油、酢を作って餌付けしたら、いつの間にか世界に名が轟いていた件

西野和歌

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第6章 拝啓・北の国から

第85話 いざゆかん北の国へ

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 大勢が見送る中で、私達は出発する。
 今回は小型の馬車は、防寒用に特化した武骨な馬車だ。
 食料と防寒具、最低限の荷物と馬車内に乗るのは私としゅ-さんのみ。
 エバはディランに帰国するし、兄は残って外交と執務に励んで貰う。

「おうよ、みんにゃ! アタチはとっとと終わらせて、米貰ってくりゅね!」

 ドンと小さな胸を張ると、心配そうだった見送りの皆が小さく安堵する。

「うちの姫様が大丈夫って言ったら、大丈夫だ」
「寒いですから、用意した毛皮をちゃんと着て、ポンポンは出しちゃダメですよ?」
「ちゃんと毛糸の腹巻とパンツを履いて下さいね」
「知らない人に、おむすび貰っちゃダメですよ」

 最後なんか変な事言われた気がするが、まあいい。
 親切な人におにぎりは貰っていいと決まっていたはずだから、最後はスルーだ。

 父に光速の速さでスリスリされて意識が遠のきながらも、私達は皆の心配そうな顔を安心させるよう元気に手を振って旅立った。

 *****

「相変わらず、凄い見送りだったね」
「みんな祭りが大好きでしゅよ」

 私は餞別に貰ったペロペロキャンデーをレロレロしていた。
 うむ、美味!
 気の利くメイド達が、知らない人に餌付けされないようにと、お菓子袋を用意してくれたのだ。幸せ。

 じーっと見つめるしゅーさんに、舐めていたキャンディーを差し出すと、苦笑して首を横に振られた。
 なので再度自分の口に、カプッと咥えた。美味しい、幸せ。

「今から北の国だけど、どうも今までと違う気がするね」
「レロレロ~」
「風の精霊様も険しい顔をされていたし、てか、いつの間に女神様に疾病の事を聞いていたの?」
「レロレロ~」
「キャンディー美味しい? しゃべるの面倒なんでしょ?」
「コクコクコクコク」
「うん、いい子でいようね」
「コク」

 馬車はカタカタと北に向けて走っていく。
 国の北の境目までは二日かかった。
 問題は森を抜けて、そして下の平地に降りてからだ。北に向かうのに数日はかかる。

 アールは口数少なく、ともかく面倒を避けるために、自国にいるうちは力を発揮して風の力で速度をあげた。
 通常の倍速で走り抜け北の国に向かうまでは、魔物や面倒
 避けるために、この方式で行くらしい。

 確かに何度か、魔物が私達のスキルに惹かれて近づいてきたが、容赦なくアールが剣ではなく、風でザシュザシュと切り裂いて通過した。
 電光石火の速さで向かうのは、彼なりの私達の防御ゆえらしい。

 食事休憩以外は、トイレもできるだけ我慢。
 だけど、小さな私は耐えられない。

「アール、チッチに行きたいでしゅよ」
「あーあーっ、もうっ! わかったわかった!」
「申し訳ないでしゅねぇ」

 ヨチヨチと馬車から降りて、近くの草むらにガサゴソ入る。

「あんまり近づいたらダメでしゅ」
「わーった、わーった。ああ、王子は乗ってろよ」
「はい、わかりました」

 こんな感じでテントすら張らず、馬車で私達が寝ている間も、アールは馬車を走らせた。
 馬に関しては風の力を使っているので、馬が眠っていても、少し宙を浮かせて風に乗せて前にひたすら進んで行った。

 つまりアールは常に力を使っているという事で、自国を出てからの力の消費は半端なかった。
 なので、食事はアールの回復優先で、肉をメインに沢山食べさせる。

 ……まあ、私としゅーさんは、ただ座ってるだけだしね。
 むしろ、馬車の中でしとりとや、じゃんけん、昔話と、やる事に飽きていた。

 夕日が沈む前に、荒れた山が続く道なりで、私達は夕食を食べる。
 今夜は、アールが軽く狩ってきた鳥の肉をメインにした。

 間もなく期限が切れるヨーグルトがあったので、袋に入れる。
 本当は北の国まで保ってくれれば、アイスにしようと思っていたのだが、仕方ない。
 北の国では、昔は水の豊かな四季のある国だったという。
 けれど、今では精霊の加護も消えかかり、病と雪に埋もれた国であるという。

 ならばアイスでしょ! とわくわくして牛乳を考えたが、確実に腐るので却下。
 ならば、ヨーグルトだ! と持ってきたのだが……北の国は遠すぎるっす。
 既に、国を出て五日目。
 なんとか、昨日までは水場で風呂に入れたけれど、次からは馬車に積んでいる樽の水を沸かして、体を拭く程度になるだろう。

 切り分けた鶏肉を、ヨーグルトを入れた袋に入れて、ついでにカレー粉を細かく風の力で粉にして、袋の口を縛って……っと。

「はい、しゅーさん。この袋をブンブンするでゅよ」
「撹拌するの?」
「ブンブン混ざれば、染み染みでしゅ」
「ブンブンだね、うん。もう一度、袋の口をきつく縛って……うんうん」
「おいチビ共、俺は何すりゃいい?」
「また火の準備に、木の枝集めてこいでしゅ」
「あいよ」

 ブンブンと野球選手の準備運動のように、袋を掴んで振り回す。
 しゅーさんがんばれ、がんばれしゅーさん。
 私の力を使えば簡単なのだが、できるだけ先が不明なので、温存しておきたい。
 こんなに、北の国に行くのが大変だとは思わなかった。

 遠くで獣の唸り声が聞こえる。
 アールが目を細めて、小さく口からうめきを出すと、即座に獣の声は止んだ。

 火の準備が出来て、上に網をはる。
 アールにパンを薄くスライスして貰って、網の上でこんがり焼いた。
 そして、ぜぇぜぇと息切れしているしゅーさんから、袋を受け取って、私は軽く力を込めた。

「染み染みナマステ~ありがとうはダンニャバート、ガンダーラは違う国ぃ~」
「その変な呪文は必要なのか?」

 アールのツッコミが入った。

「必要でしゅ」

 私の気持ちの、盛り上がりの為にな。
 では、皆さま、ご唱和下さい。

「食欲満点スパイス効果! おいちくなぁーれ!」

 袋に向けて、スキル発動! ピカッと光った袋の中で、タプタプだった液体が肉に吸われた感覚があった。
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