転生幼女は発酵スキルで、異世界に和食革命を起こす!味噌、醤油、酢を作って餌付けしたら、いつの間にか世界に名が轟いていた件

西野和歌

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第6章 拝啓・北の国から

第86話 はるばるきたぜ北の国

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 ではでは、火のついた網に肉を乗せていく。
 少し茶色の染み染み肉は、香ばしいカレーの匂いを漂わせて焼けていく。

「おおおっ!」

 目を星にして、ヨダレを流すアールと、トングで丁寧に肉をひっくり返してくれるしゅーさん。
 そして、出来上がったのは、タンドリーチキンと添え付けパン。
 少しだけ残った袋の中のタレを、パンに染み染みさせてあげました。
 ムダなしで、これで出来上がり。

「おおっ、肉に味がついて上手い!」
「カレー味がまろやかだね、まゆまゆ」
「ヨーグルトを使っているから、肉が柔らかくなってるでしゅよ」

 皆で舌鼓を打ちながら、ペロリと完食。
 夜が更けていくと、寒さが強まり、確実に北の国に近づいているのを実感する。
 だからこそ、カレースパイスで、中からポカポカ効果なのだが、どうもこの先では、そんな誤魔化しは効かない位の寒さを迎えそうだ。

「くしゅん!」
「よーし、チビ共。荷馬車の荷物から毛布と厚着の服を出してやるから、とっとと着替えて眠っとけ。寝床は作ってやろうか?」
「大丈夫です。僕が座席の片方を倒して、寝床を用意していますから。それより精霊様はお休みしなくて大丈夫ですか?」

 くしゃみした私の鼻水を拭きながら、しゅーさんはアールを気遣った。
 アールは、ニヤリと鼻で笑った。

「ガキが気遣いなんぞするな。いいからお兄さんに任せなさい」
「しゅ-さん、こいつは夜行性だし毛皮もあるから、とっとと馬車に戻って寝るでしゅよ」
「……まゆまゆ」
「おいチビ……ともかく、寝ろ」

 ヒョイと私としゅーさんは、アールに抱えられて、ポイッと馬車に放り込まれた。

「目が覚めたら、少しは前に進んでおくから。ともかくおやすみ」
「おやすみなさい、精霊様」
「おやしゅみーアール」

 優しく笑って、アールはパタンと馬車の扉を閉めた。

 *****

 まさか目覚めると、まったくの別世界にいるとは思わなかった。
 そこは煌めく一面の銀世界。

「うひょおおーっ!」
「凄いねまゆまゆ、雪だ!」
「おう、おはようチビ共。ともかく厚着しとけよ」

 いつのまにか、首元を毛皮で飾られた冬用マントと、防寒用の騎士服を着たアールがいた。本来私の国では、めったに雪なんぞ降らないので、特注の騎士服だ。
 奴は、いつの間にか冬用装備になっていたが、見た目はそこまでモコモコダルマではなかった。自前の毛皮あるからか? 人の姿だけど。

 ワチャチャしながら、私達も馬車内で着替えた。
 不思議なことに、馬車の中は暖かく寒くなかった。

「エバ様が、この馬車に力を注いでくれたからね」
「かわりに鳥はヘロヘロで自分の家に帰って行ったでしゅね」

 鳥もたまには役に立つ。
 でも、外に出ると寒いんだよなぁ……。

「はい、手を伸ばして、はい顔出して、はい出来た」

 子育て経験が香ばしくきいている元夫が、着せ替えてくれた。
 ふわふわのボンボンが胸元についた、水色の可愛いコート。
 うむ、てるてる坊主みたいだ。厚着のてるてる坊主。

 白と水色のしましま毛糸の手袋も装備! 雪の妖精誕生うっすうっす!
 ちゃんとお腹に腹巻と、毛糸のパンツは荷物入れの奥過ぎて、また明日にでも探そう。カボチャパンツも十分にあったかいし、平気平気。

「髪も城で切って整えて貰ったけど、首とか寒くない?」

 世話焼きしゅーさんが、首にいそいそと、白いマフラーを巻いてくれた。
 旅から帰った時に、長く伸びた髪が邪魔で肩ほどに切って貰ったのだ。

 なみなみの私の金髪。切りたいと言った時は、父を筆頭に皆が阿鼻叫喚した。
 けれど、私の生まれて初めての散髪だから宜しくと告げると、なぜか今度は、はりきり出した。

「この素晴らしい髪を永遠に残すためには……」
「筆にするのはいかがでしょうか?」
「いえ、刺繍布に髪を縫い付けて……」

 なんのホラーだよ。

「ともかく絵師を呼べ! この記念すべき姿を傑作として描き上げるのだ!」
「いい加減にしないと、自分でチョッキンするでしゅよ!」
「「「いやぁああああ――――っっ!!」」」

 という流れで、髪くらいサッパリさせんかいっ!
 だが切ったおかげで、今回の旅路でも楽なものだった。
 切って良かったサッパリです。

 ザクザクと雪を踏みしめ、私はご機嫌だ。
 雪の深さは、そこまで深くない。
 私の足首が埋まる程度で、履いたブーツで嬉しく足跡をつけてく。

 一人ご満悦の私と違い、しゅーさんは周囲を見渡して、溜息をついた。

「本当に何もない所ですね」

 しゅーさんが言う通り、雪国特有の細い木々の合間から、冷たい風が吹き付けるだけ。
 辿り着いた廃村には人影もなく、石で作られた家の大抵は、どこかしら崩れている。
 人影もなく、どうしてここにアールが辿り着いたのか、わからない。

「アールは、なんでこんな寂れた場所に来たでしゅか? もっとお城とか目指した方がいいと思うんでしゅけど」
「この国の王族は滅んだぞ」
「国が滅びかけってのは、そういう事でしゅねぇ」
「待って! まゆまゆ、だという事は……」
「どうしたでしゅか?」

 何かに気づいたしゅーさんに、私はなんぞ? と聞いてみた。
 青ざめてガクガクと震えるしゅーさん。

「王族が滅んだ……つまり、スキル持ちがいないという事だよ」
「つまり、ゼファーの飯係はいねーって事だ」
「うひょーっ!! だから弱って消えそうなんでしゅね!」

 確かに、よく考えたらそういう事だ。
 精霊の加護も、王族も消えて、病が蔓延している。
 そら、米どころじゃないよね?
 いや、だが米だ、米なのだ!

「だったら、アタチが飯食わせてやんよー!!」

 パチパチパチっと、二人に手を叩かれて、私はどもどもと手を振ってあげた。
 女神が急かすはずだ。
 ともかく、とっとと飯食わせて元気づけて、米作らせて、後は後で考えよう。

「で、こんな廃村に、何があるんですか?」

 しゅーさんの質問に、アールはスルリと答えた。

「ここらにいるっぽいだよ、アイツがな」
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