86 / 134
第6章 拝啓・北の国から
第87話 第一村人発見
しおりを挟む
雪もやみ、透き通るような青空と、冷たい風が吹き付ける廃村に、私たちは辿り着いた。
ここが北の国、元・クラナド帝国である。
以前は大陸一の軍事国家として、他国に対して国交を保ちつつも、強国として名をはせていた国だ。
四季がはっきりとした土地で、確かに雪も降るが、一年の半分は水が豊かな土地であり、水田から米の農作が盛んな地域であった。
いつしか精霊の加護を失くし、国王は慢心し、病が発生し、季節は雪に閉ざされ、この国は瀕死に陥った。
国としての機能はなく、辛うじて生き残った人々が、各地でひっそりと集落を作り、身を寄せ合って生き延びている状態だ。
だが、それすらも時間の問題で、彼らは病の死に怯え、消えゆく時を待つのみだった。
「どうして他の国に、助けを求めたり、逃げなかったでしゅか?」
「……ゼファーが禁じた」
「でしゅ?」
「自国の全ての者たちの、他国への移動を禁じた。その精霊の力をもってだ」
「ひょおおーっ!」
「辛うじて、本当にわずかな行商人だけが、この国を訪れてた。けれど、すぐに去ったんですよね」
しゅーさんの言葉に、アールは頷いた。
「もう、ここで得る物は何もないだろうしな」
そういえば、デブが魔界から転がり出て来たのは、この国だったなと、ふと思い出す。
あのデブは元気にしてるだろうか?
「ともかく、会いに行くでしゅよ!」
「こっちから気配がする。わかるだろ?」
「でしゅ?」
なんとなく、モヤモヤする嫌な感覚はするので、ウヘァという顔で私はアールを見た。
あいつも私を見て、嫌だなって顔してる。
「……帰るか?」
「でしゅね」
「ここまで来て、ダメです!」
しゅーさんに怒られたので、仕方なく私達は、その嫌なモヤモヤの方に進んだ。
廃村を抜けて、そのままハゲ山を登っていく。
枯れた木々が、枝を折られて、そこかしこに生えたまま。
皮はめくれて、何やら刃物で切りつけられた跡にも見える。
「人はいるらしいな、油断せず私の背後にいろよ。あと、王子はチビ姫と手を繋いで離さないように」
「はい!」
テクテクとアールを先頭に、しゅーさんに手を引かれて、ザクザクと雪を踏んで進む。
不思議と足をとられる雪でないのは、降ったばかりで固まっていないからだろうか?
山の頂に辿り着き、今度は下り坂となる。
「ほらよ」
んしょと、私はアールの背中におぶさった。
「おらこい」
「あっ、いえ……僕は」
「いいから、ほっ」
しゅーさんは抱き上げられ、二人を抱えて、アールは慎重に山を下っていった。
「あのっ、僕を抱いていたら手が塞がります。危険では?」
「気配はわかるし、風で切り裂くから、ガキは黙ってろ」
冷たく吐き捨てるアールの態度に、私達は黙った。
下り坂を進んで行くと、枯れた木々の向こうに、透明な凍った湖が現れた。
そして、そのほとりに小さな岩レンガを積み上げた家がある。
大きな湖に寄り添うような、ポツンと一軒家のそこからは、細い煙が立ち上っていた。
「第一村人発見でしゅ!」
「さあて、歓迎されるかな?」
ザザザッと斜面を滑り、ショートカットで湖の目指す家に近づいた。
……ぴえん。やはり中から、モヤモヤした嫌な気配がする。
「お前らは、ここにいろ」
少し離された場所で私達は降ろされて、アールが一人玄関の寂れた木の扉をノックした。
「おーい、いるかー!」
静かな人気のない湖一帯、よく通るアールの声が響き渡った。
ゴンゴンと強めにドアを叩いて、押しては引くが、鍵がかかっているらしい。
「おーい、いるのはわかってんだ!」
「ぃっ……今っ! いませぇ――――ん!!」
……は?
私としゅ-さんは、顔を見合わせた。
何か可愛い声が、聞こえたような?
対して、アールは顔を引きつらせて、ヒクヒクと体を震わせている。
「……ざけんなよ? いるだろーがぁぁああああっ!!」
ドカ――――――――ンッッッ!!
キレたアールがドアを足で蹴り破った瞬間、木っ端みじんとなったドアの残骸が吹き飛ぶとともに、うねりの轟音を立てた、黒い煙がアールを襲う。
「ぴぎょぇぇーっ!」
「まゆまゆこっち!」
しゅーさんに抱きしめられると同時に、しゅーさんのスキルが発動し、青いバリアに守られる。
「ゼファー! 貴様っ!」
アールが即座に、銀色の風を自らにまとい、竜巻と共に黒い煙を霧散させた。
だか、何度も大きな固まりが黒と紫に交じり合い、爆弾の玉のようにアールを襲った。
腰を低くして構え、剣を振りかざし、目の前に大きく半月を描くかのごとく剣を走らせた。
シュンという音と、空気が爆ぜる音が何度も炸裂するが、いまだに中からの攻撃は止む気配はない。
「おい聞けゼファー! 我としてもお前がどうなろうと知った事ではないがな! だが女神の意思で、我らの飯係を連れて来た! 引導を渡して欲しいなら、ともかく話を聞いてからにしろ!」
アールの絶叫に、やっと攻撃がピタリと止まった。
周囲には、シュウシュウと溶けた雪と開いた穴が無数にある。
プルプルと震えるしゅーさんの腕を、私はグイグイと引っ張った。
「一時停止みたいでしゅよ」
「……ぷっはぁ……はぁはぁ……一体、どうして」
「わかんないでしゅが、やな感じでしゅ」
飯係ではなく、お前らの命を握る御主人様だいっ!
と、怒る部分はそことは違って、精霊が精霊を攻撃とかするの?
「ゼファーとかいう、やなやつの顔を見てやるでしゅ!」
私が目をこらして、扉を失くした入口に立つ、アールの方向に視線を集中した。
「うにゅ?」
なんか村人Aが、出てきたんですけど?
ここが北の国、元・クラナド帝国である。
以前は大陸一の軍事国家として、他国に対して国交を保ちつつも、強国として名をはせていた国だ。
四季がはっきりとした土地で、確かに雪も降るが、一年の半分は水が豊かな土地であり、水田から米の農作が盛んな地域であった。
いつしか精霊の加護を失くし、国王は慢心し、病が発生し、季節は雪に閉ざされ、この国は瀕死に陥った。
国としての機能はなく、辛うじて生き残った人々が、各地でひっそりと集落を作り、身を寄せ合って生き延びている状態だ。
だが、それすらも時間の問題で、彼らは病の死に怯え、消えゆく時を待つのみだった。
「どうして他の国に、助けを求めたり、逃げなかったでしゅか?」
「……ゼファーが禁じた」
「でしゅ?」
「自国の全ての者たちの、他国への移動を禁じた。その精霊の力をもってだ」
「ひょおおーっ!」
「辛うじて、本当にわずかな行商人だけが、この国を訪れてた。けれど、すぐに去ったんですよね」
しゅーさんの言葉に、アールは頷いた。
「もう、ここで得る物は何もないだろうしな」
そういえば、デブが魔界から転がり出て来たのは、この国だったなと、ふと思い出す。
あのデブは元気にしてるだろうか?
「ともかく、会いに行くでしゅよ!」
「こっちから気配がする。わかるだろ?」
「でしゅ?」
なんとなく、モヤモヤする嫌な感覚はするので、ウヘァという顔で私はアールを見た。
あいつも私を見て、嫌だなって顔してる。
「……帰るか?」
「でしゅね」
「ここまで来て、ダメです!」
しゅーさんに怒られたので、仕方なく私達は、その嫌なモヤモヤの方に進んだ。
廃村を抜けて、そのままハゲ山を登っていく。
枯れた木々が、枝を折られて、そこかしこに生えたまま。
皮はめくれて、何やら刃物で切りつけられた跡にも見える。
「人はいるらしいな、油断せず私の背後にいろよ。あと、王子はチビ姫と手を繋いで離さないように」
「はい!」
テクテクとアールを先頭に、しゅーさんに手を引かれて、ザクザクと雪を踏んで進む。
不思議と足をとられる雪でないのは、降ったばかりで固まっていないからだろうか?
山の頂に辿り着き、今度は下り坂となる。
「ほらよ」
んしょと、私はアールの背中におぶさった。
「おらこい」
「あっ、いえ……僕は」
「いいから、ほっ」
しゅーさんは抱き上げられ、二人を抱えて、アールは慎重に山を下っていった。
「あのっ、僕を抱いていたら手が塞がります。危険では?」
「気配はわかるし、風で切り裂くから、ガキは黙ってろ」
冷たく吐き捨てるアールの態度に、私達は黙った。
下り坂を進んで行くと、枯れた木々の向こうに、透明な凍った湖が現れた。
そして、そのほとりに小さな岩レンガを積み上げた家がある。
大きな湖に寄り添うような、ポツンと一軒家のそこからは、細い煙が立ち上っていた。
「第一村人発見でしゅ!」
「さあて、歓迎されるかな?」
ザザザッと斜面を滑り、ショートカットで湖の目指す家に近づいた。
……ぴえん。やはり中から、モヤモヤした嫌な気配がする。
「お前らは、ここにいろ」
少し離された場所で私達は降ろされて、アールが一人玄関の寂れた木の扉をノックした。
「おーい、いるかー!」
静かな人気のない湖一帯、よく通るアールの声が響き渡った。
ゴンゴンと強めにドアを叩いて、押しては引くが、鍵がかかっているらしい。
「おーい、いるのはわかってんだ!」
「ぃっ……今っ! いませぇ――――ん!!」
……は?
私としゅ-さんは、顔を見合わせた。
何か可愛い声が、聞こえたような?
対して、アールは顔を引きつらせて、ヒクヒクと体を震わせている。
「……ざけんなよ? いるだろーがぁぁああああっ!!」
ドカ――――――――ンッッッ!!
キレたアールがドアを足で蹴り破った瞬間、木っ端みじんとなったドアの残骸が吹き飛ぶとともに、うねりの轟音を立てた、黒い煙がアールを襲う。
「ぴぎょぇぇーっ!」
「まゆまゆこっち!」
しゅーさんに抱きしめられると同時に、しゅーさんのスキルが発動し、青いバリアに守られる。
「ゼファー! 貴様っ!」
アールが即座に、銀色の風を自らにまとい、竜巻と共に黒い煙を霧散させた。
だか、何度も大きな固まりが黒と紫に交じり合い、爆弾の玉のようにアールを襲った。
腰を低くして構え、剣を振りかざし、目の前に大きく半月を描くかのごとく剣を走らせた。
シュンという音と、空気が爆ぜる音が何度も炸裂するが、いまだに中からの攻撃は止む気配はない。
「おい聞けゼファー! 我としてもお前がどうなろうと知った事ではないがな! だが女神の意思で、我らの飯係を連れて来た! 引導を渡して欲しいなら、ともかく話を聞いてからにしろ!」
アールの絶叫に、やっと攻撃がピタリと止まった。
周囲には、シュウシュウと溶けた雪と開いた穴が無数にある。
プルプルと震えるしゅーさんの腕を、私はグイグイと引っ張った。
「一時停止みたいでしゅよ」
「……ぷっはぁ……はぁはぁ……一体、どうして」
「わかんないでしゅが、やな感じでしゅ」
飯係ではなく、お前らの命を握る御主人様だいっ!
と、怒る部分はそことは違って、精霊が精霊を攻撃とかするの?
「ゼファーとかいう、やなやつの顔を見てやるでしゅ!」
私が目をこらして、扉を失くした入口に立つ、アールの方向に視線を集中した。
「うにゅ?」
なんか村人Aが、出てきたんですけど?
25
あなたにおすすめの小説
積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!
ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。
悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。
ヒロインですが、舞台にも上がれなかったので田舎暮らしをします
未羊
ファンタジー
レイチェル・ウィルソンは公爵令嬢
十二歳の時に王都にある魔法学園の入学試験を受けたものの、なんと不合格になってしまう
好きなヒロインとの交流を進める恋愛ゲームのヒロインの一人なのに、なんとその舞台に上がれることもできずに退場となってしまったのだ
傷つきはしたものの、公爵の治める領地へと移り住むことになったことをきっかけに、レイチェルは前世の夢を叶えることを計画する
今日もレイチェルは、公爵領の片隅で畑を耕したり、お店をしたりと気ままに暮らすのだった
元侯爵令嬢の異世界薬膳料理~転生先はみんな食事に興味が無い世界だったので、美味しいご飯で人の身も心も癒します~
向原 行人
ファンタジー
異世界へ転生して数日。十七歳の侯爵令嬢、アリスとして目覚めた私は、早くも限界を迎えていた。
というのも、この世界……みんな食事に興味が無くて、毎食パンとハムだけとか、ハムがチーズに変わるとか、せいぜいその程度だ。
料理というより、食材を並べているだけって感じがする。
元日本人の私としては温かいご飯がたべたいので、自分で食事を作るというと、「貴族が料理など下賤なことをするのは恥だ!」と、意味不明な怒られ方をした。
わかった……だったら、私は貴族を辞める!
家には兄が二人もいるし、姉だっているから問題無いでしょ。
宛てもなく屋敷を飛び出した私は、小さな村で更に酷い食事事情を目の当たりにする。
育ち盛りの子供たちや、身体を使う冒険者たちが、それだけしか食べないなんて……よし、美味しいご飯でみんなも私も幸せになろう!
医食同源! 大食いモフモフ聖獣に、胃袋を掴んでしまった騎士隊長と一緒に、異世界で美味しくて身体に良い食材探しだ!
※第○話:主人公視点
挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点
となります。
不倫されて離婚した社畜OLが幼女転生して聖女になりましたが、王国が揉めてて大事にしてもらえないので好きに生きます
天田れおぽん
ファンタジー
ブラック企業に勤める社畜OL沙羅(サラ)は、結婚したものの不倫されて離婚した。スッキリした気分で明るい未来に期待を馳せるも、公園から飛び出てきた子どもを助けたことで、弱っていた心臓が止まってしまい死亡。同情した女神が、黒髪黒目中肉中背バツイチの沙羅を、銀髪碧眼3歳児の聖女として異世界へと転生させてくれた。
ところが王国内で聖女の処遇で揉めていて、転生先は草原だった。
サラは女神がくれた山盛りてんこ盛りのスキルを使い、異世界で知り合ったモフモフたちと暮らし始める――――
※第16話 あつまれ聖獣の森 6 が抜けていましたので2025/07/30に追加しました。
貴族令嬢、転生十秒で家出します。目指せ、おひとり様スローライフ
凜
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞にて奨励賞を頂きました。ありがとうございます!
貴族令嬢に転生したリルは、前世の記憶に混乱しつつも今世で恵まれていない環境なことに気が付き、突発で家出してしまう。
前世の社畜生活で疲れていたため、山奥で魔法の才能を生かしスローライフを目指すことにした。しかししょっぱなから魔物に襲われ、元王宮魔法士と出会ったり、はては皇子までやってきてと、なんだかスローライフとは違う毎日で……?
転生チート薬師は巻き込まれやすいのか? ~スローライフと時々騒動~
志位斗 茂家波
ファンタジー
異世界転生という話は聞いたことがあるが、まさかそのような事を実際に経験するとは思わなかった。
けれども、よくあるチートとかで暴れるような事よりも、自由にかつのんびりと適当に過ごしたい。
そう思っていたけれども、そうはいかないのが現実である。
‥‥‥才能はあるのに、無駄遣いが多い、苦労人が増えやすいお話です。
「小説家になろう」でも公開中。興味があればそちらの方でもどうぞ。誤字は出来るだけ無いようにしたいですが、発見次第伝えていただければ幸いです。あと、案があればそれもある程度受け付けたいと思います。
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
異世界リナトリオン〜平凡な田舎娘だと思った私、実は転生者でした?!〜
青山喜太
ファンタジー
ある日、母が死んだ
孤独に暮らす少女、エイダは今日も1人分の食器を片付ける、1人で食べる朝食も慣れたものだ。
そしてそれは母が死んでからいつもと変わらない日常だった、ドアがノックされるその時までは。
これは1人の少女が世界を巻き込む巨大な秘密に立ち向かうお話。
小説家になろう様からの転載です!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる