転生幼女は発酵スキルで、異世界に和食革命を起こす!味噌、醤油、酢を作って餌付けしたら、いつの間にか世界に名が轟いていた件

西野和歌

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第6章 拝啓・北の国から

第87話 第一村人発見

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 雪もやみ、透き通るような青空と、冷たい風が吹き付ける廃村に、私たちは辿り着いた。
 ここが北の国、元・クラナド帝国である。

 以前は大陸一の軍事国家として、他国に対して国交を保ちつつも、強国として名をはせていた国だ。
 四季がはっきりとした土地で、確かに雪も降るが、一年の半分は水が豊かな土地であり、水田から米の農作が盛んな地域であった。
 いつしか精霊の加護を失くし、国王は慢心し、病が発生し、季節は雪に閉ざされ、この国は瀕死に陥った。

 国としての機能はなく、辛うじて生き残った人々が、各地でひっそりと集落を作り、身を寄せ合って生き延びている状態だ。
 だが、それすらも時間の問題で、彼らは病の死に怯え、消えゆく時を待つのみだった。

「どうして他の国に、助けを求めたり、逃げなかったでしゅか?」
「……ゼファーが禁じた」
「でしゅ?」
「自国の全ての者たちの、他国への移動を禁じた。その精霊の力をもってだ」
「ひょおおーっ!」
「辛うじて、本当にわずかな行商人だけが、この国を訪れてた。けれど、すぐに去ったんですよね」

 しゅーさんの言葉に、アールは頷いた。

「もう、ここで得る物は何もないだろうしな」

 そういえば、デブが魔界から転がり出て来たのは、この国だったなと、ふと思い出す。
 あのデブは元気にしてるだろうか?

「ともかく、会いに行くでしゅよ!」
「こっちから気配がする。わかるだろ?」
「でしゅ?」

 なんとなく、モヤモヤする嫌な感覚はするので、ウヘァという顔で私はアールを見た。
 あいつも私を見て、嫌だなって顔してる。

「……帰るか?」
「でしゅね」
「ここまで来て、ダメです!」

 しゅーさんに怒られたので、仕方なく私達は、その嫌なモヤモヤの方に進んだ。
 廃村を抜けて、そのままハゲ山を登っていく。
 枯れた木々が、枝を折られて、そこかしこに生えたまま。
 皮はめくれて、何やら刃物で切りつけられた跡にも見える。

「人はいるらしいな、油断せず私の背後にいろよ。あと、王子はチビ姫と手を繋いで離さないように」
「はい!」

 テクテクとアールを先頭に、しゅーさんに手を引かれて、ザクザクと雪を踏んで進む。
 不思議と足をとられる雪でないのは、降ったばかりで固まっていないからだろうか?
 山の頂に辿り着き、今度は下り坂となる。

「ほらよ」

 んしょと、私はアールの背中におぶさった。

「おらこい」
「あっ、いえ……僕は」
「いいから、ほっ」

 しゅーさんは抱き上げられ、二人を抱えて、アールは慎重に山を下っていった。

「あのっ、僕を抱いていたら手が塞がります。危険では?」
「気配はわかるし、風で切り裂くから、ガキは黙ってろ」

 冷たく吐き捨てるアールの態度に、私達は黙った。
 下り坂を進んで行くと、枯れた木々の向こうに、透明な凍った湖が現れた。
 そして、そのほとりに小さな岩レンガを積み上げた家がある。

 大きな湖に寄り添うような、ポツンと一軒家のそこからは、細い煙が立ち上っていた。

「第一村人発見でしゅ!」
「さあて、歓迎されるかな?」

 ザザザッと斜面を滑り、ショートカットで湖の目指す家に近づいた。
 ……ぴえん。やはり中から、モヤモヤした嫌な気配がする。

「お前らは、ここにいろ」

 少し離された場所で私達は降ろされて、アールが一人玄関の寂れた木の扉をノックした。

「おーい、いるかー!」

 静かな人気のない湖一帯、よく通るアールの声が響き渡った。

 ゴンゴンと強めにドアを叩いて、押しては引くが、鍵がかかっているらしい。

「おーい、いるのはわかってんだ!」
「ぃっ……今っ! いませぇ――――ん!!」

 ……は?

 私としゅ-さんは、顔を見合わせた。
 何か可愛い声が、聞こえたような?
 対して、アールは顔を引きつらせて、ヒクヒクと体を震わせている。

「……ざけんなよ? いるだろーがぁぁああああっ!!」

 ドカ――――――――ンッッッ!!
 キレたアールがドアを足で蹴り破った瞬間、木っ端みじんとなったドアの残骸が吹き飛ぶとともに、うねりの轟音を立てた、黒い煙がアールを襲う。

「ぴぎょぇぇーっ!」
「まゆまゆこっち!」

 しゅーさんに抱きしめられると同時に、しゅーさんのスキルが発動し、青いバリアに守られる。

「ゼファー! 貴様っ!」

 アールが即座に、銀色の風を自らにまとい、竜巻と共に黒い煙を霧散させた。
 だか、何度も大きな固まりが黒と紫に交じり合い、爆弾の玉のようにアールを襲った。
 腰を低くして構え、剣を振りかざし、目の前に大きく半月を描くかのごとく剣を走らせた。

 シュンという音と、空気が爆ぜる音が何度も炸裂するが、いまだに中からの攻撃は止む気配はない。

「おい聞けゼファー! 我としてもお前がどうなろうと知った事ではないがな! だが女神の意思で、我らの飯係を連れて来た! 引導を渡して欲しいなら、ともかく話を聞いてからにしろ!」

 アールの絶叫に、やっと攻撃がピタリと止まった。
 周囲には、シュウシュウと溶けた雪と開いた穴が無数にある。

 プルプルと震えるしゅーさんの腕を、私はグイグイと引っ張った。

「一時停止みたいでしゅよ」
「……ぷっはぁ……はぁはぁ……一体、どうして」
「わかんないでしゅが、やな感じでしゅ」

 飯係ではなく、お前らの命を握る御主人様だいっ!
 と、怒る部分はそことは違って、精霊が精霊を攻撃とかするの?

「ゼファーとかいう、やなやつの顔を見てやるでしゅ!」

 私が目をこらして、扉を失くした入口に立つ、アールの方向に視線を集中した。

「うにゅ?」

 なんか村人Aが、出てきたんですけど?

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