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第6章 拝啓・北の国から
第89話 羊と狼、されどもカボチャ
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椅子にふんぞり返る黒いモコモコに向かって、アールが必死に説明していた。
「だから我としても、なぜお前たちに我の領地のスキル使いを分けるのかと、不満はあるのだが!」
「ですから以前に言ったように。女神は私たちの事なんて考えていませんよ。もし考えていたならば、世界がこのようになっていません」
「だから、あの女神が介入すると、神の力が作動して不文律がおこりバランスが崩れてだなぁ……あー、うぜぇ」
「なんにせよ、我が国は終わりです。王族もほぼ滅びましたし、国として機能不全。まあ、当然ですよね。祈りもなくし他国への戦に力注ぐ哀れな人間です。呪いの病に侵されても仕方ない」
「それって、女子供や年寄はかからないんでしゅか?」
乾かされているパンツを睨みつつ、私は黒モコモコに言った。
哀れ、カボチャパンツは暖炉の前に、洗濯紐によって吊るされている。
「何を言って……勿論、問答無用でこの国の国民である限り、この病からは……」
「だったら、よそ者のアタチは病にかからないんでしゅか?」
「それは……」
「でしゅよね? 病にかかるのに理由なんてないでしゅ」
バカだろこの羊。
鬱々とした気持ちをぶつけるように、私は羊を指さして睨みつける。
「メリーが人間を嫌いなのはわかったでしゅ。だけど、自分が守れなかったのを、何かのせいにして逃げちゃダメでしゅ」
「わかったような口を聞くな小娘が!!」
暴風が吹き荒れ、パンツが飛ぶ。
室内は黒い煙が渦を巻くが、とっさにアールが風を出して煙を無理やり外に追い出した。
しゅーさんは、走って私を抱きしめてバリアを張る。
「おやめ下さい! わが主!」
ティナの悲鳴すら無視して、羊は止まる気配を見せない。
どうやら羊は気が短い様子だ。
ていうか、パンツが飛んだ!
パンツ!
しゅーさんに羽交い絞めにされつつも、私は必死にパンツを掴んだ。
パーンーツー!
プチン……遠くで私の何かがキレた。
「このぉぉおおーっ! バカちんがぁぁぁぁーっ!」
「愚かなのはお前たちだ、人間どもめぇええーっ!」
「メェェェーじゃねーでしゅ! 人すら守れぬ精霊が偉そうにぃぃい!」
プルプルと息を止めるのに限界を迎えたしゅーさんの、私を抱きしめる力が緩んだ。
その瞬間の隙を見逃さず、私はザザッと羊の前に出た。
「おい馬鹿っ!」
アールが咄嗟にかばう前に、私は羊を怒鳴りつけた。
「嫌い嫌いも好きのうちでしゅ! そんなんだから、女神が必死に病の解決方法を伝えても聞こえなかったんでしゅよ! この独りよがりのアンポンタン!」
「……なっ!」
私の叫びに、羊の体から轟音が消えるとともに、ピタリと黒い煙が消えた。
声も出せず、ぜぇぜぇと息をするしゅーさんと、羊にすがりつくティナ。
そして、私の横に並んだアール、皆が私と羊に注視した。
私は全身で、わからずやの黒モコモコに怒鳴りつけた。
「助けられなかったのを誤魔化してる場合じゃないでしゅ! アタチは女神に聞いたでしゅよ! ずっとメリーに必死で話しかけたのに、もう声も届かなくなったって!」
「そ、そんな……女神が……、あの方が、私に?」
「だからアタチが聞いてきたでしゅ! 病気の治し方をでしゅ!」
羊が驚愕して、ワナワナと震える。
アールはこっそりと、私に耳打ちした。
「治療法を知ってるのか?」
「でしゅ」
「ちなみに、なんでメリーだ」
「羊だからでしゅ」
んで、聞きたかったのは本当はどっち? 治療なの? メリーなの? メリーなんだな?
私の言葉に反応したのは、羊ではなく、その羊のモフモフを掴んでいるティナだった。
「こ、ここ、こ、子供が、本当に、知ってるの?」
「子供でしゅけど、最強無敵のアリアナちゃんでしゅ!」
私がカボチャパンツを握りしめて、胸を張ると、黙っていたしゅーさんも助太刀してくれた。
「彼女は本当に女神の祝福を受けた、特別な存在です。そして、今では三大精霊までの力を、授けられています」
「み、みみみ、みんな、治るの?」
涙目で震えるティナに、私はタクトのようにパンツを振りかざし、宣言した。
「その為に、アタチが来たでしゅよ!」
「くっ、口だけなら何とでも言えますね」
羊が悪態をつく。
ほーほーそうかそうか、ならば教えてしんぜよう。
「口より腹でわからせてやるでしゅ。アールお腹空いたでしゅか?」
本人が返事するより、素直なお腹の音がグーッとなった。
本当、こいつ自由に生きてるなぁ……四歳児の私より、自由かもなぁ。
そして、なんで照れるんだ? 馬鹿だろ? やっぱ馬鹿だよね?
「まゆまゆ、ご飯を作るのかい? でも食材や道具は馬車に乗せたまんまだよ? とりに戻る?」
「ここに住んでるなら、何かしらの食べ物はあるはずでしゅ」
私はティナに確認した。
「台所はどこでしゅか?」
「む、む、向こうだけど、チビちゃんお腹すいたの?」
「あの、馬鹿狼が空いてるでしゅ。まあ、そろそろお昼ご飯の時間でしゅ」
「な、なら、簡単なスープでよければ、よよよ用意するわね」
「アタチにも料理させろいでしゅ」
私の申し出に、ティナは目を丸くした。
「こここ、こんな、小さい子に料理なんてっ!」
なんだろう、ここに来て久しぶりに、真面目な感想を聞かされている感動すらある。
普通はそうなんだよなぁ……と、パンツをギュッと握りしめて打ち震えた。
「ともかく、アタチはご飯食べさせに来たでしゅ。手伝えでしゅよ」
言われた隣の部屋に、私はとっとと向かって行った。
「だから我としても、なぜお前たちに我の領地のスキル使いを分けるのかと、不満はあるのだが!」
「ですから以前に言ったように。女神は私たちの事なんて考えていませんよ。もし考えていたならば、世界がこのようになっていません」
「だから、あの女神が介入すると、神の力が作動して不文律がおこりバランスが崩れてだなぁ……あー、うぜぇ」
「なんにせよ、我が国は終わりです。王族もほぼ滅びましたし、国として機能不全。まあ、当然ですよね。祈りもなくし他国への戦に力注ぐ哀れな人間です。呪いの病に侵されても仕方ない」
「それって、女子供や年寄はかからないんでしゅか?」
乾かされているパンツを睨みつつ、私は黒モコモコに言った。
哀れ、カボチャパンツは暖炉の前に、洗濯紐によって吊るされている。
「何を言って……勿論、問答無用でこの国の国民である限り、この病からは……」
「だったら、よそ者のアタチは病にかからないんでしゅか?」
「それは……」
「でしゅよね? 病にかかるのに理由なんてないでしゅ」
バカだろこの羊。
鬱々とした気持ちをぶつけるように、私は羊を指さして睨みつける。
「メリーが人間を嫌いなのはわかったでしゅ。だけど、自分が守れなかったのを、何かのせいにして逃げちゃダメでしゅ」
「わかったような口を聞くな小娘が!!」
暴風が吹き荒れ、パンツが飛ぶ。
室内は黒い煙が渦を巻くが、とっさにアールが風を出して煙を無理やり外に追い出した。
しゅーさんは、走って私を抱きしめてバリアを張る。
「おやめ下さい! わが主!」
ティナの悲鳴すら無視して、羊は止まる気配を見せない。
どうやら羊は気が短い様子だ。
ていうか、パンツが飛んだ!
パンツ!
しゅーさんに羽交い絞めにされつつも、私は必死にパンツを掴んだ。
パーンーツー!
プチン……遠くで私の何かがキレた。
「このぉぉおおーっ! バカちんがぁぁぁぁーっ!」
「愚かなのはお前たちだ、人間どもめぇええーっ!」
「メェェェーじゃねーでしゅ! 人すら守れぬ精霊が偉そうにぃぃい!」
プルプルと息を止めるのに限界を迎えたしゅーさんの、私を抱きしめる力が緩んだ。
その瞬間の隙を見逃さず、私はザザッと羊の前に出た。
「おい馬鹿っ!」
アールが咄嗟にかばう前に、私は羊を怒鳴りつけた。
「嫌い嫌いも好きのうちでしゅ! そんなんだから、女神が必死に病の解決方法を伝えても聞こえなかったんでしゅよ! この独りよがりのアンポンタン!」
「……なっ!」
私の叫びに、羊の体から轟音が消えるとともに、ピタリと黒い煙が消えた。
声も出せず、ぜぇぜぇと息をするしゅーさんと、羊にすがりつくティナ。
そして、私の横に並んだアール、皆が私と羊に注視した。
私は全身で、わからずやの黒モコモコに怒鳴りつけた。
「助けられなかったのを誤魔化してる場合じゃないでしゅ! アタチは女神に聞いたでしゅよ! ずっとメリーに必死で話しかけたのに、もう声も届かなくなったって!」
「そ、そんな……女神が……、あの方が、私に?」
「だからアタチが聞いてきたでしゅ! 病気の治し方をでしゅ!」
羊が驚愕して、ワナワナと震える。
アールはこっそりと、私に耳打ちした。
「治療法を知ってるのか?」
「でしゅ」
「ちなみに、なんでメリーだ」
「羊だからでしゅ」
んで、聞きたかったのは本当はどっち? 治療なの? メリーなの? メリーなんだな?
私の言葉に反応したのは、羊ではなく、その羊のモフモフを掴んでいるティナだった。
「こ、ここ、こ、子供が、本当に、知ってるの?」
「子供でしゅけど、最強無敵のアリアナちゃんでしゅ!」
私がカボチャパンツを握りしめて、胸を張ると、黙っていたしゅーさんも助太刀してくれた。
「彼女は本当に女神の祝福を受けた、特別な存在です。そして、今では三大精霊までの力を、授けられています」
「み、みみみ、みんな、治るの?」
涙目で震えるティナに、私はタクトのようにパンツを振りかざし、宣言した。
「その為に、アタチが来たでしゅよ!」
「くっ、口だけなら何とでも言えますね」
羊が悪態をつく。
ほーほーそうかそうか、ならば教えてしんぜよう。
「口より腹でわからせてやるでしゅ。アールお腹空いたでしゅか?」
本人が返事するより、素直なお腹の音がグーッとなった。
本当、こいつ自由に生きてるなぁ……四歳児の私より、自由かもなぁ。
そして、なんで照れるんだ? 馬鹿だろ? やっぱ馬鹿だよね?
「まゆまゆ、ご飯を作るのかい? でも食材や道具は馬車に乗せたまんまだよ? とりに戻る?」
「ここに住んでるなら、何かしらの食べ物はあるはずでしゅ」
私はティナに確認した。
「台所はどこでしゅか?」
「む、む、向こうだけど、チビちゃんお腹すいたの?」
「あの、馬鹿狼が空いてるでしゅ。まあ、そろそろお昼ご飯の時間でしゅ」
「な、なら、簡単なスープでよければ、よよよ用意するわね」
「アタチにも料理させろいでしゅ」
私の申し出に、ティナは目を丸くした。
「こここ、こんな、小さい子に料理なんてっ!」
なんだろう、ここに来て久しぶりに、真面目な感想を聞かされている感動すらある。
普通はそうなんだよなぁ……と、パンツをギュッと握りしめて打ち震えた。
「ともかく、アタチはご飯食べさせに来たでしゅ。手伝えでしゅよ」
言われた隣の部屋に、私はとっとと向かって行った。
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