転生幼女は発酵スキルで、異世界に和食革命を起こす!味噌、醤油、酢を作って餌付けしたら、いつの間にか世界に名が轟いていた件

西野和歌

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第7章 四大精霊と救世主

第108話 怒りの聖女召喚

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 しゅーさんの真剣な質問とは裏腹に、私はただただ喜びまくっていた。

「おいチビ姫さん、浮気かい?」

 アールに茶化されても私は平気だ。

「二次元の魂は彼のものでしゅ! アタチをラノベに引き込んだ犯人はハヤトじゃなくって、彼だったかもでしゅ!」
「おーい、何言ってるかわからん!」

 こちらの呑気な会話も、ゼンの言葉でピタリと停止した。

「ワイも少し違和感はあってん。どうやらワイの時代より古い時代に、二人はおったんちゃいまっか?」
「そ、それで年号は?」
「雅号4年でっせ。平成・令和の次が雅号ですわ」
「み、未来! パラレルワールド!」

 ピタリと喜びの舞の私の足が止まる。
 不審な空気が流れて、精霊たちの気配も鋭く変化した。
 だが、私は即座に指示を出す。

「鍋係どもっ、ともかく手は休めるなでしゅ!」

 無言で各自の手が、シャカシャカと動き始めた。
 勿論、デブも先ほどから、のほほんと手は動かしている。

「時間軸がどうのって、ワイはこっちの世界に来て300年はたってますねん」
「ほわわぁーっ、じじぃだ! デブなうえにじじぃだー!」
「あのな嬢ちゃん、魔界人は寿命が長いんや。ワイの妹が転移させられて、こっちに連れてこられたと知ったのは、ワイがあの世界で死んでからや」
「あっちの世界では、妹さんは行方不明のまま?」
「そや」

 女神も残酷な事をする。
 地球で暮らしていた仲の良い兄と妹。
 その妹は女神が異世界から、聖女として召喚された。
 召喚という名の強制転移だ。

「確かに妹は不治の病で死にかけていたけどな、それでも突然消えたらそらな」

 ずっと妹を思って死んだ兄の魂は、異世界の女神に真実を教えて貰った。
 妹は聖女として、立派に魔界との最後の切り離しと封印に協力して、人々の頂点に立った事。
 この異世界で、出会った勇者と恋仲になった事。
 二人は結ばれて、そして新しい国を作り、四人の子宝にも恵まれた。
 そして、幸せに暮らしているはずだった。

「はずだった?」

 しゅ-さんの言葉に、精霊たちが、なぜか「ああ……」と遠い目をした。

「アール達は、聖女を知ってるでしゅね」
「我らは知っているが、極力関わらないようにしていた」
「どうしてでしゅか?」
「人の求めし聖女だからだ。我らが求めたのではない」
「ですが、私の民が最初に一番強く願いましたので、私も最初は協力しようとしたのです。だがあの聖女は、羊は聖獣ではない。イメージと違うと文句を垂れられたので、私も接触は最低限に致しました」

 メリーが恭しく、遠い目をして語ってくれた。
 どうやら精霊たちにとって、暗黒史のようだ。
 何があった?

「確かにうちの妹は、異世界恋愛乙女ゲーにハマって、夢見がちと理想はあったやろうな。それでも、召喚したからには、幸せにする義務があるんやないんかいっ!」

 怒りをあらわにしたデブが、大きなスプーンを片手に立ち上がった。

「デブ、ステイ(待て)でしゅ!」
「嬢ちゃん! ワイは女神に頼んだんや! この世界で生まれ変わるなら、妹の近くがいいってな! そしたらなんで、魔界で生まれるんや!」
「は?」

 私の動きが停止した。
 (確かに、ビックリするよな)
 ゼンは目を血走らせて、天に吠えた。

「なんで妹は、心を患って魔界に引きこもってるんや! 聖女やないんか! 幸せなんかやあらへん! なんでや! なんで! あんな姿に……」
「人と人の営みのトラブルに、女神も精霊も口出しはせぬ」

 冷めたアールの言葉が耳を打つ。

「それでもや! だったらなんで、勇者は妹を大事にしてくれへんかってん!」
「少なくとも、初めての国の王となり、彼は必死で頑張っていましたよ? 実際に彼の子たちも各地を治めて、立派に統治しました」

 羊も、感情のこもらない声で淡々と告げた。
 二匹の言葉にガクリと魂が抜けたように、ゼンはもといた丸太の椅子にヨロヨロと座った。
 背を縮め、小さくなって鍋をかき混ぜる。

「花ひらいて~パッション、私の胸はあなたに夢中でキュンキュン~♪」
「何の歌でしゅか?」
「妹の好きだった、魔法アイドル・リリファちゃんの……」
「キモイでしゅ。ともかく魔界に帰れるようにアタチも協力してやるから落ち着けでしゅよ」
 
 私の言葉にデブは小さく頷いた。
 何やら複雑というか、色々あったらしいが、そんなもん今考えても仕方ない。

「面倒そうだから、後回しって考えたでしょ? まゆまゆ」
「答えなんて、あとから出てくるものでしゅからね」

 今度女神とあったら、首をつかまえてカツアゲ・スタイルで乳を何発かプルわせてやる。
 タップン・タップンしてやんよ。

「よち、鍋はいい感じでしゅ! 今夜は徹夜じゃなくて、大丈夫そうでしゅよ」

 私は各自の鍋の前に立ち、スキルを発動させる。
 いつしか夜となった暗闇の中で、銀色の月だけが綺麗に輝いている。
 よく頑張ったよ、偉いぞ! 特にわ・た・し。

「みんなの力をアタチにくれっ! おいちくなぁーれっ!!」

 全力で思いを込めて、私の体から七色の光が交じり合い、黄金色となって鍋に吸い込まれていく。
 最後の力を全て注ぎ、みんながおいちく元気になりますように。
 まばゆく瞬く一面の光、この世界が全て金色に染まっていく。

 笑える話さ。発酵なんてショボイと思ったスキルが、今や最高の力となった。
 人を救うなんてガラじゃないけれど、それでも生まれた新しい故郷だ。
 救ってやるから私に尽くせよと、脳内に出会った優しい人たちの姿が浮かぶ。

 さあ、バージョンⅡの、味噌っかす女神鍋が出来上がったよ。
 小さな体の奥底から、絞り出した黄金の力は全て注ぎ終わった。

「こ、これで最後でしゅ……とっとと配ってこーいっ!! プシュ~……っ」

 最後の記憶は曖昧で、精霊の通路を開放したのちに、私の意識は消えていく。
 ガクリと私が力を無くすと、ゼンがガッシリと私を支えてくれた。

「ええ子やで、おやすみ」

 お前も恨み言ばっか言わないで、前を見て進もうぜ……と脳内で叫びながら、いつもの夢の国に私は旅立ったのだった。
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