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第9章 魔界と聖女
第119話 モーニン・ドラゴン
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「あらーん、もう行くの」
「仕方ないわよー気を付けてね、プロテインいる?」
「いらん!」
ハッキリと断ったアールに男気を感じて、私たちは拍手で称えた。
マッチョ姉貴と化した二人は、クネクネと教えてくれた。
「近道だけど、気を付けてねん」
「竜をみかけても寝てると思うから、刺激しちゃダメよん」
「きたでしゅーっ! ドラゴンでしゅーっ!」
ピカッと私は閃いた、そう閃いちゃったのだ。
きたきたきたきたと興奮している私を、ヒョイと抱えた兄が号令を出す。
「では、世話になったな。ありがとう、失礼する」
うふん、あはんと投げキッスするマッチョから、ツツ……と視線を逸らす動きは流石は兄妹で一緒だった。兄も分かってる、視線合わせたらダメだって。
明るいのに、なぜか風が生暖かい荒地に私たちは足を踏み出した。
デブを先頭に、私たちは歩いていく。
うん、私は兄に、しゅーさんは抵抗したがアールに背負われている。
「竜がいるらしいからな、おとなしく保護されてろよ?」
「いえ、あの精霊様、僕は……」
「しっ! ここで精霊とか言うな!」
「申し訳ございません。ええっとアール様」
「……アールでいい」
おいこら、私のしゅーさんに何で偉そうなんだ。
しゅーさんは、旅の間もずっとアールに敬意を払っていた。
「馬鹿狼でしゅ!」
「お前はもう少し敬意を持とうな?」
「いや、だってアールだし。ね? アーリー」
「そうでしゅ、馬鹿狼でしゅ」
「……どうして我はこいつらを……以下略」
略しやがった。
後ろでなんだかんだと平和にやっていると、前を進むデブが停止した。
マッチョの家を出て、かれこれ一時間は歩いただろうか。
ただの荒地に、ポツポツと草木がやっと茂ってはきたが、見渡す限りは何もない。
たまに遠くで、恐竜大戦争みたいなギャースカが聞こえたが、なかった事にした。
私も成長したのだよ、ふふふ。
「ティラノザウルスがいいなぁ。トリケラトプスでもいいけど」
「しゅーさん、夢みすぎでしゅよ」
私たちは運ばれながら、そんなのどかな会話をしていたんだが……。
「ああ、ここやわ」
大人一人が入れそうな水たまりを見つけて、デブはそう言った。
何のことだがわからない私をおいて、大人たちが会話する。
「あいつらが言っていたやつか?」
「これは、人体に害はないのだろうな?」
「割と魔界では、よくある歪みでんがな。問題は、通過より出た先の事なんやが……」
私は前に抱えられ、しゅーさんは背負われながら話は進んでいく。
とりあえず、目的地は聖女のいる城。
以前の魔界の主から乗っ取った城に住みつき、引きこもっているらしい迷惑女だ。
そこに向かうのに、広大な魔界をチンタラ進むのではなく、近道を使用してショートカットでグイグイと行く作戦。
近道のはずだが、なぜかアールは水たまりを熱く見つめて……。
無言で私としゅーさんをトレードした。
肩に、よじよじ私はよじ登る。
私を抱え、アールは突然駆け出した!
「でしゅよぉぉぉーっ!」
「はい! ボッチャーン!」
「貴様の皮剥いでやるでしゅよーっ!!」
アールは勢いよく、チャポンと私を肩に担いだまま水たまりに飛び込んだ。
大きな水しぶきがあがり、ズブズブとそのままアールの長身は水の中に沈んでいく。
……という事は?
「ぴぎぃぃいーっ!」
「あーっはっはっは!」
何が楽しいんだよ!
景色が水色から、即座に緑に染まっていく。
「ふぇ?」
「はっ、早速お出ましかよ!」
鼻で笑ったアールは、私を後ろにポーンと投げて、間合いをとった目標に向けて構えをとった。
「でしゅよーっ!」
「はい、キャッチやで」
デブに軽く受け止められた私は、ボヨンと肉で軽く衝撃を受け止められた。
すぐさま次に現れた兄は、即座にしゅーさんをおろして、アールの横に並ぶ。
「まゆまゆ!」
「しっ、坊ちゃん。声は静かにや、やっこさんはまだ半分寝てるで」
二人が警戒するその先は、緑豊かな大きな沼地だ。
ボコボコとガスが吹き出て、紫色をした泥水がブクリブクリと泡を弾けさせていた。
湿度も上がっているのか、肌にまとわりつく空気すら気持ち悪い。
日もさえぎられそうなジャンクルの奥地に、あの水たまりから移動してきたみたいだ。
いや、問題はそこではない。
大きなトラック位の大きさの、なんか緑のテカテカした鱗の名物ファンタジーが、まさにそこに存在した。
「あれが噂の……ティラノザウルス?」
「恐竜が好きなのはわかってるでしゅけど、ここは魔界でしゅよ」
しゅーさんの、ちょっと嬉し気な男のロマンを潰して申し訳ないが、奴はゲームによってはラスボス級のやつだ。
「あれが竜《ドラゴン》でしゅね!」
「せや、ワイも初めて見た」
魔界だからゴロゴロいるのかと思ったが、珍しいらしい。
奴は長い首をゆったりと動かして、紫の水しぶきを飛ばした。
目は金色で半ば閉じられ、動きの鈍さから覚醒前みたいだ。
腰の剣に手をかけたままに、兄とアールが竜から目を離さない。
しゅーさんが、ソッと私の手を握った。
「僕のバリアで守るから、大丈夫だからね」
「……ボソボソ」
「ん?」
デブを盾に、後ろで控えていた私はブツブツと呟いた。
しゅーさんは、私の顔に耳を近づける。
「……でしゅ……クク……これこそが、でしゅ」
「ええっと、何?」
少し顔をひきつらせた元夫は、大変勘がいいらしい。
長い付き合いだもんね、フフフ。
「お二人さん、寝ている隙に通り過ぎるのが一番や。その竜は災いの竜いうて、相手したらあきまへん。今なら、静かに通り過ぎれますさかいに……」
カチャンと剣を鞘に戻す音が二つ聞こえた。
それと同時に、ブクブクと水音だけなる緑の奥地に、私の魂の叫びがこだました。
「ドラゴンステーキでしゅぅううううっ!」
「ガォァアアアアアアアアアアッ!!」
私の叫びと共に、眠れる竜(ステーキはミディアム希望)の瞳が開かれた!
「仕方ないわよー気を付けてね、プロテインいる?」
「いらん!」
ハッキリと断ったアールに男気を感じて、私たちは拍手で称えた。
マッチョ姉貴と化した二人は、クネクネと教えてくれた。
「近道だけど、気を付けてねん」
「竜をみかけても寝てると思うから、刺激しちゃダメよん」
「きたでしゅーっ! ドラゴンでしゅーっ!」
ピカッと私は閃いた、そう閃いちゃったのだ。
きたきたきたきたと興奮している私を、ヒョイと抱えた兄が号令を出す。
「では、世話になったな。ありがとう、失礼する」
うふん、あはんと投げキッスするマッチョから、ツツ……と視線を逸らす動きは流石は兄妹で一緒だった。兄も分かってる、視線合わせたらダメだって。
明るいのに、なぜか風が生暖かい荒地に私たちは足を踏み出した。
デブを先頭に、私たちは歩いていく。
うん、私は兄に、しゅーさんは抵抗したがアールに背負われている。
「竜がいるらしいからな、おとなしく保護されてろよ?」
「いえ、あの精霊様、僕は……」
「しっ! ここで精霊とか言うな!」
「申し訳ございません。ええっとアール様」
「……アールでいい」
おいこら、私のしゅーさんに何で偉そうなんだ。
しゅーさんは、旅の間もずっとアールに敬意を払っていた。
「馬鹿狼でしゅ!」
「お前はもう少し敬意を持とうな?」
「いや、だってアールだし。ね? アーリー」
「そうでしゅ、馬鹿狼でしゅ」
「……どうして我はこいつらを……以下略」
略しやがった。
後ろでなんだかんだと平和にやっていると、前を進むデブが停止した。
マッチョの家を出て、かれこれ一時間は歩いただろうか。
ただの荒地に、ポツポツと草木がやっと茂ってはきたが、見渡す限りは何もない。
たまに遠くで、恐竜大戦争みたいなギャースカが聞こえたが、なかった事にした。
私も成長したのだよ、ふふふ。
「ティラノザウルスがいいなぁ。トリケラトプスでもいいけど」
「しゅーさん、夢みすぎでしゅよ」
私たちは運ばれながら、そんなのどかな会話をしていたんだが……。
「ああ、ここやわ」
大人一人が入れそうな水たまりを見つけて、デブはそう言った。
何のことだがわからない私をおいて、大人たちが会話する。
「あいつらが言っていたやつか?」
「これは、人体に害はないのだろうな?」
「割と魔界では、よくある歪みでんがな。問題は、通過より出た先の事なんやが……」
私は前に抱えられ、しゅーさんは背負われながら話は進んでいく。
とりあえず、目的地は聖女のいる城。
以前の魔界の主から乗っ取った城に住みつき、引きこもっているらしい迷惑女だ。
そこに向かうのに、広大な魔界をチンタラ進むのではなく、近道を使用してショートカットでグイグイと行く作戦。
近道のはずだが、なぜかアールは水たまりを熱く見つめて……。
無言で私としゅーさんをトレードした。
肩に、よじよじ私はよじ登る。
私を抱え、アールは突然駆け出した!
「でしゅよぉぉぉーっ!」
「はい! ボッチャーン!」
「貴様の皮剥いでやるでしゅよーっ!!」
アールは勢いよく、チャポンと私を肩に担いだまま水たまりに飛び込んだ。
大きな水しぶきがあがり、ズブズブとそのままアールの長身は水の中に沈んでいく。
……という事は?
「ぴぎぃぃいーっ!」
「あーっはっはっは!」
何が楽しいんだよ!
景色が水色から、即座に緑に染まっていく。
「ふぇ?」
「はっ、早速お出ましかよ!」
鼻で笑ったアールは、私を後ろにポーンと投げて、間合いをとった目標に向けて構えをとった。
「でしゅよーっ!」
「はい、キャッチやで」
デブに軽く受け止められた私は、ボヨンと肉で軽く衝撃を受け止められた。
すぐさま次に現れた兄は、即座にしゅーさんをおろして、アールの横に並ぶ。
「まゆまゆ!」
「しっ、坊ちゃん。声は静かにや、やっこさんはまだ半分寝てるで」
二人が警戒するその先は、緑豊かな大きな沼地だ。
ボコボコとガスが吹き出て、紫色をした泥水がブクリブクリと泡を弾けさせていた。
湿度も上がっているのか、肌にまとわりつく空気すら気持ち悪い。
日もさえぎられそうなジャンクルの奥地に、あの水たまりから移動してきたみたいだ。
いや、問題はそこではない。
大きなトラック位の大きさの、なんか緑のテカテカした鱗の名物ファンタジーが、まさにそこに存在した。
「あれが噂の……ティラノザウルス?」
「恐竜が好きなのはわかってるでしゅけど、ここは魔界でしゅよ」
しゅーさんの、ちょっと嬉し気な男のロマンを潰して申し訳ないが、奴はゲームによってはラスボス級のやつだ。
「あれが竜《ドラゴン》でしゅね!」
「せや、ワイも初めて見た」
魔界だからゴロゴロいるのかと思ったが、珍しいらしい。
奴は長い首をゆったりと動かして、紫の水しぶきを飛ばした。
目は金色で半ば閉じられ、動きの鈍さから覚醒前みたいだ。
腰の剣に手をかけたままに、兄とアールが竜から目を離さない。
しゅーさんが、ソッと私の手を握った。
「僕のバリアで守るから、大丈夫だからね」
「……ボソボソ」
「ん?」
デブを盾に、後ろで控えていた私はブツブツと呟いた。
しゅーさんは、私の顔に耳を近づける。
「……でしゅ……クク……これこそが、でしゅ」
「ええっと、何?」
少し顔をひきつらせた元夫は、大変勘がいいらしい。
長い付き合いだもんね、フフフ。
「お二人さん、寝ている隙に通り過ぎるのが一番や。その竜は災いの竜いうて、相手したらあきまへん。今なら、静かに通り過ぎれますさかいに……」
カチャンと剣を鞘に戻す音が二つ聞こえた。
それと同時に、ブクブクと水音だけなる緑の奥地に、私の魂の叫びがこだました。
「ドラゴンステーキでしゅぅううううっ!」
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