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第9章 魔界と聖女
第118話 さよならマッチョ
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目覚めると、フカフカのベットに私は埋もれていた。
「んーっ」
背伸びして、ベットからもそもそと抜け出した。
リュックから、ガサゴソと着替えを出そうとして気づく。
すでに、椅子の上に畳まれた着替えが用意されている。
キョロキョロと周囲を見渡した。
モスグリーンとホワイトのストライプの壁紙の、ささやかな広さにベッドと椅子と小さな机だけ。
窓のカーテンを開くと、赤い月の代わりに、青と白の二つの太陽があがっている。
用意された服に着替え、来ていた服を畳んでいると、扉をノックされる。
「おはようございますチビ姫様、音が聞こえたので迎えに来ました」
「おはようさんでしゅよ。みんなそっちにいるでしゅか?」
「はい。早く朝ごはん下さい」
だと思ったよ馬鹿狼め。
畳んだ服をアールが引き受けてくれた。
「まとめて洗濯してくれるらしいぜ」
「でしゅ?」
指でアイツらが……と視線を向けると、ビキニパンツのマッチョがレースのエプロンつけて家事に勤しんでいた。
……これ、私のせいじゃないよね?
デブが居間の椅子に座って寛いでいた。
「おはようさん。体調はどうでっか?」
「すこぶる元気でしゅ」
フンスフンスとスクワットすると、マッチョが即座に両脇に並び、同じくスクワットをする。
「美と健康のためにっマッスル~ン」
「ただ筋肉があればいいんじゃないの! 私たちは気づいちゃったのよ~」
何かゴチャゴチャ言っているが、もうみんなスルーするのに慣れていた。
台所に行くと、兄がいた。
「にーたんおはよう、あれ? しゅ-さんは?」
「ああ、もう少し寝かせておやり」
そう言いつつ、器用にフライパンで目玉焼きを作っていた。
ポーンと手首を使って、目玉焼きがひっくり返る。
手慣れているなと見ていたら、照れながら野営で鍛えたと教えてくれた。
地味な仕事が本当に得意な兄だが、奴が次期国王な?
私は、兄の横に台座を用意してもらい、手元を楽しく覗き込んでいた。
「シュヴァルツ王子がね、念のためにアーリーが疲れているから、ちょっとだけ元気を分けてくれたらしいよ」
「っあ!」
「心配いらないから、少しだけ寝かせてくれと言ってたよ」
「しゅーさん! あれだけ辞めろって言ったでしゅよ!」
「聞いたけど、使いすぎは禁止なんだって?」
皿に綺麗に作った目玉焼きを並べていく。
アールの為に、私は軽くスキルで熟成してあげた。
兄は少し真面目な顔で私を見つめた。
「男が女の為に何かをしたいと意地を張った時は、ともかく少しだけ我慢して見守りなさい」
「でも、聞いたなら知ってるでしゅよね? 魂を傷つけるでしゅ!」
「ちゃんと加減はできるよ彼も。信じてあげなさい」
「しゅーさんは昔から無理をするでしゅ!」
何度止めても、彼は無理をして体を壊す。
罪悪感からか、体を酷使して普段の仕事だけでなく、いくつもの副業をこなして返済に充てていた。
「アーリー。たとえ倒れようとも、魂が傷つこうとも、彼の意思を邪魔してはいけない」
「やでしゅ!」
「信じてあげなさい、彼は馬鹿じゃない。ちゃんと学んでいるから」
「うっ……」
フルフルと震えるのはチッチではない。悔し涙を耐えているからだ。
兄は笑って、けれども今回は私の頭をサラリと撫でただけで背を向けた。
「お兄ちゃんは、あっちの食卓の準備をするから、落ち着いたらおいで」
あえて私を一人にしてくれたのだ。
ジッと耐え、静かに数を数える。
大丈夫、無理さえしなければ大丈夫。
私に必要なのは信じる心だ。
そしてふと思い出す。
「そういえば、七歳になったって言ってたでしゅね」
情けないことに、今のしゅーさんの誕生日すら知らない。
旅路で気を使って彼は言わなかったのだろう。
変な気の使い方が、しゅーさんらしい。
「よし、しゅーさんを祝ってあげようでしゅ」
なんとか気持ちを前向きに、私は準備が整った様子の食卓のあるダイニングに向かった。
というか、本当に庶民的な家なんだな。
人の家とあまり変わらない気がする。
平屋建てのようだが、なかなかの広さの間取りの家である。
それにしても、昨日はシンプル気味だったインテリアに、ところどころ花柄やピンク色が増えている気がする。
うむ、気のせいだと思考を放棄。
食卓には、しゅーさんを除く皆が集合していた。
マッチョも揃い、私も椅子に乗せてもらう。
なぜか当たり前に、トロピカルプロテインが並んでいる。
「ストロベリー味よ、うふっ」
刺激しないように、ツツ……と視線を横にそらす。
目を合わせたら危険だ。
まもなく、目をこすったしゅーさんも現れた。
何か言いたげな私を察して、彼は笑う。
「おはようまゆまゆ。今日も可愛いね」
「……モーニン! 素敵な朝よダーリン。ウェーィクアーップ!」
皆が微笑ましい気持ちで和やかな朝が始まった。
……って、待て待て。
焦りすぎて、大昔のテレビのCMがよみがえる。
「アーリー、ど、どうしたんだいっ!」
「また何か変な呪文かチビ姫様」
目玉焼きを咥えて、私は叫ぶ。
いや、兄よ……お代わり要求ではない。
しゅーさんのいつもの調子に、内心ホッと安心した。
――良かった、無理はしてないみたい ―
私は、そんな乙女心を誤魔化す。
「ここは魔界なのに、のんきに寛いでる場合じゃないでしゅよ」
私の嘆きに、無言で目玉焼きとトーストをお代わりしていたデブが反応した。
「お嬢ちゃんの言う通りや。はよワイの妹に会いに行かなあかんねんけど、さっき近道教えてもろたで」
「ふぇ?」
デブの両脇でマッチョが、ウフウフしている。
目をそらせ……視線は合わせるな……。
「よし食べたら、とっとと出発しよう」
アールの掛け声に、皆は大きく頷いた。
「んーっ」
背伸びして、ベットからもそもそと抜け出した。
リュックから、ガサゴソと着替えを出そうとして気づく。
すでに、椅子の上に畳まれた着替えが用意されている。
キョロキョロと周囲を見渡した。
モスグリーンとホワイトのストライプの壁紙の、ささやかな広さにベッドと椅子と小さな机だけ。
窓のカーテンを開くと、赤い月の代わりに、青と白の二つの太陽があがっている。
用意された服に着替え、来ていた服を畳んでいると、扉をノックされる。
「おはようございますチビ姫様、音が聞こえたので迎えに来ました」
「おはようさんでしゅよ。みんなそっちにいるでしゅか?」
「はい。早く朝ごはん下さい」
だと思ったよ馬鹿狼め。
畳んだ服をアールが引き受けてくれた。
「まとめて洗濯してくれるらしいぜ」
「でしゅ?」
指でアイツらが……と視線を向けると、ビキニパンツのマッチョがレースのエプロンつけて家事に勤しんでいた。
……これ、私のせいじゃないよね?
デブが居間の椅子に座って寛いでいた。
「おはようさん。体調はどうでっか?」
「すこぶる元気でしゅ」
フンスフンスとスクワットすると、マッチョが即座に両脇に並び、同じくスクワットをする。
「美と健康のためにっマッスル~ン」
「ただ筋肉があればいいんじゃないの! 私たちは気づいちゃったのよ~」
何かゴチャゴチャ言っているが、もうみんなスルーするのに慣れていた。
台所に行くと、兄がいた。
「にーたんおはよう、あれ? しゅ-さんは?」
「ああ、もう少し寝かせておやり」
そう言いつつ、器用にフライパンで目玉焼きを作っていた。
ポーンと手首を使って、目玉焼きがひっくり返る。
手慣れているなと見ていたら、照れながら野営で鍛えたと教えてくれた。
地味な仕事が本当に得意な兄だが、奴が次期国王な?
私は、兄の横に台座を用意してもらい、手元を楽しく覗き込んでいた。
「シュヴァルツ王子がね、念のためにアーリーが疲れているから、ちょっとだけ元気を分けてくれたらしいよ」
「っあ!」
「心配いらないから、少しだけ寝かせてくれと言ってたよ」
「しゅーさん! あれだけ辞めろって言ったでしゅよ!」
「聞いたけど、使いすぎは禁止なんだって?」
皿に綺麗に作った目玉焼きを並べていく。
アールの為に、私は軽くスキルで熟成してあげた。
兄は少し真面目な顔で私を見つめた。
「男が女の為に何かをしたいと意地を張った時は、ともかく少しだけ我慢して見守りなさい」
「でも、聞いたなら知ってるでしゅよね? 魂を傷つけるでしゅ!」
「ちゃんと加減はできるよ彼も。信じてあげなさい」
「しゅーさんは昔から無理をするでしゅ!」
何度止めても、彼は無理をして体を壊す。
罪悪感からか、体を酷使して普段の仕事だけでなく、いくつもの副業をこなして返済に充てていた。
「アーリー。たとえ倒れようとも、魂が傷つこうとも、彼の意思を邪魔してはいけない」
「やでしゅ!」
「信じてあげなさい、彼は馬鹿じゃない。ちゃんと学んでいるから」
「うっ……」
フルフルと震えるのはチッチではない。悔し涙を耐えているからだ。
兄は笑って、けれども今回は私の頭をサラリと撫でただけで背を向けた。
「お兄ちゃんは、あっちの食卓の準備をするから、落ち着いたらおいで」
あえて私を一人にしてくれたのだ。
ジッと耐え、静かに数を数える。
大丈夫、無理さえしなければ大丈夫。
私に必要なのは信じる心だ。
そしてふと思い出す。
「そういえば、七歳になったって言ってたでしゅね」
情けないことに、今のしゅーさんの誕生日すら知らない。
旅路で気を使って彼は言わなかったのだろう。
変な気の使い方が、しゅーさんらしい。
「よし、しゅーさんを祝ってあげようでしゅ」
なんとか気持ちを前向きに、私は準備が整った様子の食卓のあるダイニングに向かった。
というか、本当に庶民的な家なんだな。
人の家とあまり変わらない気がする。
平屋建てのようだが、なかなかの広さの間取りの家である。
それにしても、昨日はシンプル気味だったインテリアに、ところどころ花柄やピンク色が増えている気がする。
うむ、気のせいだと思考を放棄。
食卓には、しゅーさんを除く皆が集合していた。
マッチョも揃い、私も椅子に乗せてもらう。
なぜか当たり前に、トロピカルプロテインが並んでいる。
「ストロベリー味よ、うふっ」
刺激しないように、ツツ……と視線を横にそらす。
目を合わせたら危険だ。
まもなく、目をこすったしゅーさんも現れた。
何か言いたげな私を察して、彼は笑う。
「おはようまゆまゆ。今日も可愛いね」
「……モーニン! 素敵な朝よダーリン。ウェーィクアーップ!」
皆が微笑ましい気持ちで和やかな朝が始まった。
……って、待て待て。
焦りすぎて、大昔のテレビのCMがよみがえる。
「アーリー、ど、どうしたんだいっ!」
「また何か変な呪文かチビ姫様」
目玉焼きを咥えて、私は叫ぶ。
いや、兄よ……お代わり要求ではない。
しゅーさんのいつもの調子に、内心ホッと安心した。
――良かった、無理はしてないみたい ―
私は、そんな乙女心を誤魔化す。
「ここは魔界なのに、のんきに寛いでる場合じゃないでしゅよ」
私の嘆きに、無言で目玉焼きとトーストをお代わりしていたデブが反応した。
「お嬢ちゃんの言う通りや。はよワイの妹に会いに行かなあかんねんけど、さっき近道教えてもろたで」
「ふぇ?」
デブの両脇でマッチョが、ウフウフしている。
目をそらせ……視線は合わせるな……。
「よし食べたら、とっとと出発しよう」
アールの掛け声に、皆は大きく頷いた。
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