転生幼女は発酵スキルで、異世界に和食革命を起こす!味噌、醤油、酢を作って餌付けしたら、いつの間にか世界に名が轟いていた件

西野和歌

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第10章 金色の光へ

第125話 影のある女

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「神はどれだけ、アタチに試練を与えるのでしゅか」
「まゆまゆ、チッチ大丈夫?」
「耐えたでしゅ」
「あ、パンツ大丈夫です」

 密かにカボチャパンツを出そうとしていた兄が、慌てて中にしまい戻していた。
 悲しいフライングだった。

 足が止まった私に、アールが問いかける。

「どうする? 戻るか?」
「行くでしゅよ! この城を見て、もっと言いたい事が増えたでしゅ!」

 私はチラリと壁の絵や、無理やり改造された美術品をみて、メラメラと怒りを燃やす。
 金目の物の価値下げるなよ……小娘が。
 ダムダムと足踏みをして気合を入れた。

「に……肉団子がナンボのもんじゃいでしゅ!」
「アカリ……あいつ……どこまで変わり果ててもうたんや」

 気合を入れる私の横で、デブの目から涙。
 うん、泣いてる場合じゃないんだわ。

「いいから、とっとと会わせろでしゅよ」
「あ、会ってどうするんや」
「聖女が魔界にいるのがダメなんでしゅよ」

 魔素ってのも悪い影響与えてるんだろ?
 どっちにせよ、魔王化反対! もうムダ働きはしたくない!

「女神やアール達への力を盗まない、ついでに魔王化反対でしゅ!」
「その心意気や良し!」

 なぜお前が偉そうなんだアール。

「精霊様は偉いんだよ、まゆまゆ」
「あっかんベぇーでしゅ」
「ほぅ」

 眉をピクピクさせたアールがニッコリと笑った。

「そーかそーか、ほら後ろ」
「でしゅ?」

 反射的に振り返った私は絶叫した。

「ぴぎょぇぇぇ――っ!」
「うわぁっ!」

 しゅーさんが私の手を握り、全力でバリアを張った。
 うごめく青紫の肉の塊が、モゾモゾと廊下を埋めていく。

「こ、これは流石に」
「とりあえず、こっちの存在に気づいてやがる」
「アール、どうする」
「決まってるだろ王子、切り裂くまでだ!」
「ダメや! やめるんやアカリ! ワイやで! 今美味しいん作ったるさかい待つんや!」

 肉の塊は見えぬ場所にゆっくりと消えていった。
 なんてホラーだよ、ああ気持ち悪い。

 と安堵している場合ではなかった。

「おぃ、お前の妹は影のある女だな」
「へっ?」

 ユラユラと、ティアラをつけドレスをきた女らしき影が、何体も廊下から生えてきた。
 やっぱりホラーじゃん!
 私は驚かされると、ビックリして怖いというより、腹が立つタイプなんだよ。

 しかも、あきらかにこちらに向かう姿は、友好的ではない。

「後ろに下がっていなさい。シュヴァルツ王子、妹を頼んだよ」
「はい、お気をつけて」

 兄とアールが影と向かい合う。
 影は両手を突き出して、フラフラと近づいてくる。
 ないはずの口がパカリと開き、ケタケタと笑った。

「ぴぃっ!」
「チッチは後でねアーリー。今はちょっと動けないから」
「アカリ、いい加減にするんや!」

 ゼンの言葉に、遠くから響くような女の声が聞こえた。

「だって、暇なんだもん兄ちゃん」
「お客さんや、なんでこんな事するんや」

 その返事は、ケラケラと軽快な笑い声で返された。

「あはっ、あははっ、暇だったの、お腹すいたの。男前が二人、いっぱい苦しんで、痛めつけられてね。大好物なの、あはははっ」

 どこかで聞いたセリフだなと、私はちょっと気配を消した。
 あんなのと一緒にすんな。
 影の垂れ下がった手先から、鋭い影の刃が音を立て伸びる。
 その鋭い先が、アールや兄に風のごとく向かっていった。

「チッ!」

 ガチンと剣で爪先を払い、勢いをつけて切りかかる。

「切れるか? ウォォォオーッ!」

 狼の一声に合わせ、兄も横に並び大きく剣を振りかぶった。
 半円をかき空を切った剣は、重い空気を切り裂くザシュ! という音と共に、黒い影の上半身と下半身が切り離された。
 その途端に、剣で裂かれた上半身はケタケタと笑い、粉々に霧散していく。

「つ、強い。流石は精霊様だ」
「すんまへん、ほんま、すんまへん」
「いけーでしゅ! やれーでしゅ! あと二体でしゅ!」
「お前らは呑気でいいな!」
「おっと!」

 兄が突き出された爪先を、すんでで身をひるがえして避けたと同時に、反動で突き出した剣が影を貫いた。

『ケラケラケラケラ、もっと、もっと苦しんでぇぇぇえ』
「いいから消えろ!」

 たぶん苦しむの意味が、違う気がする……BL的にと思いつつ、兄の珍しい活躍に手を叩いた。

「にーたん、戦えたんでしゅね」

 パチパチと無邪気に拍手した私に、兄は嬉しそうに笑う。

「お兄ちゃんを見直したかい? アーリー」
「でしゅでしゅ!」
「よーし、もっとかかってこい!」
『おっけぇ~』
「馬鹿王子! おかわりすんな!」

 兄の希望通りに、また5体程の影の追加がヌッと現われた。
 意外と聖女はノリがいいらしい。笑った。

「笑ってる余裕があっていい気なもんだ!」
「アーリーの笑顔は太陽みたいだ! とっとと闇を振り払うぞ!」
『やだ! 王子みたいっ! 君の全てを守るために戦うよって言ってみて』

 どこからか聞こえる聖女リクエストも呑気なものだが、律儀な兄はきちんと答えた。

「君の全てを守るために……戦う? よ?」
『いや~ん、いいわぁ! いい素材だわ! アルファ? まさかのオメガ?』

 カンカンと影と剣で戦う兄達に不似合いな、浮かれた声がキャッキャしている。
 私がゼンを睨みつけると、うつむいてデブは小さくなった。
 また女神と毛色の違う、おバカさんだな聖女。

「おいっ、影のやつが奇妙な変化してるんだが!」

 男前枠なのに、完全スルーされているアールが絶叫した。
 みると影の手先が変化して、各自の武器が異様な変形で兄を狙っていた。

「おい、アール助勢しろ!」
「へいへい、王子めっちゃ狙われてるなぁ」

 なぜか手首から先が、縄のようにクネクネとした触手になったり、鞭だったりロウソクだったり、あと大きなハサミもあるなぁ。

「ハサミは、なんでなんだろ?」

 しゅーさんの疑問に答えてあげた。

「たぶん、服を切り裂くためでしゅよ」
「なんのために?」
「聞かない方がいいでしゅよ」

 変なBL方向性の戦いですら、兄たちは戦闘力でもって全て制圧した。
 なかなかの見物のショーでした。
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