転生幼女は発酵スキルで、異世界に和食革命を起こす!味噌、醤油、酢を作って餌付けしたら、いつの間にか世界に名が轟いていた件

西野和歌

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第10章 金色の光へ

第126話 聖女登場

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「ぜぇぜぇ……なんでか精神的疲労があるんだが」
「アール、私もなぜか身の危険を激しく感じた」

 ちょっぴり痛めつけられて苦しんだ二人の汗は、とってもキラキラと輝いていました。
 でも、アールと兄だしなぁ……ふぅ。

「ランドルフとサウザーのカップリングが良かったでしゅよ」
「あら、違うわよ。ランドルフときたら王道で鉄板は主人公でしょ?」
「わかってないでしゅ、ランドルフの優しさと、冷たい悪のツンツンサウザーが……」
「鉄板の主人公とランドルフからの、どれだけ妄想愛を広げられるかじゃない」
「でしゅからねぇ」
「……まゆまゆ、早速で悪いんだけど、聖女と何の話をしてるの?」

 しゅーさんの言葉でハッと我に返った。
 目の前にいたのは、目の下にクマを作りながらも、ギョロッとした目玉が嫌な光を放つ中年女だった。
 しかも、ボロボロのティアラを頭にのせて、その黒髪は長く痛みが目立つ。
 ドレスは桃色と白の二色の生地に、金色のほつれた刺繍が施され、下半身はどこか奥深くに紫の色の肉塊が、ドクドクと根っこのように脈打っていた。
 宝塚より濃い化粧をコテコテに塗った女が、ニタリと笑う。
 その口元は、間違いなく先ほどの影と同じ形をかたどっていた。

「おいっ! カボチャパンツの用意だ!」
「まゆまゆ、大丈夫? 漏れそう?」
「おいゼンとやら! トイレはどこだ!」
「お嬢ちゃん、トイレはあっちや!」

 自らの兄の言葉に反応した聖女は、目線はこちらに向けたまま、指先だけはトイレとやらの方向を示してくれた。
 いや……だからさ?

「チッチは大丈夫でしゅ。肉の本体が目の前にいる事が、不愉快で仕方ないだけでしゅ」

 羊やお化けに比べたら、肉もドレスに隠れて気持ち悪い程度の、ケバケバ女だ。
 私はフンスと、いつのまにか私たちの前に現われ聖女を睨みつけた。

 アールと兄が私たちを守るように前に立つが、少し横にズレて貰う。
 きっちりと睨みつけないとダメだ。
 あっちはずっと、こちらから視線を外さない。
 まるでヘビがネズミを見つめるような、嫌な感覚。
 目を逸らしたら負ける。

「アカリ、お前ワイのお客さんに何してるんや!」
「帰ってきたの? 兄ちゃんも逃げたのかと思ったわ、あははははっ!」
「ちゃうねん、あのな……ワイも色々あって人の世界に行ってしもうてん」

 人の世界という言葉に、聖女はビクンと体を震わせた。
 みるみる顔色が暗くなり、目に怒りが広がっていく。

「ちゃんと美味い物持って帰ってきたからな? 美味しい物食べて、ちょ
 っと気分かえようや」
「……台所は、さっきの攻撃で破壊されたわねぇ」
「ふぇ!」

 私たちは目をそらした。
 だってドラちゃんがいきなり……私ワルクナイデスヨー。

「この客とやらは、私の遊び相手でしょ? 兄ちゃんは私の欲しい物わかってるわね」

 ウフウフと、首をカクカクさせて笑う姿が、壊れたマリオネットみたいにキモイ。
 つまり、心が壊れているというのは間違いないらしい。

「壊れてるなら、叩けばなおるでしゅかね」
「まゆまゆ、壊れたテレビも今は叩かない」
「とりあえず、何か美味い物食うんだろ? 腹減ったーっ!!」
「こらアール、流石にアーリーでも台所が壊れてるなら無理だ」

 確かに腹が減ったなと思い出す。
 みると、聖女がこっちこっちと手招きしていた。

「あっちに何があるでしゅか?」
「あっちは妹の部屋や」
「なら燃やしても最悪大丈夫でしゅね?」
「なんやて?」

 聖女がズルズルと後退して入っていった部屋に、ゼンとアール、兄が私たちを守るように共に入った部屋は、それはもう悪趣味を極めたゴスロリピンクのさびれた部屋だ。
 壁には、ヘタな手書きのキャラが書かれていて、なんとなく何かのキャラなんだろうとは推測できる程度。
 カーテンはボロボロで、バルコニーからパタパタと風が吹き込みはためいている。
 壁紙も剥がれ、廃墟寸前なのに家具はピカピカの金と銀で作られ目が痛い。
 シャンデリアは灯もともさず、ただ薄暗く広い部屋が聖女の部屋だった。

「こんな所にずっといたら、そりゃ心も病むでしゅよ」

 皆が揃えてウンウンと頷く中で、聖女はウフウフと肩をガクガクさせて笑っている。
 デブの袖をつかんで、そのまま真っすぐにバルコニーに出た。

 空は曇天なのに、黒い雲が煙のようにトグロを巻き広がっていった。
 それにともない世界は闇に染まっていく。

「うへぁ……やな感じでしゅ」
「アカリの……妹の状況が影響してるんやな。少しでもまた機嫌なおして貰わんと」
「アタチもお腹すいたでしゅ。ともかく道具と材料よこせでしゅ」
「勿論や、好きに使ってや!」

 胸ではなく、腹をはってボンボンと腹太鼓したデブの足を踏みつけた。

「いでっ!」
「手の込んだものなんか作らないでしゅ。シンプル・イズ・ベストでいくでしゅ」

 なんかお腹が、そういう物を求めているんだよね。
 なので、あの聖女を見た途端に食べたいものは決まっていたんだ。

「今からいう道具と材料をよこせでしゅ!」
「は、はいなっ!」

 ともかくご飯食べてから、後の事を考えよう。
 こうして、魔王城のバルコニーでのご飯作りが始まった。
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