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第10章 金色の光へ
第127話 最後の料理
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広いバルコニーは、石造りなので火の元安心・燃えても魔王城だしイイヨネ?
デブに用意させた鍋二つ。シンプルにそれだけ。
アールに壊れかけの外壁から、レンガを4つ持ってきて貰う。
2個を平行に並べて、その上に鍋を置く。
これをもうワンセット。
「でも火元はどうするの?」
しゅーさんの疑問に、私はシレッと答えた。
「そこらへんに書いてある、ヘタ気持ち悪い絵を燃やせばいいでしゅ」
「わわわっ、あかんあかん! ちょっとまっててーな!」
デブが必死で、どこかに走っていく。
ちなみに聖女は部屋から出てこない。一人壁に向かってクスクス笑っていたので無視した。
(あれが聖女? 聖女の成れの果て? なんとまあ哀れなものだな)
ふと思った私は、チラリとしゅーさんを見た。
「どうしたの?」
優しくほほ笑んでくれた夫に、私もほほ笑み返す。
「もしこの世界で、アタチが辛くて悲しくて、部屋に引きこもって700年もいたら、ああなっちゃうんでしゅかね?」
「引きこもらないよね?」
ですよね? むしろ、ぶちのめしにいくよな。
しおらしい気持ちは消えたのだが、それでも私は感謝を述べた。
「そばにいてくれて、ありがとうでしゅ」
「こちらこそ」
はにかみながら、しゅーさんはヨシヨシと私の頭を撫でてくれた。
いつも、こういうのはくすぐったくて、なのにとっても胸が温かくなるんだ。
息子たちがいて、そして夫がいた。
それだけで私は幸せだった事を思い出す。
デブがどこからか、古いカーテンと木材をかき集めてきた。
なぜか、面倒見の良い兄も手伝っていたらしい。
同じく胸に抱えた古い本を、ドサドサと持ってきた。
「これで燃料はいけるかな?」
「でしゅ!」
「火種はなんとかなるかい?」
「でしゅ!」
私と兄が会話を交わしていると、アールがヒョイと古本を見て、悲鳴をあげた。
「なんじゃごらぁあああ!」
どこの名台詞だようっせぇ! そう思いつつ投げた本をヒョイと拾った。
「だ、だめだ! 子供が見てはだめなやつだ!」
「アーリー! 危険だからこっちに渡しなさい」
言われる前に、ペラペラとめくる。
真横から覗き込んでいたしゅーさんが、中を確認した瞬間に手刀を入れた。
「でしゅーっ!」
バサリと本が落ちた。
素早い動きで、しゅーさんは本をレンガの下に積み上げた。
そして……。
「禍々しき物よ、燃え去れ!」
ボッと火が付き本は燃えた。
「貴重な精霊の力だったんじゅねーのか?」
アールが鼻をこすりながら茶化したが、キッパリとしゅーさんは言い切った。
「これは、まゆまゆにとって悪魔の書です」
「別に、軽く足を突っ込んで即座に引っこ抜いたでしゅよ?」
「ダメ」
聖女が書いたBL小説(ヘタイラストつき)は、しゅーさんのトラウマを呼び起こしてしまったらしい。
いやいや、まあチョットダケ……ね? ほら、色々聞きたくなるじゃん。
しゅーさん男子校出身だし、しかも汗ムンムンの野球部推薦で、男同士の絆というか好奇心でボーイズラブについて聞きまくったら、初めて怒られた。
「夫婦喧嘩は、あれだけだったでしゅねぇ」
「僕は忘れない、絶対に忘れない」
ダメだ。仏のしゅーさんが闇堕ちしそうだ。
アールも兄もヤバイと思ったのか、過去最高に焦っている。
「ほら、こんなものはこうだ!」
「よく燃えるよ! うん燃やそう燃やそう!」
本なんかなかったよーと、アピールするように火にくべていく。
……ちゃんと読めなかったけど、まあ聖女作だしいいか……。
ふと視線を感じると部屋に通じるテラス窓から、うす笑いを浮かべた聖女が自らの同人誌(BL)を胸に抱きしめて、ジッとこちらを見ていた。
コワイコワイ……ツツ、と視線を横にすると、デブが指示通りに、今度は素材を出していた。
まず、一つの鍋には米をぶち込んだ。
こっち来る前に、メリーからいい米貰ってたの狙ってたんだよね。
米どころのいい米だから、きっとおいしいはず……ワクワク。
スキルで水を入れて、火にかける。
今度は、デブの出した素材を吟味する。
ふむ……見えた!
「この豆腐をアタチの小指程度の厚みでスライスして欲しいでしゅ、にーたん」
「うんうん、もっと頼りなさい」
いや便利だから使ってるだけな?
いまや、私の開発で有名となった豆腐も、デブはきちんと確保していた。
しかも、銀のタッパー型に大量にだ。
やつのスキルの無限リュックの中は、時間停止しているらしく、新鮮なままで助かった。
「油あるでしゅか?」
「南の島でとったヤシの油があるで」
無言で私は親指を立てた。ナイス! デブ!
チーズのように薄くスライスされた豆腐をまな板に並べ、上にガーゼのハンカチを被せる。
その上に更に板を乗せて、しゅーさんに全身で力をこめて上から押してもらった。
子供の体重を精一杯かけた途端に、板と板に挟まれたスライス豆腐は、水分を出しながら水平に押しつぶされた。
「もうちょっと押しておく?」
「大丈夫でしゅ、あとあっちで鍋に少しだけ油を入れて揚げるでしゅ」
私は豆腐にスキルをかける。
「発酵豆腐よ、お水キレッキレになって、おいちくなーれっ!」
光はピカッと一瞬だけ。
それだけで十分で、いい塩梅で水分が抜けたスライス豆腐を、油で揚げた。
ジュワジュワと音をたて、香ばしい匂いをたてて黄金色になっていく。
「へー揚げさんは作れるんやな。アカリ、楽しみやな」
デブの声に、窓からこっそり顔半分だけ覗かせた聖女が、ウンウンと頷いていた。
兄に残りの豆腐を賽の目に切ってもらい、揚がった『あげ』は、しゅーさんが、古本の焼け残った表紙を使って、パタパタと余熱を冷やしてくれていた。
アールはごはんの火の当番、ただ見てるだけの仕事だった。
デブに用意させた鍋二つ。シンプルにそれだけ。
アールに壊れかけの外壁から、レンガを4つ持ってきて貰う。
2個を平行に並べて、その上に鍋を置く。
これをもうワンセット。
「でも火元はどうするの?」
しゅーさんの疑問に、私はシレッと答えた。
「そこらへんに書いてある、ヘタ気持ち悪い絵を燃やせばいいでしゅ」
「わわわっ、あかんあかん! ちょっとまっててーな!」
デブが必死で、どこかに走っていく。
ちなみに聖女は部屋から出てこない。一人壁に向かってクスクス笑っていたので無視した。
(あれが聖女? 聖女の成れの果て? なんとまあ哀れなものだな)
ふと思った私は、チラリとしゅーさんを見た。
「どうしたの?」
優しくほほ笑んでくれた夫に、私もほほ笑み返す。
「もしこの世界で、アタチが辛くて悲しくて、部屋に引きこもって700年もいたら、ああなっちゃうんでしゅかね?」
「引きこもらないよね?」
ですよね? むしろ、ぶちのめしにいくよな。
しおらしい気持ちは消えたのだが、それでも私は感謝を述べた。
「そばにいてくれて、ありがとうでしゅ」
「こちらこそ」
はにかみながら、しゅーさんはヨシヨシと私の頭を撫でてくれた。
いつも、こういうのはくすぐったくて、なのにとっても胸が温かくなるんだ。
息子たちがいて、そして夫がいた。
それだけで私は幸せだった事を思い出す。
デブがどこからか、古いカーテンと木材をかき集めてきた。
なぜか、面倒見の良い兄も手伝っていたらしい。
同じく胸に抱えた古い本を、ドサドサと持ってきた。
「これで燃料はいけるかな?」
「でしゅ!」
「火種はなんとかなるかい?」
「でしゅ!」
私と兄が会話を交わしていると、アールがヒョイと古本を見て、悲鳴をあげた。
「なんじゃごらぁあああ!」
どこの名台詞だようっせぇ! そう思いつつ投げた本をヒョイと拾った。
「だ、だめだ! 子供が見てはだめなやつだ!」
「アーリー! 危険だからこっちに渡しなさい」
言われる前に、ペラペラとめくる。
真横から覗き込んでいたしゅーさんが、中を確認した瞬間に手刀を入れた。
「でしゅーっ!」
バサリと本が落ちた。
素早い動きで、しゅーさんは本をレンガの下に積み上げた。
そして……。
「禍々しき物よ、燃え去れ!」
ボッと火が付き本は燃えた。
「貴重な精霊の力だったんじゅねーのか?」
アールが鼻をこすりながら茶化したが、キッパリとしゅーさんは言い切った。
「これは、まゆまゆにとって悪魔の書です」
「別に、軽く足を突っ込んで即座に引っこ抜いたでしゅよ?」
「ダメ」
聖女が書いたBL小説(ヘタイラストつき)は、しゅーさんのトラウマを呼び起こしてしまったらしい。
いやいや、まあチョットダケ……ね? ほら、色々聞きたくなるじゃん。
しゅーさん男子校出身だし、しかも汗ムンムンの野球部推薦で、男同士の絆というか好奇心でボーイズラブについて聞きまくったら、初めて怒られた。
「夫婦喧嘩は、あれだけだったでしゅねぇ」
「僕は忘れない、絶対に忘れない」
ダメだ。仏のしゅーさんが闇堕ちしそうだ。
アールも兄もヤバイと思ったのか、過去最高に焦っている。
「ほら、こんなものはこうだ!」
「よく燃えるよ! うん燃やそう燃やそう!」
本なんかなかったよーと、アピールするように火にくべていく。
……ちゃんと読めなかったけど、まあ聖女作だしいいか……。
ふと視線を感じると部屋に通じるテラス窓から、うす笑いを浮かべた聖女が自らの同人誌(BL)を胸に抱きしめて、ジッとこちらを見ていた。
コワイコワイ……ツツ、と視線を横にすると、デブが指示通りに、今度は素材を出していた。
まず、一つの鍋には米をぶち込んだ。
こっち来る前に、メリーからいい米貰ってたの狙ってたんだよね。
米どころのいい米だから、きっとおいしいはず……ワクワク。
スキルで水を入れて、火にかける。
今度は、デブの出した素材を吟味する。
ふむ……見えた!
「この豆腐をアタチの小指程度の厚みでスライスして欲しいでしゅ、にーたん」
「うんうん、もっと頼りなさい」
いや便利だから使ってるだけな?
いまや、私の開発で有名となった豆腐も、デブはきちんと確保していた。
しかも、銀のタッパー型に大量にだ。
やつのスキルの無限リュックの中は、時間停止しているらしく、新鮮なままで助かった。
「油あるでしゅか?」
「南の島でとったヤシの油があるで」
無言で私は親指を立てた。ナイス! デブ!
チーズのように薄くスライスされた豆腐をまな板に並べ、上にガーゼのハンカチを被せる。
その上に更に板を乗せて、しゅーさんに全身で力をこめて上から押してもらった。
子供の体重を精一杯かけた途端に、板と板に挟まれたスライス豆腐は、水分を出しながら水平に押しつぶされた。
「もうちょっと押しておく?」
「大丈夫でしゅ、あとあっちで鍋に少しだけ油を入れて揚げるでしゅ」
私は豆腐にスキルをかける。
「発酵豆腐よ、お水キレッキレになって、おいちくなーれっ!」
光はピカッと一瞬だけ。
それだけで十分で、いい塩梅で水分が抜けたスライス豆腐を、油で揚げた。
ジュワジュワと音をたて、香ばしい匂いをたてて黄金色になっていく。
「へー揚げさんは作れるんやな。アカリ、楽しみやな」
デブの声に、窓からこっそり顔半分だけ覗かせた聖女が、ウンウンと頷いていた。
兄に残りの豆腐を賽の目に切ってもらい、揚がった『あげ』は、しゅーさんが、古本の焼け残った表紙を使って、パタパタと余熱を冷やしてくれていた。
アールはごはんの火の当番、ただ見てるだけの仕事だった。
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