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第10章 金色の光へ
第128話 元祖おふくろの味でしゅ
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「ところで、油はどこに捨てたらいいでしゅか?」
油ものの嫌いな所は、後処理なんだよね。
聖女とデブが同時に、バルコニーの外を指さした。
つまり、下に向けて捨てろと?
「どりやぁぁぁぁあ!」
なぜかアールがハッスルして、バッシャーンと下に向けて油を捨てた。
『ギィヤァァアアアアア!』
何か下で被害が出た模様だが、見知らぬ魔物さんゴメンナサイ。
悪いのは、狼とデブと聖女です。ワタシジャナイヨー。
ゲラゲラ笑うアールを無視して、兄に油鍋をきれいに洗って拭かせたあと、その鍋に水を入れて、豆腐と短冊切りした『あげ』を放り込んだ。
「あとは……でしゅ」
乾いた小魚は、ティナが湖でとれた小魚を乾かした、おやつみたいなものだ。
ちょっと香ばしい塩がかかっている。
そのままでも美味しそうだが、これは別の素材として使う。
小さな麻袋に小魚を入れて袋の口を縛る。
さて、再び私のスキルの発動だ。
「粉々に砕けて、いいお出汁でしゅ。おいちくなぁーれ!」
ピカッと光ると、聖女が小さくパチパチと手を叩くのにイラッとした。
無視だ無視。
そのまま豆腐とあげを入れた鍋に、袋のまま放り込む。
細かくなった小魚が、良いお出汁になるはずだ。
古本だけでは火が保てるはずもなく、他にも持ってきた木材を足でガンガンと、兄やアールが粉砕して火にくべていった。
なぜか、聖女がアール達が汗をかくたびに拍手してる。暇なんだな。
グツグツと具材も煮えている鍋とは別に、米を炊いている方も泡をふいていい具合になってきた。
タイミングをみて、蒸らすために火から降ろして古いカーテンをいくつも巻いて包みこむ。
残るはグツグツ具材鍋。
「ワイは白みそがいいねんけど」
「僕は赤味噌が好きかも」
「残念でしゅが、アタチは合わせみそ主義でしゅ」
いつも特売の売り出し味噌が、同じメーカーじゃねーんだよ、男どもめ。
混ぜたら、そこそこいい味になるのは、カレーと味噌のいい所。
「という事で、合わせ味噌でしゅよー! おいちくなぁれーっ!」
私は味噌を混ぜ混ぜ、スキルを発動した!
できあがったご飯は、皆で手を洗ってからにぎにぎした。
「俺の塩でしゅよ~元手がタダで最高でしゅよ~」
「あの坊主のは力がこもっていて、まあまあだ」
「三角ってこれでいいのかい? アーリー」
「俵もいいよね、やっぱり塩だけ男より、僕が一番まゆまゆにふさわしいよね」
……何気に夫が最後の最後に闇堕ちしかけている気が……よし、気のせいだ。
塩むすびが出来上がる寸前に、いつのまにか気配なく聖女も私たちの輪に加わっていた。
「……握りたいんでしゅか?」
コクコクと嬉し気に頷く聖女に、手を洗わせて白米と塩を差し出した。
「握った事あるでしゅか?」
「昔、お母ちゃんと」
「そうでしゅか。まず塩をひとつまみ、手のひらに乗せるでしゅ」
実際に見せながら、幼子に教えるように習わせる。
言われたままに、聖女は塩をのせて手でむすぶ。
「力はいれないように、手のひらで丸いボールを持っている感じで、そうでしゅ」
「三角じゃない……」
「きれいなまん丸でしゅよ」
「……ふふっ」
聞こえない声で、嬉しいと言われ、驚いて聖女の顔を見た。
中年女の化粧の崩れた顔の癖に、目だけ細めて嬉し気に夢中になっている。
「うっ、ううっ、良かったなアカリ。入院前はいつもワイとアカリで、こうやって握ったもんや」
デブがむせび泣くが、涙がかかったおにぎりはお前が食えよ?
アールの大きな丸おにぎり一つ、兄の綺麗な三角おむすび、しゅーさんの俵むすびと、デブ&聖女の丸おむすびと、各自が自分の食べる分を握り終え用意された皿に並べる。
「椅子とテーブル、ふふっ」
聖女がゴブゴブと嫌な音を立てて、肉の尻尾を城中に張り巡らし探し出したテーブルと椅子のセットを、器用にドンドンと広いバルコニーに用意した。
「さあ、手と手を合わせて頂きましゅでしゅよーっ!」
塩おにぎりと味噌汁、これこそが究極にして原点である、おふくろの味!
シンプルだからこそ、素材と調理の繊細さが際立つ万能和食!
貧しき者も、富める者も、全ての人が回帰する、心のふるさと!
つまり、私が一番食べたかっただけです!
「美味しいね、まゆまゆ!」
「このスープがいいな、アーリー」
「うまっ、はふっ、んがぐぐっ」
最後の喉に詰まらせたアールに、背後から首元チョップを入れてあげた兄は優しい人だ。
デブ兄妹は、無言で必死でガッついていた。
「焦らなくても、おかわりあるでしゅよ」
「す、すんまへん……懐かしすぎて、うぐっ」
「泣くか食べるか、どっちかにして欲しいでしゅよ」
兄のうるささに対して、妹は無言でおにぎりと味噌汁を必死で食べている。
しゅーさんが私の為にと握ってくれた俵おむすびは小型で、今の私には食べやすかった。
塩がほどよく効いて、米の甘味もきちんと感じられる。
味噌汁をズズッとすすってみると、マイルドな味噌具合にアゲの香ばしさと豆腐が良いアクセントになって、米とよく合った。
心と体に染み入るような、最高の食事だ。
地球を知らない兄や精霊アールですら、もう自然と和食に馴染んでしまっている。
それもこれも、私が世界を旅して見つけた素材や調理が、新たな世界に革命を起こしたからだ。そう思えば感無量である。
このまま綺麗にフィナーレを迎えたいのだが……チラリと、問題の聖女を見つめた。
先ほどより顔色がマシになったような気がする。
「おいしい、なつかしい、また食べられるなんて」
小さくつぶやく聖女が、ホロリと涙を流す。
「どうして、どうして、なんでなんで」
「でしゅ?」
「体が動くようになったのに、やっと夢だった世界に来れたのに……」
「米粒が口元についてるでしゅ」
口元を長い舌でベロリと舐めとった聖女は、誰にともなく独り言をつぶやく。
「幸せになるはずなのに、なんでなんで」
「浮気でもされたんでしゅか?」
井戸端気分で聞いてみた。
油ものの嫌いな所は、後処理なんだよね。
聖女とデブが同時に、バルコニーの外を指さした。
つまり、下に向けて捨てろと?
「どりやぁぁぁぁあ!」
なぜかアールがハッスルして、バッシャーンと下に向けて油を捨てた。
『ギィヤァァアアアアア!』
何か下で被害が出た模様だが、見知らぬ魔物さんゴメンナサイ。
悪いのは、狼とデブと聖女です。ワタシジャナイヨー。
ゲラゲラ笑うアールを無視して、兄に油鍋をきれいに洗って拭かせたあと、その鍋に水を入れて、豆腐と短冊切りした『あげ』を放り込んだ。
「あとは……でしゅ」
乾いた小魚は、ティナが湖でとれた小魚を乾かした、おやつみたいなものだ。
ちょっと香ばしい塩がかかっている。
そのままでも美味しそうだが、これは別の素材として使う。
小さな麻袋に小魚を入れて袋の口を縛る。
さて、再び私のスキルの発動だ。
「粉々に砕けて、いいお出汁でしゅ。おいちくなぁーれ!」
ピカッと光ると、聖女が小さくパチパチと手を叩くのにイラッとした。
無視だ無視。
そのまま豆腐とあげを入れた鍋に、袋のまま放り込む。
細かくなった小魚が、良いお出汁になるはずだ。
古本だけでは火が保てるはずもなく、他にも持ってきた木材を足でガンガンと、兄やアールが粉砕して火にくべていった。
なぜか、聖女がアール達が汗をかくたびに拍手してる。暇なんだな。
グツグツと具材も煮えている鍋とは別に、米を炊いている方も泡をふいていい具合になってきた。
タイミングをみて、蒸らすために火から降ろして古いカーテンをいくつも巻いて包みこむ。
残るはグツグツ具材鍋。
「ワイは白みそがいいねんけど」
「僕は赤味噌が好きかも」
「残念でしゅが、アタチは合わせみそ主義でしゅ」
いつも特売の売り出し味噌が、同じメーカーじゃねーんだよ、男どもめ。
混ぜたら、そこそこいい味になるのは、カレーと味噌のいい所。
「という事で、合わせ味噌でしゅよー! おいちくなぁれーっ!」
私は味噌を混ぜ混ぜ、スキルを発動した!
できあがったご飯は、皆で手を洗ってからにぎにぎした。
「俺の塩でしゅよ~元手がタダで最高でしゅよ~」
「あの坊主のは力がこもっていて、まあまあだ」
「三角ってこれでいいのかい? アーリー」
「俵もいいよね、やっぱり塩だけ男より、僕が一番まゆまゆにふさわしいよね」
……何気に夫が最後の最後に闇堕ちしかけている気が……よし、気のせいだ。
塩むすびが出来上がる寸前に、いつのまにか気配なく聖女も私たちの輪に加わっていた。
「……握りたいんでしゅか?」
コクコクと嬉し気に頷く聖女に、手を洗わせて白米と塩を差し出した。
「握った事あるでしゅか?」
「昔、お母ちゃんと」
「そうでしゅか。まず塩をひとつまみ、手のひらに乗せるでしゅ」
実際に見せながら、幼子に教えるように習わせる。
言われたままに、聖女は塩をのせて手でむすぶ。
「力はいれないように、手のひらで丸いボールを持っている感じで、そうでしゅ」
「三角じゃない……」
「きれいなまん丸でしゅよ」
「……ふふっ」
聞こえない声で、嬉しいと言われ、驚いて聖女の顔を見た。
中年女の化粧の崩れた顔の癖に、目だけ細めて嬉し気に夢中になっている。
「うっ、ううっ、良かったなアカリ。入院前はいつもワイとアカリで、こうやって握ったもんや」
デブがむせび泣くが、涙がかかったおにぎりはお前が食えよ?
アールの大きな丸おにぎり一つ、兄の綺麗な三角おむすび、しゅーさんの俵むすびと、デブ&聖女の丸おむすびと、各自が自分の食べる分を握り終え用意された皿に並べる。
「椅子とテーブル、ふふっ」
聖女がゴブゴブと嫌な音を立てて、肉の尻尾を城中に張り巡らし探し出したテーブルと椅子のセットを、器用にドンドンと広いバルコニーに用意した。
「さあ、手と手を合わせて頂きましゅでしゅよーっ!」
塩おにぎりと味噌汁、これこそが究極にして原点である、おふくろの味!
シンプルだからこそ、素材と調理の繊細さが際立つ万能和食!
貧しき者も、富める者も、全ての人が回帰する、心のふるさと!
つまり、私が一番食べたかっただけです!
「美味しいね、まゆまゆ!」
「このスープがいいな、アーリー」
「うまっ、はふっ、んがぐぐっ」
最後の喉に詰まらせたアールに、背後から首元チョップを入れてあげた兄は優しい人だ。
デブ兄妹は、無言で必死でガッついていた。
「焦らなくても、おかわりあるでしゅよ」
「す、すんまへん……懐かしすぎて、うぐっ」
「泣くか食べるか、どっちかにして欲しいでしゅよ」
兄のうるささに対して、妹は無言でおにぎりと味噌汁を必死で食べている。
しゅーさんが私の為にと握ってくれた俵おむすびは小型で、今の私には食べやすかった。
塩がほどよく効いて、米の甘味もきちんと感じられる。
味噌汁をズズッとすすってみると、マイルドな味噌具合にアゲの香ばしさと豆腐が良いアクセントになって、米とよく合った。
心と体に染み入るような、最高の食事だ。
地球を知らない兄や精霊アールですら、もう自然と和食に馴染んでしまっている。
それもこれも、私が世界を旅して見つけた素材や調理が、新たな世界に革命を起こしたからだ。そう思えば感無量である。
このまま綺麗にフィナーレを迎えたいのだが……チラリと、問題の聖女を見つめた。
先ほどより顔色がマシになったような気がする。
「おいしい、なつかしい、また食べられるなんて」
小さくつぶやく聖女が、ホロリと涙を流す。
「どうして、どうして、なんでなんで」
「でしゅ?」
「体が動くようになったのに、やっと夢だった世界に来れたのに……」
「米粒が口元についてるでしゅ」
口元を長い舌でベロリと舐めとった聖女は、誰にともなく独り言をつぶやく。
「幸せになるはずなのに、なんでなんで」
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井戸端気分で聞いてみた。
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