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第10章 金色の光へ
第129話 聖女の心
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ずっと管につながれた青白い病室。
私はここで消えるのだと、愛用のゲーム機すら手に持てなくなった時に、奇跡が訪れたのだ。
『イカリ・アカリ……その消えゆく魂を私の世界で蘇らせますか?』
これはゲーム開始のテンプレが来たのだと、私は歓喜した。
自由の利かない体、苦しさを紛らわせるように乙女ゲームに私はハマっていく。
「アカリ、こういうのも好きか? 最近兄ちゃんがハマってるアニメも、古いけど面白いで」
ゲームやアニメ、そしてラノベ……年頃の女の子が好きな逆ハーやBLなんかは、病室にいながらも、タブレットで元気な子と変わらずにチャットで参加できた。
それが嬉しくて、楽しくて……いつしか、私はそういう世界で転生するための、今は準備期間なのだと自分に言い聞かせて過ごしていた。
新たな体と、私だけの世界。
皆が女神の次に現われた私に、盲目的に従ってくれた。
そう私が主役なの、私が皆に崇められ、そして世界を救うのよ。
並べられた騎士から、あの人を選んだ。
だって、とても好みだったんだもん。
使役する精霊は、狼と火の鳥を従えて、残りは見栄えも悪いから城で待機。
魔界が近づいた? これこそイベントじゃないかしら!
だったら私が救わなくては! だって私は聖女なんだもん!
だから魔界なんてすぐに退けてやった。
これで私は間違いなく、女神以上に世界に愛されたヒロイン確定。
みんな私を愛して仕方ない世界、全てが私の支配下になる。
けれど心配しないで、みんなが幸せに平和になるのが私の願い。
だから、共に戦った勇者のダーリンと結婚した。
彼は最初は渋ったけれど、きっと他の私を狙う男性キャラに気を使っていたのだと思う。心配しなくても、逆ハーエンディングは二週目にとっとくからね。
私たちは結ばれて、当然新しい国を統治した。
私はプリンセスになり、お気に入りのティアラは銀にピンクのダイヤモンドのような宝石を沢山つけて貰った。
精霊たちが何か言いたそうだったけど、それぞれの守る土地に帰っていく。
本当は狼ちゃんのところが良かったけども、ダーリンが故郷から離れたくないって言うから、羊ちゃんはモフモフペット枠として気にしないようにした。
せめて精霊たち全てが、狼ちゃんのように男前だったら良かったのに……あれ?
―― 精霊たちって……ドンナ顔ヲ、しテいたッケ? ――
薄れていくスチル、あれ? セーブ失敗した?
楽しかったのは最初だけ、いつまでたってもエンディングはこない、あれ?
国造りってつまんない。
女の子はスカート厳守、あとイケメンコンテストは定期的に開催して、優勝者は私専用の騎士団に入れて欲しい。
あと私の好きなBLを促進させたい。
大臣たちが反対して、ダーリンまでダメっていう。
女の子はそんな事しなくていいよって。仕事しなくていいって事だよね、優しい。
なら新しいドレス見て? ほら新しい首飾りもデザインしたの?
私は聖女だもん、一番可愛くて綺麗じゃないとダメ。
どうしてダメって言うの? 嬉しくないの?
そうこうしているうちに、私は妊娠した。
ああ、だから私の体を心配してくれたんだ。
嬉しい、私がママになるんだ。
きっと、素敵なパパとママになろうね。
ティアラはピンクの石に、赤い大きなルビーの宝石もつけたされた。
女王だもんね、もう私より上はない。
聖女でママで、これでベストエンディングのはず。
産むのは痛くて大変だったけど、生まれた息子は可愛かった。
ダーリンも息子を凄く可愛がってくれて、やっと私の望む幸せが訪れた。
育児は使用人たちが手伝ってくれる、私はママとなっても綺麗でいなくっちゃ。
なのに、またダーリンは私を叱る。
どうして? なぜ精霊を使役しようとしたのを怒るの?
彼らは守護精霊だからって、私はその上に君臨する聖女だよ?
子供がある程度大きくなると、またダーリンは仕事ばっかり。
もっと私を見てよ、もっと私に優しくしてよ。
そうだよね? 兄弟が欲しいよね?
次は女の子がいいな、あれ? また男の子だ。
でも、弟もいいかも知れない。
私は振り向いて欲しくて、かまってほしくて子供を産んだ。
女の子が欲しいのに、結局四人とも男の子だった。
だったら女の子が生まれるまで、頑張ろうって言ったらダーリンが私を叱りつけた。
なんでも、聖女の力で歳をとるのが遅い私と違って、彼はもう歳だから子供は無理だって。
そんなの、私の力でなんとでもしてあげるというと、激しく拒否された。
いつからか寝室も別となり、顔を合わせる時間も減っていく。
なぜ? どうして?
泣けば泣くほどに、私を幸せにしてくれるはずの勇者様は、私を遠ざけた。
幸せが遠くなっていく、霞んでみえる全て。
子供たちすら私を諫める。
何よ、何も知らないくせに! 私は全てを捨ててこの世界を救いに来たのよ!
魂すら、この世界に捧げたのに、世界が突然意地悪になった。
「それで家出したでしゅか?」
「えっぐ……だって、追っかけてくれると思ったんだもん」
精神的に成長していないのだ、この聖女は心の時を止めたまま。
子供を産んでも、成長できなかったのは、子育てを人任せにしたツケなのか?
「ダーリンも、あの子たちも消えたの。私、わかんなかった……ここが生きている世界だなんて……だから……だから、ワワダダダタ たたたたし、けすけす」
「バグってるでしゅ――っ!」
空がいきなり暗転し、闇が広がり、聖女の体は黒く染まった。
響き渡った私の悲鳴で、周りの皆が立ち上がる。
そして、最後の時を迎えるのだった。
私はここで消えるのだと、愛用のゲーム機すら手に持てなくなった時に、奇跡が訪れたのだ。
『イカリ・アカリ……その消えゆく魂を私の世界で蘇らせますか?』
これはゲーム開始のテンプレが来たのだと、私は歓喜した。
自由の利かない体、苦しさを紛らわせるように乙女ゲームに私はハマっていく。
「アカリ、こういうのも好きか? 最近兄ちゃんがハマってるアニメも、古いけど面白いで」
ゲームやアニメ、そしてラノベ……年頃の女の子が好きな逆ハーやBLなんかは、病室にいながらも、タブレットで元気な子と変わらずにチャットで参加できた。
それが嬉しくて、楽しくて……いつしか、私はそういう世界で転生するための、今は準備期間なのだと自分に言い聞かせて過ごしていた。
新たな体と、私だけの世界。
皆が女神の次に現われた私に、盲目的に従ってくれた。
そう私が主役なの、私が皆に崇められ、そして世界を救うのよ。
並べられた騎士から、あの人を選んだ。
だって、とても好みだったんだもん。
使役する精霊は、狼と火の鳥を従えて、残りは見栄えも悪いから城で待機。
魔界が近づいた? これこそイベントじゃないかしら!
だったら私が救わなくては! だって私は聖女なんだもん!
だから魔界なんてすぐに退けてやった。
これで私は間違いなく、女神以上に世界に愛されたヒロイン確定。
みんな私を愛して仕方ない世界、全てが私の支配下になる。
けれど心配しないで、みんなが幸せに平和になるのが私の願い。
だから、共に戦った勇者のダーリンと結婚した。
彼は最初は渋ったけれど、きっと他の私を狙う男性キャラに気を使っていたのだと思う。心配しなくても、逆ハーエンディングは二週目にとっとくからね。
私たちは結ばれて、当然新しい国を統治した。
私はプリンセスになり、お気に入りのティアラは銀にピンクのダイヤモンドのような宝石を沢山つけて貰った。
精霊たちが何か言いたそうだったけど、それぞれの守る土地に帰っていく。
本当は狼ちゃんのところが良かったけども、ダーリンが故郷から離れたくないって言うから、羊ちゃんはモフモフペット枠として気にしないようにした。
せめて精霊たち全てが、狼ちゃんのように男前だったら良かったのに……あれ?
―― 精霊たちって……ドンナ顔ヲ、しテいたッケ? ――
薄れていくスチル、あれ? セーブ失敗した?
楽しかったのは最初だけ、いつまでたってもエンディングはこない、あれ?
国造りってつまんない。
女の子はスカート厳守、あとイケメンコンテストは定期的に開催して、優勝者は私専用の騎士団に入れて欲しい。
あと私の好きなBLを促進させたい。
大臣たちが反対して、ダーリンまでダメっていう。
女の子はそんな事しなくていいよって。仕事しなくていいって事だよね、優しい。
なら新しいドレス見て? ほら新しい首飾りもデザインしたの?
私は聖女だもん、一番可愛くて綺麗じゃないとダメ。
どうしてダメって言うの? 嬉しくないの?
そうこうしているうちに、私は妊娠した。
ああ、だから私の体を心配してくれたんだ。
嬉しい、私がママになるんだ。
きっと、素敵なパパとママになろうね。
ティアラはピンクの石に、赤い大きなルビーの宝石もつけたされた。
女王だもんね、もう私より上はない。
聖女でママで、これでベストエンディングのはず。
産むのは痛くて大変だったけど、生まれた息子は可愛かった。
ダーリンも息子を凄く可愛がってくれて、やっと私の望む幸せが訪れた。
育児は使用人たちが手伝ってくれる、私はママとなっても綺麗でいなくっちゃ。
なのに、またダーリンは私を叱る。
どうして? なぜ精霊を使役しようとしたのを怒るの?
彼らは守護精霊だからって、私はその上に君臨する聖女だよ?
子供がある程度大きくなると、またダーリンは仕事ばっかり。
もっと私を見てよ、もっと私に優しくしてよ。
そうだよね? 兄弟が欲しいよね?
次は女の子がいいな、あれ? また男の子だ。
でも、弟もいいかも知れない。
私は振り向いて欲しくて、かまってほしくて子供を産んだ。
女の子が欲しいのに、結局四人とも男の子だった。
だったら女の子が生まれるまで、頑張ろうって言ったらダーリンが私を叱りつけた。
なんでも、聖女の力で歳をとるのが遅い私と違って、彼はもう歳だから子供は無理だって。
そんなの、私の力でなんとでもしてあげるというと、激しく拒否された。
いつからか寝室も別となり、顔を合わせる時間も減っていく。
なぜ? どうして?
泣けば泣くほどに、私を幸せにしてくれるはずの勇者様は、私を遠ざけた。
幸せが遠くなっていく、霞んでみえる全て。
子供たちすら私を諫める。
何よ、何も知らないくせに! 私は全てを捨ててこの世界を救いに来たのよ!
魂すら、この世界に捧げたのに、世界が突然意地悪になった。
「それで家出したでしゅか?」
「えっぐ……だって、追っかけてくれると思ったんだもん」
精神的に成長していないのだ、この聖女は心の時を止めたまま。
子供を産んでも、成長できなかったのは、子育てを人任せにしたツケなのか?
「ダーリンも、あの子たちも消えたの。私、わかんなかった……ここが生きている世界だなんて……だから……だから、ワワダダダタ たたたたし、けすけす」
「バグってるでしゅ――っ!」
空がいきなり暗転し、闇が広がり、聖女の体は黒く染まった。
響き渡った私の悲鳴で、周りの皆が立ち上がる。
そして、最後の時を迎えるのだった。
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