転生幼女は発酵スキルで、異世界に和食革命を起こす!味噌、醤油、酢を作って餌付けしたら、いつの間にか世界に名が轟いていた件

西野和歌

文字の大きさ
131 / 134
第10章 金色の光へ

第132話 こんちには。アリアナでしゅ

しおりを挟む
 教会の鐘がなり、私たちは友人たちに見守られて式を終えた。
 夫との出会いを聞かれ、私は友人たちに甘く惚気ていた。

「同じ病院で出会ったのよ。彼も昔は長い間入院していたし」

 私が入院中に研修生として担当してくれたのが、出会いのきっかけだ。
 最初は自分も長い間入院していた事、そして好きなアニメやラノベの話で盛り上がった。
 なぜか初対面と思えなくって、互いに気づけば自然に惹かれあっていた。

「本当に退院できて良かったわよねあかり。ほら、あなたのお兄さんなんて、感動して泣いてるわよ」

 チラリと横目で見ると、兄が感涙して両親に肩を叩かれていた。
 とても私を大事にしてくれる自慢の兄だ。
 入院中も兄が教えてくれた、少し古いアニメがきっかけで夫と知り合えたのもある。

「うちの祖母は、ランドルフやサウザーが大好きでさ」
「ハヤトがいつも話してくれる、強烈だけど優しい祖母さんよね」

 タキシード姿で、私をリードしてくれる夫を見つめてほほ笑んだ。

「まるで王子様みたいね」
「ん?」

 祖父似だという優しい瞳で、彼はほほ笑んでくれた。
 これから夫婦として、互いにちゃんと語り合い、共に乗り越え、そして今度こそ成長できればいい。
 ……ん? 成長? 今度こそ?

「どうしたの? あかり」
「ううん、なんだか私たちを祝福してくれている風を感じたの」
「風?」

 優しく私の頬を撫でた風が大気に消えて、聞こえぬ女神の祝福が地球を包み込んだ。


 ******

「おーい、また来たのかエバ」
「だってーうちの可愛い王子が、お宅のチビ姫ちゃんに会いたいって言うんだもん」
「ったく、ちゃんと自国で王子教育受けてるんだよな?」
「真面目よ、うちの愛しい王子は。今だって、お宅の王子に剣技を仕込んで貰ってるわよ」

 二人の精霊がいる部屋から離れた庭園では、二人の王子が木刀で打ち合っていた。

「シュヴァルツ王子、背が伸びたのかい?」
「っ、はぁ! 隙あり」
「おっと」
「っ……やっぱり強いですね」
「頑張って私から一本とらないと、妹とのデートは許可できないな」
「……あっ、ティナさん!」
「えっ! うわっ! 危ないっ!」
「惜しい、実に惜しかった」
「君は少し、妹に似てきたんじゃないのかい?」

 少年王子の一突きを交わした青年王子は、頭をかいた。
 (やれやれ、兄として二人の仲を許すしかないな)
 心で小さくため息をつく。

 場所は変わって、城の厨房では大勢の者たちが働いていた。
 一人の幼い姫が、この国の国王のほっぺを叩いている。

「ハチミツ出せでしゅよーっ!」
「わかった、わかったよア~ちゃん。ほっぺ痛い痛い」
「ヒゲがあれば引っ張れたでしゅ! とっとと極上ハチミツよこせでしゅ!」
「娘に甘えられて、わし嬉しい」

 スキルを発動させて、ハチミツを必死で絞り出す王を放置して、今度は椅子からピョンと飛び降りた幼女は、とてとてと用意された樽に向かう。

 蓋を開けてもらい中を見ると、茶色の味噌の中に野菜が漬け込まれていた。
 何本か取り出して、親衛隊……いや、厨房の調理人たちに手伝わせて、洗って更に綺麗に切ったものを並べさせた。

「姫様、これは?」
「漬物でしゅ、ごはんと一緒に食べるでしゅ」
「だからさきほど、米を炊いたのですな」

 炊いた米を横目に、南国より届いた塩を用意した。
 塩の容器についていた、デカデカと結婚結納品と書かれた手紙は、とっとと破り捨てなかった事となっている。

「ア~ちゃん。ところで、うちの息子と北国の娘の仲はどうなっておるのかのう?」
「ティナでしゅか? たまにメリーと遊びに来てるでしゅよ。メリーはアタチのご飯目当てでしゅけど」
「いつのまにか恋仲になるのはいいが、婚姻となるとあちらのスキル持ちがいなくなるのは問題ではないかのう?」
「別に、ご飯だけでなく、みんなの祈りもちゃんと届くから問題ないでしゅよ」

 歪んでいた精霊の力は正常化し、以前と違い精霊たちの移動制限は解除された。
 精霊だけでなく、国交も開かれ、世界は交じり合い発展していく。

「そういえば姫様、先ほど届けられた黒い羊はどう調理なさいますか?」
「それメリーじゃないでしゅか?」

 そう幼女が言った途端に、調理室に怒鳴り込んできた黒羊がいた。

「この国は客人を、いきなり家畜小屋に連行するのが礼儀なのですかっ!」
 
 北の国の精霊に、必死でペコペコと頭を下げる国王を無視して、塩をかけた漬物に、今度はハチミツを満遍なく垂らしていく。

「そういえば、最近夜に魔物の影が現われるそうですよ」
「あっ……ご飯を食べに、たまにドラちゃん達がこっそり来るでしゅよ」
「ドラちゃん?」
「ちゃんと、もっとバレないように来いって言っておくでしゅ。さて、準備が出来たでしゅよ」

 よいしょと、彼女は皆が見守る中で、両手を漬物皿に向けてスキルを発動した。

「アタチのスキルは発酵でしゅ! おいちくなーれっ!」

 世界は幸せの光と、和食の幸せに包まれた。

 転生幼女は発酵スキルで、異世界に和食革命を起こす!味噌、醤油、酢を作って餌付けしたら、いつの間にか世界に名が轟いていた件

 ~完~
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!

ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。 悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

ヒロインですが、舞台にも上がれなかったので田舎暮らしをします

未羊
ファンタジー
レイチェル・ウィルソンは公爵令嬢 十二歳の時に王都にある魔法学園の入学試験を受けたものの、なんと不合格になってしまう 好きなヒロインとの交流を進める恋愛ゲームのヒロインの一人なのに、なんとその舞台に上がれることもできずに退場となってしまったのだ 傷つきはしたものの、公爵の治める領地へと移り住むことになったことをきっかけに、レイチェルは前世の夢を叶えることを計画する 今日もレイチェルは、公爵領の片隅で畑を耕したり、お店をしたりと気ままに暮らすのだった

元侯爵令嬢の異世界薬膳料理~転生先はみんな食事に興味が無い世界だったので、美味しいご飯で人の身も心も癒します~

向原 行人
ファンタジー
 異世界へ転生して数日。十七歳の侯爵令嬢、アリスとして目覚めた私は、早くも限界を迎えていた。  というのも、この世界……みんな食事に興味が無くて、毎食パンとハムだけとか、ハムがチーズに変わるとか、せいぜいその程度だ。  料理というより、食材を並べているだけって感じがする。  元日本人の私としては温かいご飯がたべたいので、自分で食事を作るというと、「貴族が料理など下賤なことをするのは恥だ!」と、意味不明な怒られ方をした。  わかった……だったら、私は貴族を辞める!  家には兄が二人もいるし、姉だっているから問題無いでしょ。  宛てもなく屋敷を飛び出した私は、小さな村で更に酷い食事事情を目の当たりにする。  育ち盛りの子供たちや、身体を使う冒険者たちが、それだけしか食べないなんて……よし、美味しいご飯でみんなも私も幸せになろう!  医食同源! 大食いモフモフ聖獣に、胃袋を掴んでしまった騎士隊長と一緒に、異世界で美味しくて身体に良い食材探しだ! ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

不倫されて離婚した社畜OLが幼女転生して聖女になりましたが、王国が揉めてて大事にしてもらえないので好きに生きます

天田れおぽん
ファンタジー
 ブラック企業に勤める社畜OL沙羅(サラ)は、結婚したものの不倫されて離婚した。スッキリした気分で明るい未来に期待を馳せるも、公園から飛び出てきた子どもを助けたことで、弱っていた心臓が止まってしまい死亡。同情した女神が、黒髪黒目中肉中背バツイチの沙羅を、銀髪碧眼3歳児の聖女として異世界へと転生させてくれた。  ところが王国内で聖女の処遇で揉めていて、転生先は草原だった。  サラは女神がくれた山盛りてんこ盛りのスキルを使い、異世界で知り合ったモフモフたちと暮らし始める―――― ※第16話 あつまれ聖獣の森 6 が抜けていましたので2025/07/30に追加しました。

貴族令嬢、転生十秒で家出します。目指せ、おひとり様スローライフ

ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞にて奨励賞を頂きました。ありがとうございます! 貴族令嬢に転生したリルは、前世の記憶に混乱しつつも今世で恵まれていない環境なことに気が付き、突発で家出してしまう。 前世の社畜生活で疲れていたため、山奥で魔法の才能を生かしスローライフを目指すことにした。しかししょっぱなから魔物に襲われ、元王宮魔法士と出会ったり、はては皇子までやってきてと、なんだかスローライフとは違う毎日で……?

転生チート薬師は巻き込まれやすいのか? ~スローライフと時々騒動~ 

志位斗 茂家波
ファンタジー
異世界転生という話は聞いたことがあるが、まさかそのような事を実際に経験するとは思わなかった。 けれども、よくあるチートとかで暴れるような事よりも、自由にかつのんびりと適当に過ごしたい。 そう思っていたけれども、そうはいかないのが現実である。 ‥‥‥才能はあるのに、無駄遣いが多い、苦労人が増えやすいお話です。 「小説家になろう」でも公開中。興味があればそちらの方でもどうぞ。誤字は出来るだけ無いようにしたいですが、発見次第伝えていただければ幸いです。あと、案があればそれもある程度受け付けたいと思います。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

異世界リナトリオン〜平凡な田舎娘だと思った私、実は転生者でした?!〜

青山喜太
ファンタジー
ある日、母が死んだ 孤独に暮らす少女、エイダは今日も1人分の食器を片付ける、1人で食べる朝食も慣れたものだ。 そしてそれは母が死んでからいつもと変わらない日常だった、ドアがノックされるその時までは。 これは1人の少女が世界を巻き込む巨大な秘密に立ち向かうお話。 小説家になろう様からの転載です!

処理中です...