逃亡のアルメティア「あなたを解放します・離婚して下さい」

西野和歌

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2・新しい生活、そして再会

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 大陸の果てにある、辺境の国。
 他国との接触も少ない山奥の土地柄ゆえに、情報の伝達はどこよりも遅い。

 そんな小さな国の外れの村で、畑を耕す女が一人。
 廃屋を修繕し、庭の小さな畑で作物を育てる。
 近くの山から山菜を採り、川からは罠を仕掛けて魚を手に入れた。

 田舎だからこそ自然の恵みに満ち溢れ、贅沢さえしなければ最低限は生きていける環境に満足していた。

 どんなドレスもご馳走も、私を幸せにはしてくれなかった。
 ままごとの夫婦生活が終わり8年が過ぎて、あの頃の貧困な生活が今になって生きている。

 逃げのびた最果てのこの場所は、今の私にとって安住の地だ。
 貧しくとも首都にあった屋敷と違い、正真正銘の自然の暮らし。

 戦争など遠い異国の話だと、村の人たちはボロボロで辿り着いた私を優しく迎えてくれた。
 彼らが、この廃屋を譲ってくれて生活の方法を教えてくれた。

 静かな暮らし、もう手の皮も強くなり少しの刺激程度では痛むこともなくなった。
 干していた魚を籠にしまい、薄暗い小屋の中に入り手元に残った本を広げる。

 首都から持ち込んだ私物は少ないが、これはその一つ。
 もうボロボロで擦り切れた絵本は、私が母より唯一貰った形見の品だ。

 結婚した当時、祖国の文字は理解しても敵国である私の祖国の文字を知らない元夫に、この絵本を使って教えてあげたものだ。

 あれからきっと、彼は祖国に保護されて立派な王族として新しいスタートを切っているに違いない。
 こんな田舎では、それを知る術すらないのだが、私はそう信じている。

 外で馬の嘶きの音がした。
 きっと村の肥料屋のお人好しのおじさんに、また乗せて貰ったに違いない。

 いそいそと、私は玄関を開けて笑顔で迎えた。

「おかえりなさい。遅かったわ……えっ!」

 時が止まった。

 いるはずもない男がそこに立っていたからだ。
 どこか見覚えのある顔つきは、より引きしまり精悍になっている。
 旅用のコートとマントに身を包んでも、その生地は一目で庶民のものではないとわかる。

 深く冷たい海の底、色合いとは違い熱を込めた瞳が私を見つめていた。
 後ろに数人の護衛を連れて彼は立っていた。

 そう……かつての私の夫。
 マクシミリアン・ファルシオンだ。

 優しく口元に笑みを浮かべた彼が告げた。
「やっと見つけた。迎えに来たよアル」
「な……なんで」

 彼が片手をあげると、護衛達は少し後ろに離れた。
 ツカツカと硬直する私の前にきて、感極まると抱きしめられた。

 私の存在を確認するように、私の頭と腰を抑えて包み込む。

「良かった……やっと、君が無事で良かった」

 彼の小刻みな震えが私に伝わってくる。
 彼は私を心から心配してくれていたのだ。

「まって、離れて」
「嫌だ」

 まるで昔の幼いころのよう。
 けれど、もうあの頃とは違うのだ。

「痛いわ、離れて。それにちゃんと話をしましょう」
「っあ、すまない!」

 あわてて彼が私を解放してくれた。
 後ろに飛びずさった彼の長い髪が、サラリと風に揺れる。
 相変わらず伸ばしているらしい。

「どうしてここに?」
「君を迎えに来た。探すのと準備に時間がかかってごめん」
「迎えなんて必要ないわ、私はここで静かに暮らしたいの」

 ハッキリと彼に告げる。
 彼は私の視線を受け入れた。

「会えて嬉しかったわ。でも、もう私たちは夫婦でもないし住む世界も別なはず。それとも、戦犯として王族の一人を見逃すわけにはいかないのかしら?」

 あえて最後は意地悪く言ってみた。
 わざわざ、私を処分する為に王子自らこんな辺境に来る筈もないのだが。

「さあ、生存確認はおしまい。どうぞ国に帰って下さいませ」
「残念ながら、妻を置いて帰るわけにはいかないな」
「だから私たちは離婚したはず」
「いいや、離婚は成立していない」
「は?」

 呆気にとられた私に、マクシ様は昔のように無邪気に笑う。
 さも、当たり前だろうという風に。

「俺が愛しい君と離婚するなんて考えられない。言っただろ? 君を迎えに来たのだと」
「ま、まって! どういう事!」
「君が俺の事を考えて渡してくれた離縁届は、破いて捨てた」
「どうしてそんな事を!」

 頭が真っ白になる。
 そんな私を置き去りにして、彼は私の手を取った。

「ちゃんと準備は整えた。君が心配する必要はないよ、約束しただろ? 今度は俺が君を守ってやるから」

 どうすればいい、彼は本気だ。
 彼の言う通り、私は彼と共に行くべきなのか……それは無理だ。
 なぜなら、もう私には私の生きる道があるのだから。

 遠くから、馬の蹄の音とガタゴトと荷台が跳ねる音がする。
 帰ってきた。
 このタイミングで……なんて事!

 段々と近づいてきた荷台に乗った幼い少年が、こちらに向かって手を振った。

「お母さーん、ただいまーっ! 騎士様が来てるの? 凄いね!」

 はしゃぐ息子と、いつも息子を乗せてくれるおじさんに頭を下げる。

「すいません。今日も息子を送り届けて貰って」
「いや、うちの娘の遊び相手だから別に……というか、こいつらは」
「昔の知り合いです」

 無邪気に喜ぶ息子の茶色の髪は、太陽の光を浴びてポカポカしていた。
 私似の薄い青い目を細めて、招かれざる客を眺めている。

「なんなら、村の衛兵を呼ぶか?」

 心配してくれたおじさんに、私は無理やり作った笑顔で返事した。

「大丈夫です。彼らもすぐに帰ります」
「そうか、なら何かあったらすぐに言いな」
「はい、ありがとうございます」

 心配げに荷馬車が去っていく。
 それを見送り、振り返ると、息子が彼と話し込んでいた。

 息をのみ、私の鼓動が停止する。

「初めまして、名前を教えてくれるかな?」
「僕の名前はミリオンだよ」
「俺はマクシミリアンだ。ところで、君のお父さんはどこだい」

 息子ミリオンはニコニコして空を指さす。

「夜になると会えるよ! だってお星さまなんだから」
「……そうか」

 一瞬だけ苦痛に顔を歪ませた彼は、すぐさま取り繕って笑顔を見せた。

「実は、俺は君のお母さんを迎えに来たんだ」
「迎えにって、どこへ?」
「君のお母さんを俺の国に連れて行きたい。だから君も一緒に来ないかミリオン」
「勝手に子供と話を進めないで!」

 私の叫びに二人は硬直した。
 私は我が子を背中に隠して、彼と向き合う。

「家の中に入っていなさい」
「でも、お母さん」
「心配しないで、お母さんの知り合いだから。中でいつものように、本で勉強しておいて頂戴ね」
「……うん」

 ギュッと私の服の袖を掴んでいたミリオンの頭を撫でてやる。
 あくまでソッと。
 言われた通りに、あの子が家に入ったのを閉まる扉の音で確認した。

 再び向かい合うのは、姿勢よく立ち尽くすマクシ様。
 確かに騎士服に見えないことはない。
 田舎の子供たちにとって、騎士を見ることなんて夢のまた夢だ。
 ミリオンが興奮するのも仕方ないが、彼は騎士ではない。

 何より彼には会わせたくなかったのだ。

「さっき、あの子に言った言葉に二言はない」
「それを決めるのはあなたではなく、私達のはず」

 私は少し息を整えて、まっすぐに彼に伝えた。
 まもなく夕日が落ちてくる。

 整った容姿からは、彼が何を考えてるかは読み取れない。
 この数年の間で、彼も大人として成長したという事だ。

 あの頃の幼い少年ではなく、知らない男性がいる。
 こんな田舎に似つかわしくない姿が、この風景から浮いていた。
 早く彼は自らの世界に帰るべきだ。

 あと数歩、近づけば互いに触れ合える距離。
 村里離れた森の奥、いつもとは違う緊張に包まれる。
 戯言は沢山だ。もう私の前から消えて欲しい。

 私の秘密がバレる前に……。


「私は何を言われても、ここに残ります」
「力づくでも?」
「あなたの自己満足のために、私とついでに息子を連行するの?」
「……そうじゃない」
「これが最後よ、もう帰って。そして二度と現れないで」
「俺が嫌いだから?」

 その顔はズルイ。
 けれど、どんな顔をされても、また突き放さなくてはいけない。
 彼を元の世界に戻すために、そして私と息子の世界を守るために。

 彼を突き放す言葉のナイフが、口から飛び出る瞬間だ。
 いきなり家の中からガチャンと大きな物音が飛び込んだ。

「ミリオン!」

 慌てて後ろの扉を開けて家の中に飛び込んだ。
 見えたのは、玄関に入ってすぐの部屋。
 居間と台所を備えた狭い部屋に、水浸しで座り込む息子の姿。

 まだ7歳の小柄な息子が、大きな水瓶を抱えようとしたのだろう。
 幸いにも、割れはせず水浸しになっただけだった。

「大丈夫ミリオン……あっ!」

 息子の安全を確認したと同時に、後ろを振り返る。
 物音で中を確認しようとしたマクシ様の目の前で、私は扉を勢いよく閉めた。
 間に合っただろうか?
 扉を一枚隔てた向こうに彼を残したまま、急いで息子を抱えて奥の寝室に連れて行き、タオルを被せてやった。

「まだいるの? 騎士のおじちゃんたち」
「もう帰るわ。ちゃんと拭いていなさい」
「あいつら悪い奴? だったら僕も戦うよ! お母さんを守ってやる!」

 まるで、あの時の幼いマクシ様だ。
 息子の頬にキスをして、ともかく頭を拭いて後で風呂に入るからと私は伝えた。
 この家には、居間兼台所と寝室があり、外に繋がる小屋には風呂とトイレが備えられていた。
 庭には小さな井戸と畑がある。
 私たちの楽園は、ささやかで質素なものだ。

「晩御飯を手伝おうとしてくれたのよね? もうすぐ準備するから待っていなさい」
「うん……お母さん」

 私は気持ちを切り替えて、外で待つ彼のもとに向かう。
 扉を開けて、即座に閉める。
 この家は、私が守るべき聖域だ

 時間はいつしかたったようで、彼の背に赤い日が落ちていく。
 早くしなければ、森から出て村に戻るのも危険になるだろう。
 どちらともなく沈黙し、空を鳥が羽ばたいた。

「あの子は……」
「少しヤンチャで水を浴びただけです」
「あの子の父親は誰だ?」

 躊躇なく核心を突いてくる。
 彼にはそういう所がある。
 普段は気遣い遠慮するのに、突然まっすぐに貫いてくるのだ。

「あの子の父親は死にました」
「そうか……」
「それより、もう日が暮れます。どうぞお帰り下さい」
「すまないが、君の家に泊めて貰えないか?」
「無理です」

 即答した。できるはずがない。

「床でもいいのだが」
「ダメです。どうぞ村にお戻りください。それにあなたの護衛の方たちはどうするんですか?」
「彼らは野営でも平気だよ。昔のように、ただ傍でいたいだけなんだ」
「もう成人されたのですから、甘えられても可愛くありません」
「はははっ、昔みたいだな」

 確かに笑った顔は昔のままだ。
 けれど、もう私たちは終わったはずだ。
 いいえ、終わらせたはずなのだ。

「お帰り下さい。さようならマクシミリアン様」
「一旦退却だ。やるべき事も見えたしね」

 やっと去っていく後ろ姿を見送って、私は家に入り晩御飯の準備をする。
 ミリオンが私の腰にしがみつき甘えてきた。

「今日は騎士様たちなんだったの?」
「たまたま近くに来たから挨拶に来てくれたのよ」
「ふーん、お母さんの国の人?」
「そうね、昔の知り合いよ。さあ、ごはんを食べましょう」

 小さな二人がけのテーブルに並べて、私とミリオンは食事をとった。
 いつもの食卓、いつもの日常。
 この、ささやかな日々を掴むまで頑張ったのだ。
 全てはこの子のために。


「また今日も髪を染めるの?」
「そうね、どうしても目立つから」
「あの騎士のおじちゃんも同じ色だったよね。僕と関係ある?」

 我が子の鋭さに言葉に詰まる。
 当然だ。
 この子の髪色は一目瞭然なのだから。
 こんな田舎でも人目につかないように、幼い時から染めてきたのだ。
 空色から、ありきたりの土の色に。

 だから彼とこの子が並んだときは、色々な思いにとらわれた。
 同じ顔、間違いなく親子である彼らが、互いに知らぬままに会話をしていた姿。

「お母さん、お風呂に入ろう」
「ええ、そうね」

 ハッと我に返り。ミリオンと風呂に入り、ついでに毛染めを行う。
 特別な草で作った毛染めは、本来なら一週間は持つ。
 今回はたまたま、染めなおしの時期に、ミリオンが水をかぶってしまった。
 一部が濡れて元の髪色を露出してしまったが、即座に扉を閉めたので、きっと彼も気づいていないだろう。
 このタイミングでなければ、水ですら色落ちする事はないのに、本当に運が悪い。

 着替えて共にベッドに入る。
 つい久しぶりに、嵐の夜に添い寝した幼い夫だった人を思い出した。
 彼と最初に添い寝してあげた時は、もう少し大きかったはず。

「お母さん、また何かお話聞かせて」
「そうね、なら星の騎士の話をしましょうか?」

 彼から教わった、彼の祖国の童話だ。
 ミリオンはキラキラした目で夢中で聞き入っていたが、やがて安らかな寝息に代わる。

 この子の存在がもしバレたなら、私はこの子を手放すことになるだろう。
 それだけは許してほしい。

 この地に辿り着いた時点で、私は既に臨月に近かった。
 妊娠に気づいてから、ずっと生き延びるために必死に遠くへと逃げてきたのだ。

 家族に恵まれなかった私。
 たとえ王族であっても、そこに愛情なんて感じたことはなかった。
 唯一、愛妾の一人であった母だけが幼い私を愛してくれたが、その母も気づけば亡くなってしまった。

 王宮とはそんなものだ。たとえ血のつながった兄や姉といえども味方ではなく敵であった。
 父である国王が私に価値を見出したのは、あくまで人質への花嫁という名の楔としてだ。

 たとえどのような経緯であれ、私は敗戦国の王族である。
 許されるはずがないのに……

『君を迎えに来た』

 寝返りをする息子のシーツを、かけなおしてやった。
 ほんの数時間前に聞いた、懐かしい声を思い出す。

 優しさゆえに、きっと私達を保護する気なのだろう。
 その気持ちは嬉しくもあるが、それをすれば彼の立場が悪くなる。
 ましてや、ミリオンはどうなるのだ。
 不安が一気に押し寄せる。

 そもそも、彼の国の王が認めるはずがないのだ。
 それだけの事を、私の父はした。
 今や、我が祖国がどうなったのかすらわからない。
 父や、兄や、姉たちはどうなったのか?
 それすら、さして興味もない。
 敗戦国の王族に待つ運命なんて、一つだけなのだから。

 この村を捨てたくはない。
 二人して彼から逃げるのか? 
 もう私物は全て売り払った。手持ちの金貨も残り少しのみ。
 新しい場所……それは何より、また一から生活基盤を作るという意味。

 難民である私たちには、戸籍がない。
 田舎の村だから見逃されているだけだ。
 今度は私だけでなく、ミリオンの未来も考えなくてはいけない。

 どうか、彼に気づかれていませんように。
 祈る気持ちで、私は窓から見えた星に祈りをささげた。
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