12 / 14
第十二話
しおりを挟む
私は再びホールにいた。
まるで嵐がくる前のように静かではあるが、どこか浮ついた落ち着かない空気に満たされている。影のような人々はワルツを奏でるように歩きまわり、微笑みあい、囁きあっていた。
私は、冥府の神が行う婚礼を祝福するかのような人々が作り出す薄闇のメエルシュトロームの中を縫い、そこへたどり着く。
楽団が不在の舞台。
闇が。
冥界の闇が蹲る場所。
そこに漆黒の人がいた。
彼は私を見つめている。そして、彼はゆっくり立ち上がった。
明けの明星が大天使が持つような、竜の翼を広げながら。
彼は夜が抱きしめるように、私を迎えいれた。
闇が。
全てを覆ってゆく。
私が闇に飲み込まれようとしたその瞬間、わたしは誰かに手を引かれ舞台から降りる。私は振り返り、手を引いたひとを見た。
女、である。
真紅の翼を広げ、白い裸体を夜空に君臨する女王たる月がごとくに輝かせた女が、私の手を掴んでいた。
「全く、何してるのよ。あんなのに引き込まれちゃ駄目なんだから」
女は狂い咲いた薔薇のように赤い唇から、短刀のような牙をのぞかせ凶暴に笑う。私は、目眩を感じた。
「あの、誰、ですか?」
ダガーの切先みたいに鋭い牙を剥き出しにした女は、ふふっと笑う。
「ミストレスと、呼ぶがいいわ」
私は困惑して、眉を顰める。明らかにミストレスと名乗る女は、怪異と呼ぶべき存在であった。
「ミストレスさん、ここへは何をしに」
ミストレスは、苦笑する。
「怪異が出しゃばるなっていうの? でも、貴方たちがあんなのを造るから私たち怪異は、放っておけなくなったのよね」
そういいながら、ミストレスは舞台を指差す。
闇が凝縮し人型をとったような漆黒の人が、夜のような竜の翼を広げ立っている。それは真夜中に告げられる、不吉な絶望のようであった。
まるで嵐がくる前のように静かではあるが、どこか浮ついた落ち着かない空気に満たされている。影のような人々はワルツを奏でるように歩きまわり、微笑みあい、囁きあっていた。
私は、冥府の神が行う婚礼を祝福するかのような人々が作り出す薄闇のメエルシュトロームの中を縫い、そこへたどり着く。
楽団が不在の舞台。
闇が。
冥界の闇が蹲る場所。
そこに漆黒の人がいた。
彼は私を見つめている。そして、彼はゆっくり立ち上がった。
明けの明星が大天使が持つような、竜の翼を広げながら。
彼は夜が抱きしめるように、私を迎えいれた。
闇が。
全てを覆ってゆく。
私が闇に飲み込まれようとしたその瞬間、わたしは誰かに手を引かれ舞台から降りる。私は振り返り、手を引いたひとを見た。
女、である。
真紅の翼を広げ、白い裸体を夜空に君臨する女王たる月がごとくに輝かせた女が、私の手を掴んでいた。
「全く、何してるのよ。あんなのに引き込まれちゃ駄目なんだから」
女は狂い咲いた薔薇のように赤い唇から、短刀のような牙をのぞかせ凶暴に笑う。私は、目眩を感じた。
「あの、誰、ですか?」
ダガーの切先みたいに鋭い牙を剥き出しにした女は、ふふっと笑う。
「ミストレスと、呼ぶがいいわ」
私は困惑して、眉を顰める。明らかにミストレスと名乗る女は、怪異と呼ぶべき存在であった。
「ミストレスさん、ここへは何をしに」
ミストレスは、苦笑する。
「怪異が出しゃばるなっていうの? でも、貴方たちがあんなのを造るから私たち怪異は、放っておけなくなったのよね」
そういいながら、ミストレスは舞台を指差す。
闇が凝縮し人型をとったような漆黒の人が、夜のような竜の翼を広げ立っている。それは真夜中に告げられる、不吉な絶望のようであった。
0
あなたにおすすめの小説
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
肉食御曹司の独占愛で極甘懐妊しそうです
沖田弥子
恋愛
過去のトラウマから恋愛と結婚を避けて生きている、二十六歳のさやか。そんなある日、飲み会の帰り際、イケメン上司で会社の御曹司でもある久我凌河に二人きりの二次会に誘われる。ホテルの最上階にある豪華なバーで呑むことになったさやか。お酒の勢いもあって、さやかが強く抱いている『とある願望』を彼に話したところ、なんと彼と一夜を過ごすことになり、しかも恋人になってしまった!? 彼は自分を女除けとして使っているだけだ、と考えるさやかだったが、少しずつ彼に恋心を覚えるようになっていき……。肉食でイケメンな彼にとろとろに蕩かされる、極甘濃密ラブ・ロマンス!
淫紋付きランジェリーパーティーへようこそ~麗人辺境伯、婿殿の逆襲の罠にハメられる
柿崎まつる
恋愛
ローテ辺境伯領から最重要機密を盗んだ男が潜んだ先は、ある紳士社交倶楽部の夜会会場。女辺境伯とその夫は夜会に潜入するが、なんとそこはランジェリーパーティーだった!
※辺境伯は女です ムーンライトノベルズに掲載済みです。
ヤンデレエリートの執愛婚で懐妊させられます
沖田弥子
恋愛
職場の後輩に恋人を略奪された澪。終業後に堪えきれず泣いていたところを、営業部のエリート社員、天王寺明夜に見つかってしまう。彼に優しく慰められながら居酒屋で事の顛末を話していたが、なぜか明夜と一夜を過ごすことに――!? 明夜は傷心した自分を慰めてくれただけだ、と考える澪だったが、翌朝「責任をとってほしい」と明夜に迫られ、婚姻届にサインしてしまった。突如始まった新婚生活。明夜は澪の心と身体を幸せで満たしてくれていたが、徐々に明夜のヤンデレな一面が見えてきて――執着強めな旦那様との極上溺愛ラブストーリー!
ヤンデレ王子を闇落ちから救ったら愛執まみれの独占欲に囚われました
大江戸ウメコ
恋愛
幼い頃に精霊の祝福である未来視の力が開花し、「夫である第二王子ナハルドに殺される」という己の運命を知った伯爵令嬢ツィーラ。この悲惨な未来を変えるべく、ツィーラは彼を避けようとしたが、ひょんなことから婚約者に選ばれてしまった! ならば、ナハルドが将来闇落ちしないよう、側で彼を支えることを決意する。そんな努力の甲斐あって、ツィーラへの好意を隠さず伝えてくるほど、ナハルドとの関係は良好になった。だけど、彼の並々ならぬ執着心のすべてを、ツィーラはまだ知らなくて――
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる