その手紙は、冥界から届けられた

ルサルカ

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第十二話

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 私は再びホールにいた。
 まるで嵐がくる前のように静かではあるが、どこか浮ついた落ち着かない空気に満たされている。影のような人々はワルツを奏でるように歩きまわり、微笑みあい、囁きあっていた。
 私は、冥府の神が行う婚礼を祝福するかのような人々が作り出す薄闇のメエルシュトロームの中を縫い、そこへたどり着く。
 楽団が不在の舞台。
 闇が。
 冥界の闇が蹲る場所。
 そこに漆黒の人がいた。
 彼は私を見つめている。そして、彼はゆっくり立ち上がった。
 明けの明星が大天使が持つような、竜の翼を広げながら。
 彼は夜が抱きしめるように、私を迎えいれた。
 闇が。
 全てを覆ってゆく。
 私が闇に飲み込まれようとしたその瞬間、わたしは誰かに手を引かれ舞台から降りる。私は振り返り、手を引いたひとを見た。
 女、である。
 真紅の翼を広げ、白い裸体を夜空に君臨する女王たる月がごとくに輝かせた女が、私の手を掴んでいた。

「全く、何してるのよ。あんなのに引き込まれちゃ駄目なんだから」

 女は狂い咲いた薔薇のように赤い唇から、短刀のような牙をのぞかせ凶暴に笑う。私は、目眩を感じた。

「あの、誰、ですか?」

 ダガーの切先みたいに鋭い牙を剥き出しにした女は、ふふっと笑う。

「ミストレスと、呼ぶがいいわ」

 私は困惑して、眉を顰める。明らかにミストレスと名乗る女は、怪異と呼ぶべき存在であった。

「ミストレスさん、ここへは何をしに」

 ミストレスは、苦笑する。

「怪異が出しゃばるなっていうの? でも、貴方たちがあんなのを造るから私たち怪異は、放っておけなくなったのよね」

 そういいながら、ミストレスは舞台を指差す。
 闇が凝縮し人型をとったような漆黒の人が、夜のような竜の翼を広げ立っている。それは真夜中に告げられる、不吉な絶望のようであった。
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