転生したら公爵令嬢になって辺境伯に嫁ぐことになったけど「貴女は必要無い」と言われたので、好きにすることにしました

ルサルカ

文字の大きさ
6 / 12

第六話

しおりを挟む
 わたしの言葉にアンもエギルも、そろって呆れ顔になる。
 しかし、煽りをされたアールヴは、冷たい目でわたしを見た。
 無造作にすたすたとわたしに向かって、歩いてくる。
 予備動作もなくいきなり剣が、わたしに襲いかかった。お、練習刀じゃなくて実刀かよと思う。
 ダークの剣とは段違いに、速い。
 でも、ボクサーのジャブに比べると半分くらいか。
 上段からわたしの肩口目掛けて、鋼の閃光となった剣が襲いかかる。
 でもこれは、見せ太刀とこころのなかで呟く。
 アールヴ君は、これで斬れるとは思ってないね。
 本命は、二の太刀。
 わたしはスウェイバックで、振り下ろされる剣を躱す。
 アールヴ君は剣を翻し、わたしの足に向かって斬りつけてくる。
 おう。足一本斬り落とす気だね、この子。その意気やヨシ。
 でも足を斬り落とされるのは嫌なんで、間合いをつめる。
 わたしの右手が、フリッカージャブのようにアールヴ君の顎先を掠めた。
 脳が、ぐるんと揺さぶられ剣が止まる。
 多分、エギルからもアンからもわたしが何をしたか判らなかったはず。
 わたしは左手の指先で、アールヴ君の額をチョンとつく。
 アールヴ君は、尻もちをついた。

 わたしは顎先に指をあて、小首を傾げる。

「ああ、気を使って倒された振りをしてくださったのね、アールヴさん」

 アールヴ君は、無理やり立とうとしてまた尻もちをつく。おい、折角やられたふりということにしたのに、台無しにすんなよと思った。
 エギルがさっと手をあげ、合図する。
 十人くらいの兵が矢をつがえた弓を手にして、わたしの方を向く。
 わたしは、アンの方に顔を向けた。

「ねぇ、こんなところでいかがかしら。もう少し頑張りましょうか?」

 アンは、顔面蒼白でわたしを睨む。

「これくらいになさってはいかがです? もう、好きにしてくださって結構です」

 わたしは満面の笑みを、アンとエギルに見せる。
 そして、深々と頭をさげた。
 腰より低く、頭を降ろす。

「エギル隊長さま。訓練の邪魔をして、まことに申し訳ございません。お詫びに、営倉に入りましょうか」

 エギルは、うんざりした顔になる。

「いや、そんなことしてくれんなよ、ややこしい」

 エギルは手を振り矢をつがえた兵が、解散する。

「二度と、おれの邪魔をせんでくれたら、それでいい」

 わたしは、にこにこと笑ってエギルを見る。

「本当に、ありがとうございます。隊長さま」

 エギルはしっ、しっと手を振る。
 えらい扱いだが、わたしは微笑んだまますたすたと歩く。
 アンが後ろに続いた。
 わたしは背を向けたまま、アンに話しかける。

「このまま狩りにいくけど、よろしいかしら?」

 アンは、とても長いため息をつく。

「なるべくひと目のつかないところで、死んでいただければ」

「善処するね」

 わたしは振り返ると、にぃっと笑みを見せる。
 そして、ひらりと城壁を飛び越え外に出た。
 呆れた身体能力である。
 大体三階建てくらいのビルを飛び越えた感じ。
 まじで、キャプテン・アメリカみたいになってる。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

ナッツアーモンド
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模S子。新入社員として入った会社でS子を待ち受ける運命とは....。

世話焼き幼馴染と離れるのが辛いので自分から離れることにしました

小村辰馬
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢、エリス・カーマインに転生した。 幼馴染であるアーロンの傍にに居続けると、追放エンドを迎えてしまうのに、原作では俺様だった彼の世話焼きな一面を開花させてしまい、居心地の良い彼のそばを離れるのが辛くなってしまう。 ならば彼の代わりに男友達を作ろうと画策するがーー

兄様達の愛が止まりません!

恋愛
五歳の時、私と兄は父の兄である叔父に助けられた。 そう、私達の両親がニ歳の時事故で亡くなった途端、親類に屋敷を乗っ取られて、離れに閉じ込められた。 屋敷に勤めてくれていた者達はほぼ全員解雇され、一部残された者が密かに私達を庇ってくれていたのだ。 やがて、領内や屋敷周辺に魔物や魔獣被害が出だし、私と兄、そして唯一の保護をしてくれた侍女のみとなり、死の危険性があると心配した者が叔父に助けを求めてくれた。 無事に保護された私達は、叔父が全力で守るからと連れ出し、養子にしてくれたのだ。 叔父の家には二人の兄がいた。 そこで、私は思い出したんだ。双子の兄が時折話していた不思議な話と、何故か自分に映像に流れて来た不思議な世界を、そして、私は…

千年に一度の美少女になったらしい

みな
恋愛
この世界の美的感覚は狂っていた... ✳︎完結した後も番外編を作れたら作っていきたい... ✳︎視点がころころ変わります...

婚約破棄された令嬢、気づけば王族総出で奪い合われています

ゆっこ
恋愛
 「――よって、リリアーナ・セレスト嬢との婚約は破棄する!」  王城の大広間に王太子アレクシスの声が響いた瞬間、私は静かにスカートをつまみ上げて一礼した。  「かしこまりました、殿下。どうか末永くお幸せに」  本心ではない。けれど、こう言うしかなかった。  王太子は私を見下ろし、勝ち誇ったように笑った。  「お前のような地味で役に立たない女より、フローラの方が相応しい。彼女は聖女として覚醒したのだ!」

【完結】離婚を切り出したら私に不干渉だったはずの夫が激甘に豹変しました

雨宮羽那
恋愛
 結婚して5年。リディアは悩んでいた。  夫のレナードが仕事で忙しく、夫婦らしいことが何一つないことに。  ある日「私、離婚しようと思うの」と義妹に相談すると、とある薬を渡される。  どうやらそれは、『ちょーっとだけ本音がでちゃう薬』のよう。  そうしてやってきた離婚の話を告げる場で、リディアはつい好奇心に負けて、夫へ薬を飲ませてしまう。  すると、あら不思議。  いつもは浮ついた言葉なんて口にしない夫が、とんでもなく甘い言葉を口にしはじめたのだ。 「どうか離婚だなんて言わないでください。私のスイートハニーは君だけなんです」 (誰ですかあなた) ◇◇◇◇ ※全3話。 ※コメディ重視のお話です。深く考えちゃダメです!少しでも笑っていただけますと幸いです(*_ _))*゜

大丈夫のその先は…

水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。 新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。 バレないように、バレないように。 「大丈夫だよ」 すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m

処理中です...