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第57話「僕らは、雲の向こうに東京湾を見た」【アキオ】
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成層圏近くの空は、もう殆ど宇宙ではないかと思う。
空というよりは、凄みをおびた昏さに染まる透明な灰色の空間が広がっている。
空気は薄く、気温も低い。
死に限りなく近い静寂が、支配している。
ナツの常温核融合エンジンは、薄くなった空気などものともせず、機体を推進させてゆく。
体内へバギュームを取り込んだおかげで、血液の流れをある程度コントロールできるため、高高度の世界でもさほど身体活動に支障をきたさない。
そして、もうひとつ利点がある。
頭の中に、ハルオの声が飛び込んできた。
(もうすぐポセイドンは、高度を下げて東京湾へ侵入する。突撃の準備だ)
無線を使わなくても、ナツやハルオと会話することができる。
なんでもバギュームは量子通信を行って、コミュニケーションをとるらしい。
(おっけー)
楽しげといってもいい、ナツの返事がかえる。
僕は、コックピットで操縦桿を握り見えない地上を見下ろしてみた。
ゴーグルと酸素マスクを付けているが、バギュームによってコントロールされた身体にとってそれは気休めのようなものだ。
鼓動や呼吸も制御しているはずなのだが、緊張のせいか息苦しく視野も狭い。
現実に、皮膜がかかっているような感覚がある。
僕の緊張を見透かしたのか、気楽な調子でハルオが叫ぶ。
(さあ、パーティをはじめるぞ。せいぜい楽しもうぜ、世界の最後をな)
ナツが、嘲笑うように返す。
(馬鹿じゃないの)
ハルオとナツの機体は身を翻し、一気に降下をはじめる。
重力が一瞬消失し、宇宙空間にほうりだされたような気分を味あう。
しかし、無重力状態はじきに加速の力によって消し去られる。
地上に向かっての加速で、僕の身体はコックピットに押し付けられた。
上下の感覚がなくなり、落下しているのか上昇しているのかよく判らない。
感じとしては、彗星となって宇宙の闇を切り裂いて飛んでいる。
そう、思った。
おそらくバギュームが体内に取り込まれていなければ、僕の意識は急激な加速で失われていただろう。
しかし、僕の身体はその凄まじい加速に耐えていた。
ナツの機体は、いつもの漆黒ではなく、空と同じ青灰色になっている。
パッシブ・カメレオン方式の光学迷彩で、機体は覆われていた。
地上側から見た時の光度や色調に合わせて、機体の色を変化させていく。
もちろん、それで完全に消え去ることは不可能だ。
でも、光学センサーを短時間であれ、騙すことはできる。
そして僕らは、雲の向こうに東京湾を見た。
空というよりは、凄みをおびた昏さに染まる透明な灰色の空間が広がっている。
空気は薄く、気温も低い。
死に限りなく近い静寂が、支配している。
ナツの常温核融合エンジンは、薄くなった空気などものともせず、機体を推進させてゆく。
体内へバギュームを取り込んだおかげで、血液の流れをある程度コントロールできるため、高高度の世界でもさほど身体活動に支障をきたさない。
そして、もうひとつ利点がある。
頭の中に、ハルオの声が飛び込んできた。
(もうすぐポセイドンは、高度を下げて東京湾へ侵入する。突撃の準備だ)
無線を使わなくても、ナツやハルオと会話することができる。
なんでもバギュームは量子通信を行って、コミュニケーションをとるらしい。
(おっけー)
楽しげといってもいい、ナツの返事がかえる。
僕は、コックピットで操縦桿を握り見えない地上を見下ろしてみた。
ゴーグルと酸素マスクを付けているが、バギュームによってコントロールされた身体にとってそれは気休めのようなものだ。
鼓動や呼吸も制御しているはずなのだが、緊張のせいか息苦しく視野も狭い。
現実に、皮膜がかかっているような感覚がある。
僕の緊張を見透かしたのか、気楽な調子でハルオが叫ぶ。
(さあ、パーティをはじめるぞ。せいぜい楽しもうぜ、世界の最後をな)
ナツが、嘲笑うように返す。
(馬鹿じゃないの)
ハルオとナツの機体は身を翻し、一気に降下をはじめる。
重力が一瞬消失し、宇宙空間にほうりだされたような気分を味あう。
しかし、無重力状態はじきに加速の力によって消し去られる。
地上に向かっての加速で、僕の身体はコックピットに押し付けられた。
上下の感覚がなくなり、落下しているのか上昇しているのかよく判らない。
感じとしては、彗星となって宇宙の闇を切り裂いて飛んでいる。
そう、思った。
おそらくバギュームが体内に取り込まれていなければ、僕の意識は急激な加速で失われていただろう。
しかし、僕の身体はその凄まじい加速に耐えていた。
ナツの機体は、いつもの漆黒ではなく、空と同じ青灰色になっている。
パッシブ・カメレオン方式の光学迷彩で、機体は覆われていた。
地上側から見た時の光度や色調に合わせて、機体の色を変化させていく。
もちろん、それで完全に消え去ることは不可能だ。
でも、光学センサーを短時間であれ、騙すことはできる。
そして僕らは、雲の向こうに東京湾を見た。
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