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第61話「血の、追加タンク」【アキオ】
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僕は、ナツの言葉を聞いた瞬間にその動作に入る。
僕に躊躇いは、一切無かった。
僕はフライトジャケットのポケットから、ナイフを取り出す。
刃を起こしたそのナイフを首筋の頚動脈に押し当てると、一気に引く。
想像していた以上に、景気よく血が吹き出した。
コックピットの中は、夕日の輝きを持った血飛沫に満たされる。
ナツは、声にならない悲鳴をあげた。
(いやいや、違うし)
と、僕は言おうとしたが、声にならない。
なぜ、ナツやハルオの機体は、操縦する必要が無いのにコックピットがあるのか。
理由は、簡単な話である。
元々、鉄人式は旧帝国軍が特攻兵器として造ったものだ。
帝国軍はひとの命も、ひとつの武器という思想を持つ。
まあ確かに、僕が言ったようにパイロットとガンナーの二人がそれぞれの役割を果たせば多少射撃の精度はあがるかもしれない。
それにしたって、二人がかりでやるほどのことではないだろう。
むしろ性能のいいアビオニクスを積んだほうが、ひとより役に立つ。
つまり、僕がここにいる意味は、増槽ということだ。
言い方を変えれば血の、追加タンク。
通常のフライトではなく、高機動戦闘しつつバルカンも撃てば、ひとりのひとが必要とする血を越えて使ってしまうことになる。
二機以上の敵と戦うつもりなら、増槽が必要なのだ。
ハルオは、僕の意図に気がついていたけれど何も言わなかった。
そしてようやく僕は、自分の役目を果たすことができたという訳だ。
ダークペガサスは速度を落とし降下していくナツの背後を、完全にとった。
昏くなっていく意識の中で、力を取り戻したナツが必死の回避運動に入るのを感じる。
燃え盛る白銀の刃となったレーザービームが、ナツの身体を切り裂く。
しかし、ナツはぎりぎりで致命傷を受ける前にそれを躱した。
深手を負ってしまったけれど、まだ戦うことはできる。
ナツは、回復したエンジンを全開にして降下する力を速度へと変える、ロー・ヨーヨーの要領で無人戦闘機の追尾をブレイクし後ろをとろうとしていた。
僕は、満足して微笑む。
全力を振り絞って機体を旋回させるナツが、絶叫した。
「アキオの、馬鹿ぁー!!」
(いやいや、そうじゃなくてね)
そう言おうとしたが、とうとう僕の意識は暗黒へと飲み込まれていった。
僕に躊躇いは、一切無かった。
僕はフライトジャケットのポケットから、ナイフを取り出す。
刃を起こしたそのナイフを首筋の頚動脈に押し当てると、一気に引く。
想像していた以上に、景気よく血が吹き出した。
コックピットの中は、夕日の輝きを持った血飛沫に満たされる。
ナツは、声にならない悲鳴をあげた。
(いやいや、違うし)
と、僕は言おうとしたが、声にならない。
なぜ、ナツやハルオの機体は、操縦する必要が無いのにコックピットがあるのか。
理由は、簡単な話である。
元々、鉄人式は旧帝国軍が特攻兵器として造ったものだ。
帝国軍はひとの命も、ひとつの武器という思想を持つ。
まあ確かに、僕が言ったようにパイロットとガンナーの二人がそれぞれの役割を果たせば多少射撃の精度はあがるかもしれない。
それにしたって、二人がかりでやるほどのことではないだろう。
むしろ性能のいいアビオニクスを積んだほうが、ひとより役に立つ。
つまり、僕がここにいる意味は、増槽ということだ。
言い方を変えれば血の、追加タンク。
通常のフライトではなく、高機動戦闘しつつバルカンも撃てば、ひとりのひとが必要とする血を越えて使ってしまうことになる。
二機以上の敵と戦うつもりなら、増槽が必要なのだ。
ハルオは、僕の意図に気がついていたけれど何も言わなかった。
そしてようやく僕は、自分の役目を果たすことができたという訳だ。
ダークペガサスは速度を落とし降下していくナツの背後を、完全にとった。
昏くなっていく意識の中で、力を取り戻したナツが必死の回避運動に入るのを感じる。
燃え盛る白銀の刃となったレーザービームが、ナツの身体を切り裂く。
しかし、ナツはぎりぎりで致命傷を受ける前にそれを躱した。
深手を負ってしまったけれど、まだ戦うことはできる。
ナツは、回復したエンジンを全開にして降下する力を速度へと変える、ロー・ヨーヨーの要領で無人戦闘機の追尾をブレイクし後ろをとろうとしていた。
僕は、満足して微笑む。
全力を振り絞って機体を旋回させるナツが、絶叫した。
「アキオの、馬鹿ぁー!!」
(いやいや、そうじゃなくてね)
そう言おうとしたが、とうとう僕の意識は暗黒へと飲み込まれていった。
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