空を飛ぶ少女、引きこもりの少年、破壊を求めるおとこ

ルサルカ

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第63話「世界の終わりというやつが、はじまる」【リディア】

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一瞬、海が紅く染まったような気がする。

多分それは、幻覚なのだろう。

今まさにおこったはずのことが、わたしの意識を狂わせた。

東京湾の地下で、自律型岩盤掘削機に搭載された中性子爆弾が炸裂したはずだ。

人体で感じられるような事象は、全く発生していない。

各種センサー、放射能測定器も含め、今のところ何かを感知した様子は無かった。

想定される中性子爆弾の規模から考えると、そんなもののような気もする。

けれど、始まったのは間違いない。

世界の終わりという、やつが。

地球の崩壊が始まったにしては、この湾岸エリアは平和である。

埋立地の人工島が形成しているこのエリアは、普段の日常となんら変わることがない。

その平凡な景色の中で、ジョン・スミスが行動を起こした。

トレーラー・トラックの荷台についたレバーを操作し、コンテナを開く。

全開になったコンテナは、その中に収められていたステルス・ブラックホークをむき出しにした。

平面を組み合わせて立方体状のボディを持ったヘリには、透明のフィルムが貼り付けられている。

光学LEDフィルムがボディを覆っており、光学迷彩としての機能を発揮するのだと思われた。

スミスは、ステルス・ブラックホールに乗り込みながら叫ぶ。

「乗れよ、リディア」

「何をする気だ?」

わたしの問いに、スミスは少し笑みを浮かべた。

「決まってるさ、ナツを回収しにいく」

わたしは、目を丸くする。

「死んでると思うが、死体を回収するというのか?」

「まあ、それでもいいさ」

意味不明な回答に、わたしは肩を竦めた。

「一応、聞いておくけどヘリの操縦は誰がするんだ」

スミスは、爽やかな笑みで答える。

「スターリングラードの白百合に、まかすよ」

わたしはため息をついて、ヘリの操縦席につく。

機器のチェックをしながら、エンジンをスタートする。

サープレッサーによって音を抑えられた、甲高いエンジン音が聞こえはじめた。

ローターも回転しはじめるが、高音でひとの耳には聞こえにくい音となっている。

わたしはさらに機器を操作し、光学迷彩をオンにした。

光学LEDフィルムは空の青を、映し出す。

青灰色に偽装されたヘリは、幽霊のようにそっと宙へ舞い上がった。


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