空を飛ぶ少女、引きこもりの少年、破壊を求めるおとこ

ルサルカ

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第64話「海は、巨大な黒い怪物を内に秘める」【リディア】

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空の中に溶け込み、姿を消したヘリを操縦して海面間近なところを低空飛行させる。

ヘリは、レーダーから見つかりにくい高度を飛ぶ。

そうしたところで結局は見つかるのかもしれないが、できるだけ見えにくくするにこしたことはない。

わたしは、東京湾の沖合いを見て息をのむ。

「あれは、なんだ」

遠くの海は、巨大な黒い怪物を内に秘め盛り上がってゆく。

それは泡立ちながら地上を飲み込もうとする、リヴァイアサンだった。

稲妻のような真紅の光が、内部で輝いている。

スミスは、薄く笑った。

「ふん、どうやらゴジラサウルスたちの暴走が始まったようだ、いや」

スミスは、夢見るように海を眺める。

「黒竜式と呼ぶのだったな、あれは」

その丘のように盛り上がった海は、陸に向かって動いてゆく。

巨大な怪物が、這い進んでいるようにだ。

「ナツが墜落した地点は、把握しているのだろう」

わたしは、スミスの言葉に頷く。

「ああ、今そこへ向かっている」

ヘリに積まれているセンサーは、海上のあるポイントをさしている。

わたしは、ヘリをそこへ向かわせていた。

やがて、蒼ざめた海の上に、何かが浮かんでいるのを見出す。

「あれだな、もう少し高度を下げろ」

「無茶言うなよ」

わたしはスミスに答えながらも、ぎりぎりまで高度を下げていく。

どうやら、ナツの死体が浮かんでいるようだ。

スミスは、ナツを回収するつもりらしく胴にワイヤーを繋げている。

わたしは、ナツの死体が浮かんだ上でヘリをホバリングさせた。

スミスは、海に向かってダイブする。

暫く時間が過ぎたのちに、海上から信号弾が発射された。

スミスの放った、合図らしい。

どうやら、ナツの死体を確保したようだ。

わたしは操縦席からコントロールしてスミスの胴に繋がるワイヤーをウィンチで巻取り、スミスとナツの死体をヘリに引き上げる。

「いいぜ、戻ろうか」

ヘリに戻ったスミスの言葉に従い、わたしは陸に向かってヘリを飛ばす。

わたしたちの背後で、海はさらに盛り上がり内に秘めた闇の深さを増している。

それは、着実に陸へと向かっていた。

「そんな死体を回収して、どうするつもりなんだ」

わたしの問いに、スミスが答える。

「死んではいない」

「まさか」

スミスは、皮肉な笑みを浮かべる。

「ナツは死んだかもしれないが、体内のバギュームは生きている」
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