空を飛ぶ少女、引きこもりの少年、破壊を求めるおとこ

ルサルカ

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第65話「アンクル・サムの考えること」【リディア】

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わたしたちの乗ったヘリは、湾岸部へと戻る。

殺風景であった湾岸の風景は、一変していた。

驚くべきことに、10式戦車が12両揃って海に向かい44口径120mm滑腔砲を向けている。

鋼鉄の獣が、獰猛かつ冷徹な姿を昼間の日差しに晒している姿は壮観だった。

「大したものだ」

わたしは、呟いていた。

「この島国の軍隊が、こんなにはやく行動を起こせるとはな」

スミスは、憮然として肩を竦める。

「この国に、軍隊はないんだよ」

わたしは、苦笑する。

「ああ、なんといったか、国防隊だったかな。議会の承認が無いと動かないんだろ」

「ステーツが動いて、超法規的措置を発動させたと思うが。ただ、戦車なんざたとえ100個中隊揃えても無意味だ」

わたしは、スミスの言葉に頷く。

「まあそうだろうけど、本命はあちらなんだろうな」

わたしは、ミサイル・キャニスターを装備したトレーラートラックのほうに目を向ける。

キャニスターには、地対艦ミサイル、多分12式地対艦誘導弾が積まれているはずだ。

戦車の徹甲弾よりは、地対艦ミサイルのほうが役に立つかもしれない。

ミサイル・キャニスターを装備したトレーラーは4両配置されている。

24発の対艦ミサイルを、用意したというわけだ。

これはもう、戦争といっていいだろう。

地上には、その他に96式装輪装甲車や歩兵が並んでおり、装甲連隊規模であると思える。

いくらわたしたちのヘリが光学迷彩とステルス装甲で姿を隠しているとはいえ、地上の部隊は当然わたしたちに気がついているに違いない。

けれど、こちらに対して全くアクションをとろうとする様子は無かった。

それどころではない、ということなんだろう。

あるいは、スミスのやつは抜け目なく敵味方識別装置に対して応答信号を返すよう、ヘリに細工しておいたのかもしれない。

なんにしてもわたしたちは放置されていたため、上空から高みの見物をすることにした。

装甲連隊から少し離れたところで、ホバリングする。

機首を、東京湾のほうへと向けた。

海は、狂った怪物のように不穏な気配を漂わせている。

無数のリヴァイサンが海底で荒れ狂っているように、黒いうねりが海面を支配していた。

その海中に血管が走っているかのごとく、時折真紅の稲妻が迸っている。

黒竜式は、既に海岸近くまで来ているようだ。

おそらくその数は、百一体。

たかが24発のミサイルでは、足を止めることもできそうにない。

わたしは、ため息をついた。

「これじゃあ威力偵察としても役不足に見えるけれど、もしかして生贄なのか? 戦術核を使うための口実を得たいんじゃないかな、ステーツは」

スミスは、邪悪な笑みを浮かべてみせる。

「アンクル・サムのこの島国に対する扱いは、そんなとこだよ」


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