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第66話「本物のラグナロクを迎えている」【リディア】
しおりを挟むわたしは、ため息をつく。
ひどい話ではあるが、しかし世界が終わろうとしているのだ。
ある意味、世界の終末は全てのひとびとに対して平等なものといえる。
生贄にされる兵士も、彼らを死地においやる官僚たちも、等しく太陽爆弾の焔にのみ込まれるのだ。
そして程なくこのわたしや、スミスも同じ運命を辿る。
わたしたちは、本物のラグナロクを迎えているわけだ。
誰かに同情したり、非難したりする必要は全くないように思えた。
世界の終わりに相応しく、東京湾は凶悪に波打っている。
それは、暴風雨がもたらすものや、津波によるものとは違い、生命の存在を感じさせる脈動感があった。
その生き物となった黒い海が一際大きく波打つと、その波が崩れ落ちていく中から漆黒の怪物たちが姿を表す。
酸化黒鉄を纏ったゴジラサウルスたちが、海の中から出現した。
黒い巨大な壁となった怪物たちは、生きる津波となって上陸していく。
その身体を、時折真紅の稲妻が包む。
ゴジラサウルスたちの体内で、バギュームを触媒とした核融合反応が暴走しつつある。
既に太陽爆弾となる臨界点を越えているのかは、わたしに判断をつけることはできない。
けれど、その崇高ともいえる怪物達の姿は、世界を終わらせるものに相応しい荘厳さを感じさせた。
横に並んだ10式戦車が、44口径120mm滑腔砲を一斉に発射する。
先頭を歩む、五頭のゴジラサウルスが紅蓮の焔に包まれた。
地獄の火焔に包まれた黒竜がごとき姿になったゴジラサウルスたちは、一瞬立ち止まったかのようにも見える。
しかし、それは単なる気のせいだと思えた。
先頭を進む十頭ほどに増えたゴジラサウルスたちは歩みを止めることなく、一斉に咆哮をあげる。
世界の終末を、讃える歌だ。
それは地を揺るがし、ひとのこころを微塵に砕く。
死の大天使が吹き鳴らす喇叭のような声で、怪物たちは叫び続ける。
そして、津波が変形し怪物となっていくように、続々とゴジラサウルスは上陸してきた。
瞬く間に数十頭のゴジラサウルスに、その湾岸部は蹂躙されている。
怪物たちの咆哮に押される形で、10式戦車は後退をはじめた。
戦車の砲撃は、怪物たちの表面を焔に包むだけで、酸化黒鉄に包まれた装甲を破ることはできない。
水深一万メートルの水圧に、耐えて生きてきた怪物たちの装甲である。
徹甲弾くらいで貫くことは、適わないようだ。
そして、4台のトレーラートラックが積むミサイル・キャニスターが動き、ゴジラサウルスに照準を合わせる。
4発の12式地対艦誘導弾が、一斉に放たれた。
地獄が溢れ出たかのような轟音と、黒煙につつまれた焔が、湧き上がる。
一瞬、真紅のベールがゴジラサウルスたちの姿を覆って、見えなくした。
しかし、それはほんの一瞬のことである。
漆黒の津波と化した怪物たちは、異形の音楽とも思える咆哮をあげながら、大地を進む。
その全身を包む真紅の稲妻は、さらに激しさを増していた。
地上は、既に溢れんばかりのゴジラサウルスの上陸を許している。
怪物たちは、ミサイルの攻撃にも全く影響を受けずに進んでいく。
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