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第三話
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青い瞳の少女が目覚めた時、そこは赤い夕陽を受けて真紅に染まる海の波打ち際であった。
黄金に輝く日差しを掲げながら西の空を燃え上がるように赤く染めた夕陽は、命の流出のようだとも思える。
青い瞳の少女は、姉を探しあたりを見回した。
彼女は、はっと息を呑む。
波打ち際に真紅の瞳をした少女が横たわっていたが、形を成しているのは上半身だけで下半身は無数の花びらと化している。
そしてその白い百合の花びらは、波によって少しずつ海へと呑み込まれていた。
「お姉さま」
彼女は、赤い瞳の少女に駆け寄る。
赤い瞳の少女はどこか寂しげではあるが、それでも透き通った笑顔を彼女に向けた。
「ああ、妹よ。どうやらわたしはここでお別れになるようだ」
彼女は赤い瞳の少女の側に膝をつくと、ほろほろと涙を流し赤い瞳の少女の頬を濡らす。
赤い瞳の少女は、そっと息をつく。
「ああ、泣かないでおくれ、妹よ。ここで終わりなのではないよ、わたしたちの輪はまだ続く。すぐに会えるよ、もうすぐに」
赤い瞳の少女はそう言い終えると、彼女のほうへ手を伸ばす。
白い手が、そっと彼女の涙で濡れた頬に触れる。
「さあ、妹よ。わたしに、口づけをしておくれ」
彼女は身を屈め、赤い瞳の少女に口づけをする。
その唇は冷たかったが、それでも甘やかな香りと陶酔をもたらすような感触が彼女に伝わった。
そのとき、赤い瞳の少女はふわっと白い霞につつまれたようになる。
そしてその全身は白い百合の花びらとなり、赤く染まった海へと崩れ落ちていった。
最後に瞳の真紅が二筋の涙となって、赤い海へと沈んでゆく。
白い花びらは、赤い海に溶けるように流されていった。
全てが流れた後に残ったのは一振りの刀、白百合丸である。
彼女は海の中から白百合丸を拾い上げると、波打ち際をゆっくりと歩き出す。
西の空は荘厳な交響楽を思わす黄金色に染まり、天頂は宇宙に届くかのような深い藍に包まれ、東の空は黒いビロードのような闇に閉ざされてゆく。
そのビロードの隙間から静々と真白く輝く月が姿を現し、夜の空を渡る船のように天頂を目指した。
いつしか彼女は、夜の海を歩いている。
夜空には白く気品のある裸体をさらす月が君臨し、波しぶきを銀色に輝かす。
やがて銀色の縞を輝かす海の向こうに、彼女は大きな黒い影を見出した。
それは、浜辺に打ち上げられた大きな廃船である。
巨大なリヴァイアサンの死体であるかのような廃船には、甲板へと続く階段が刻まれていた。
月明かりに照らされ、骨のように白く輝く階段のステップを彼女は踏みしめ、甲板にあがる。
船内へと続く階段を降ると、ひとつの部屋にたどり着いた。
窓から月明かりが差し込むその部屋で、彼女はランタンに明かりを灯す。
かつては客室であったのか、そこには天蓋付きのベッドが置かれている。
彼女はそのベッドに横たわると、夢の世界へと沈んでいった。
❖
翌日、部屋に差し込む朝日と共に目覚めた彼女は船内を探索する。
いたるところに白骨化した死体が並ぶ船体は、まるで霊廟のように静謐で闇に満たされていた。
彼女はランタンを手に、船の下層へと下ってゆく。
そこには水のつまった樽があり、保存食に満たされた倉庫があった。
幾日かは、この船で過ごすことが出来そうだと思う。
彼女は、キャンバス地の布を見つけるとそれで白百合丸を覆った。
布で覆った刀を手に、彼女は古の神殿が廃墟と化したかのような船内を放浪する。
彼女はいくつかの地図を見つけると満足し、部屋へと戻った。
部屋には書架があり無数の本が、納められている。
彼女は、それらの本を夜が訪れるまでひたすらに読みふけった。
彼女は夜の訪れとともに、再び夢の世界へと沈む。
黄金に輝く日差しを掲げながら西の空を燃え上がるように赤く染めた夕陽は、命の流出のようだとも思える。
青い瞳の少女は、姉を探しあたりを見回した。
彼女は、はっと息を呑む。
波打ち際に真紅の瞳をした少女が横たわっていたが、形を成しているのは上半身だけで下半身は無数の花びらと化している。
そしてその白い百合の花びらは、波によって少しずつ海へと呑み込まれていた。
「お姉さま」
彼女は、赤い瞳の少女に駆け寄る。
赤い瞳の少女はどこか寂しげではあるが、それでも透き通った笑顔を彼女に向けた。
「ああ、妹よ。どうやらわたしはここでお別れになるようだ」
彼女は赤い瞳の少女の側に膝をつくと、ほろほろと涙を流し赤い瞳の少女の頬を濡らす。
赤い瞳の少女は、そっと息をつく。
「ああ、泣かないでおくれ、妹よ。ここで終わりなのではないよ、わたしたちの輪はまだ続く。すぐに会えるよ、もうすぐに」
赤い瞳の少女はそう言い終えると、彼女のほうへ手を伸ばす。
白い手が、そっと彼女の涙で濡れた頬に触れる。
「さあ、妹よ。わたしに、口づけをしておくれ」
彼女は身を屈め、赤い瞳の少女に口づけをする。
その唇は冷たかったが、それでも甘やかな香りと陶酔をもたらすような感触が彼女に伝わった。
そのとき、赤い瞳の少女はふわっと白い霞につつまれたようになる。
そしてその全身は白い百合の花びらとなり、赤く染まった海へと崩れ落ちていった。
最後に瞳の真紅が二筋の涙となって、赤い海へと沈んでゆく。
白い花びらは、赤い海に溶けるように流されていった。
全てが流れた後に残ったのは一振りの刀、白百合丸である。
彼女は海の中から白百合丸を拾い上げると、波打ち際をゆっくりと歩き出す。
西の空は荘厳な交響楽を思わす黄金色に染まり、天頂は宇宙に届くかのような深い藍に包まれ、東の空は黒いビロードのような闇に閉ざされてゆく。
そのビロードの隙間から静々と真白く輝く月が姿を現し、夜の空を渡る船のように天頂を目指した。
いつしか彼女は、夜の海を歩いている。
夜空には白く気品のある裸体をさらす月が君臨し、波しぶきを銀色に輝かす。
やがて銀色の縞を輝かす海の向こうに、彼女は大きな黒い影を見出した。
それは、浜辺に打ち上げられた大きな廃船である。
巨大なリヴァイアサンの死体であるかのような廃船には、甲板へと続く階段が刻まれていた。
月明かりに照らされ、骨のように白く輝く階段のステップを彼女は踏みしめ、甲板にあがる。
船内へと続く階段を降ると、ひとつの部屋にたどり着いた。
窓から月明かりが差し込むその部屋で、彼女はランタンに明かりを灯す。
かつては客室であったのか、そこには天蓋付きのベッドが置かれている。
彼女はそのベッドに横たわると、夢の世界へと沈んでいった。
❖
翌日、部屋に差し込む朝日と共に目覚めた彼女は船内を探索する。
いたるところに白骨化した死体が並ぶ船体は、まるで霊廟のように静謐で闇に満たされていた。
彼女はランタンを手に、船の下層へと下ってゆく。
そこには水のつまった樽があり、保存食に満たされた倉庫があった。
幾日かは、この船で過ごすことが出来そうだと思う。
彼女は、キャンバス地の布を見つけるとそれで白百合丸を覆った。
布で覆った刀を手に、彼女は古の神殿が廃墟と化したかのような船内を放浪する。
彼女はいくつかの地図を見つけると満足し、部屋へと戻った。
部屋には書架があり無数の本が、納められている。
彼女は、それらの本を夜が訪れるまでひたすらに読みふけった。
彼女は夜の訪れとともに、再び夢の世界へと沈む。
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