5 / 9
第五話
しおりを挟む
彼女は、客室のベッドで意識を取り戻す。
そして自分が抱いているものを見た瞬間、あっと声をあげて驚く。
彼女は、幼子を腕に抱いていた。
幼子は微睡みながら、そっと眼を開く。
そこに現れた瞳は、青灰色をしている。
雲に覆われた真冬の空が、雲の切れ目から覗かせるような青であった。
彼女はえも言われぬ愛おしさを感じ、幼子を抱きしめる。
幼子は幸せそうに微笑むと、こうささやいた。
「お姉さま」
彼女は幼子に頷きかけ、その頭を撫でる。
幼子は満足げに頷くと、夢の世界へと戻っていった。
幼子はほんの数日で、少女へと成長を遂げる。
成長に伴い瞳の青さは濃くなってゆき、いつしかサファイアのような輝きを宿すようになっていた。
青い瞳の少女は、成長すると様々な問いを彼女に発するようになる。
「ここは、一体どのような場所なのでしょう、お姉さま」
「ここは、理からはずれた場所であったのだよ、妹よ」
「であったということは、今は違うのでしょうか」
「そのとおりだよ。わたしたちは自らを贄にして滅びゆく世界から抜け出し、ここへ来た。けれども世界の理はわたしたちを追いかけてこの世界に到達しつつある。やがてここも、理に支配されるだろうよ」
「理に支配されると、どうなるのでしょうか? お姉さま」
「滅びが再び始まるのさ、妹よ」
かくして、彼女は青い瞳の少女を伴い廃船を離れ旅にでることとする。
彼女は、船の中で見つけた幾つかの地図を持っていた。
彼女はその地図を頼りに、荒野を渡り街を目指す。
彼女と青い瞳の少女は、街にたどり着いた。
その街は迷路のようになっており、しかも常に形を変えてゆくようだ。
彼女は一度通り過ぎると、二度と同じ通りに戻ることはできないと知る。
そして、街の住人たちも普通のひとではないようだ。
その姿は影に包まれ朧であり、幽鬼のようでもある。
「お姉さま、ここは奇妙な街ですね」
彼女は青い瞳の少女の言葉に頷く。
「そのとおりだ、妹よ。まだ理はこの世界に追いついていない。街とは理により形成されるものだからね。理が支配を終えなければ、街も迷路から脱することがない」
青い瞳の少女は、首を傾げる。
「それは、わたしたちも目的とするところにたどり着けないということでしょうか?」
彼女はそっと笑うと、首を振る。
「わたしたちは、ほれ、このように地図を持っているからね、妹よ。この地図に従えば目的地にたどり着ける」
その地図も、奇妙な地図であった。
まるで、複雑な文様が幾重にも重ねて描かれているようである。
けれど、彼女らが進むべき道は赤い線となって地図上に現れた。
いかに街が姿を変えようとも、地図はその変化に応じて進むべき道を示しなおす。
そして自分が抱いているものを見た瞬間、あっと声をあげて驚く。
彼女は、幼子を腕に抱いていた。
幼子は微睡みながら、そっと眼を開く。
そこに現れた瞳は、青灰色をしている。
雲に覆われた真冬の空が、雲の切れ目から覗かせるような青であった。
彼女はえも言われぬ愛おしさを感じ、幼子を抱きしめる。
幼子は幸せそうに微笑むと、こうささやいた。
「お姉さま」
彼女は幼子に頷きかけ、その頭を撫でる。
幼子は満足げに頷くと、夢の世界へと戻っていった。
幼子はほんの数日で、少女へと成長を遂げる。
成長に伴い瞳の青さは濃くなってゆき、いつしかサファイアのような輝きを宿すようになっていた。
青い瞳の少女は、成長すると様々な問いを彼女に発するようになる。
「ここは、一体どのような場所なのでしょう、お姉さま」
「ここは、理からはずれた場所であったのだよ、妹よ」
「であったということは、今は違うのでしょうか」
「そのとおりだよ。わたしたちは自らを贄にして滅びゆく世界から抜け出し、ここへ来た。けれども世界の理はわたしたちを追いかけてこの世界に到達しつつある。やがてここも、理に支配されるだろうよ」
「理に支配されると、どうなるのでしょうか? お姉さま」
「滅びが再び始まるのさ、妹よ」
かくして、彼女は青い瞳の少女を伴い廃船を離れ旅にでることとする。
彼女は、船の中で見つけた幾つかの地図を持っていた。
彼女はその地図を頼りに、荒野を渡り街を目指す。
彼女と青い瞳の少女は、街にたどり着いた。
その街は迷路のようになっており、しかも常に形を変えてゆくようだ。
彼女は一度通り過ぎると、二度と同じ通りに戻ることはできないと知る。
そして、街の住人たちも普通のひとではないようだ。
その姿は影に包まれ朧であり、幽鬼のようでもある。
「お姉さま、ここは奇妙な街ですね」
彼女は青い瞳の少女の言葉に頷く。
「そのとおりだ、妹よ。まだ理はこの世界に追いついていない。街とは理により形成されるものだからね。理が支配を終えなければ、街も迷路から脱することがない」
青い瞳の少女は、首を傾げる。
「それは、わたしたちも目的とするところにたどり着けないということでしょうか?」
彼女はそっと笑うと、首を振る。
「わたしたちは、ほれ、このように地図を持っているからね、妹よ。この地図に従えば目的地にたどり着ける」
その地図も、奇妙な地図であった。
まるで、複雑な文様が幾重にも重ねて描かれているようである。
けれど、彼女らが進むべき道は赤い線となって地図上に現れた。
いかに街が姿を変えようとも、地図はその変化に応じて進むべき道を示しなおす。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
久しぶりに帰省したら私のことが大好きな従妹と姫はじめしちゃった件
楠富 つかさ
恋愛
久しぶりに帰省したら私のことが大好きな従妹と姫はじめしちゃうし、なんなら恋人にもなるし、果てには彼女のために職場まで変える。まぁ、愛の力って偉大だよね。
※この物語はフィクションであり実在の地名は登場しますが、人物・団体とは関係ありません。
17歳男子高生と32歳主婦の境界線
MisakiNonagase
恋愛
32歳主婦のカレンはインスタグラムで20歳大学生の晴人と知り合う。親密な関係となった3度目のデートのときに、晴人が実は17歳の高校2年生だと知る。
カレンと晴人はその後、どうなる?
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる