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第二話
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私は、教授に向き直る。
「その設定資料は一回目のセッションのものだ。セッションは全部で20回ある。前に話した通り週一回2時間づつそれをやっていくのだけれど、何か事情ができてやめたくなれば、いつでもやめていい。資料は毎回そのセッションの分を直前に渡すようにする。事前にざっと目を通してもらい、そのセッションの雰囲気さえつかんでもらえばいい。君のアドリブの内容によっては、次回以降のセッションの設定を変えるかもしれない」
私は頷く。
「で、場所はここでやるのですか」
「いや、実際のカウンセリングルームではないけれど、それ用の部屋を用意してある。普通は会議室に使ったりする小スペースだよ。それと、スーパーバイザーは私が行う」
「スーパーバイザーですか?」
私の怪訝な顔に、教授は笑みで答えた。
「ああ、すまん。臨床の実習は知らなかったんだな。ロールプレイの現場に私も立ち会うということだ。私がロールプレイ中に口出しをすることは無い。置物とでも思っていてくれればいいさ。では、さっそく準備にかかってもらっていいかな」
私は頷くと、レジュメを読み出す。ロールプレイの中で私は、Lという仮名を与えられた女性になるようだ。カウンセラーの仮名はKとなっている。
「ええっと、藤崎さん」
水戸さんが、声をかけてきた。
「なんでしょう」
「ロールプレイに入る前に、役の上でのあなたでは無い、本当のあなたのことを少し聞きたいのですけど」
「ああ、そうですね」
「とりあえず、僕のほうから自己紹介しときますけど、心理学部で臨床心理を専攻してます。大学院に入ってから教授のカウンセリング研究会に参加するようになりました。年齢は27歳、独身です」
私は少し関心して水戸を見直す。
「ああ、そうなんですか。私と同い年か年下かと思ってしまいました」
「はい、よくいわれます」
私は、少し微笑んで頷く。
「それでは私の自己紹介の番ね。私の名前は藤崎かおり。心理学部にいましたけど、あまり真面目な学生ではありませんでした。教授とは絵の趣味が合ったので、仲良くしてもらってますけど。職業は一応イラストレイターです。あまり本業の仕事は無くて、色んなアルバイトをしてます。半年前に離婚したので、今は独身です」
「へえ、そうなんですか」
水戸さんは、少し目を丸くする。
「こんなこと聞いていいものか判らないので、答えたくなかったら無視してもらえばいいけど、お子さんはいるの?」
「ええいます。離婚の原因は、早く子供をつくったことにあると思います。今にしてみれば多分、夫婦二人きりでもっとよくお互いの関係を成熟させてから子供をつくればよかったと思うの」
「うーん、じゃあ仕事は大変だね。お子さんの世話しながらじゃあ」
「今、子供は私の母に預けています。仕事が軌道にのるまで子供とは別れて暮らすつもりです」
水戸さんは、ため息をついた。
「大変だなぁ。でも、ご両親が健在なら安心かな」
「両親という意味では、健在とはいえないかな。父は行方不明なので」
水戸さんは、絶句する。
「そりゃあ大変だなあ。余計なこと聞いちゃったね」
私は、少し微笑む。
「いえ、いいんですよ。父は作家なんですけど、元々放浪癖があってよくいなくなったから、私は、母だけに育てられたようなものなんです。ねぇ、自己紹介は終わりでいいかしら。私のカウンセリングをするわけじゃないんでしょう」
水戸は、はははと笑う。
「いや、ごめん。資料に集中して下さい」
「その設定資料は一回目のセッションのものだ。セッションは全部で20回ある。前に話した通り週一回2時間づつそれをやっていくのだけれど、何か事情ができてやめたくなれば、いつでもやめていい。資料は毎回そのセッションの分を直前に渡すようにする。事前にざっと目を通してもらい、そのセッションの雰囲気さえつかんでもらえばいい。君のアドリブの内容によっては、次回以降のセッションの設定を変えるかもしれない」
私は頷く。
「で、場所はここでやるのですか」
「いや、実際のカウンセリングルームではないけれど、それ用の部屋を用意してある。普通は会議室に使ったりする小スペースだよ。それと、スーパーバイザーは私が行う」
「スーパーバイザーですか?」
私の怪訝な顔に、教授は笑みで答えた。
「ああ、すまん。臨床の実習は知らなかったんだな。ロールプレイの現場に私も立ち会うということだ。私がロールプレイ中に口出しをすることは無い。置物とでも思っていてくれればいいさ。では、さっそく準備にかかってもらっていいかな」
私は頷くと、レジュメを読み出す。ロールプレイの中で私は、Lという仮名を与えられた女性になるようだ。カウンセラーの仮名はKとなっている。
「ええっと、藤崎さん」
水戸さんが、声をかけてきた。
「なんでしょう」
「ロールプレイに入る前に、役の上でのあなたでは無い、本当のあなたのことを少し聞きたいのですけど」
「ああ、そうですね」
「とりあえず、僕のほうから自己紹介しときますけど、心理学部で臨床心理を専攻してます。大学院に入ってから教授のカウンセリング研究会に参加するようになりました。年齢は27歳、独身です」
私は少し関心して水戸を見直す。
「ああ、そうなんですか。私と同い年か年下かと思ってしまいました」
「はい、よくいわれます」
私は、少し微笑んで頷く。
「それでは私の自己紹介の番ね。私の名前は藤崎かおり。心理学部にいましたけど、あまり真面目な学生ではありませんでした。教授とは絵の趣味が合ったので、仲良くしてもらってますけど。職業は一応イラストレイターです。あまり本業の仕事は無くて、色んなアルバイトをしてます。半年前に離婚したので、今は独身です」
「へえ、そうなんですか」
水戸さんは、少し目を丸くする。
「こんなこと聞いていいものか判らないので、答えたくなかったら無視してもらえばいいけど、お子さんはいるの?」
「ええいます。離婚の原因は、早く子供をつくったことにあると思います。今にしてみれば多分、夫婦二人きりでもっとよくお互いの関係を成熟させてから子供をつくればよかったと思うの」
「うーん、じゃあ仕事は大変だね。お子さんの世話しながらじゃあ」
「今、子供は私の母に預けています。仕事が軌道にのるまで子供とは別れて暮らすつもりです」
水戸さんは、ため息をついた。
「大変だなぁ。でも、ご両親が健在なら安心かな」
「両親という意味では、健在とはいえないかな。父は行方不明なので」
水戸さんは、絶句する。
「そりゃあ大変だなあ。余計なこと聞いちゃったね」
私は、少し微笑む。
「いえ、いいんですよ。父は作家なんですけど、元々放浪癖があってよくいなくなったから、私は、母だけに育てられたようなものなんです。ねぇ、自己紹介は終わりでいいかしら。私のカウンセリングをするわけじゃないんでしょう」
水戸は、はははと笑う。
「いや、ごめん。資料に集中して下さい」
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