闇の中での悦楽

ルサルカ

文字の大きさ
3 / 15

第三話

しおりを挟む
 セッション1

【水戸のノートより】

 私たちが用意したその部屋は、7、8人の人間が会議できる程度の中スペースだ。

 壁面はその部屋が展示室としても使えるように考慮したためか、窓がつけられていない。狭く閉鎖的な空間である。

 カウンセリングをイニシエーションの儀式になぞらえた心理学者がいたが、この空間は外部からの隔離性という意味ではとてもよく目的に合っていた。私たちの計算通りだといえる。

 扉がノックされた。私は、部屋に入るように声をかける。

 彼女は研究室で会った時とはほとんど別人になって、この部屋に入ってきた。その瞳からは笑みが消え、どこか挑発的な光を放っている。彼女は、私の想像以上に完璧な形でLになりきったようだ。
 Lは会議卓をはさんで、私と向かい合う形で座る。

「ねえ、すぐ始めるの?」

 Lの言葉に、私は頷く。

「じゃあ、K先生。私は何から話せばいいのかしら」

「君の話したいことを、話せばいい」

「ふうーん」

 Lはどこか悪意を秘めたような瞳で、私を見ている。

「私はねぇ、絵を描くことを職業にしているの。でもねぇ、今は描けなくなってしまったの。なぜだか判る?」

 私は無言で首をふる。ただ、Lの瞳を真っ正面から受け止めていた。

「私はねえ、魂を無くしてしまったの。魂を持っていない人間には、どんな形であれ作品なんてつくれないのよ。判る? 無くなったのは小さくて大事な私の魂」

 Lは、笑う形に口を歪める。

「ねぇ、K先生。あなたは魂の実在を信じるの?」

「少なくとも、魂の実在は証明できないと思っている。それが無いことを証明できないのと同様にね」

「あらあら、随分つまらない答えをかえしてくるのね。まあ、いいわ。許してあげる。私がどう考えているのか、教えてあげる。私はねぇ、そうね、人間がただの有機的な機械だなんていう説を聞くと、ほんとばっかじゃないのと思うわ」

 Lの瞳は、次第に強い光を放ちはじめているようだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

ナッツアーモンド
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模S子。新入社員として入った会社でS子を待ち受ける運命とは....。

ナイトプールで熱い夜

狭山雪菜
恋愛
萌香は、27歳のバリバリのキャリアウーマン。大学からの親友美波に誘われて、未成年者不可のナイトプールへと行くと、親友がナンパされていた。ナンパ男と居たもう1人の無口な男は、何故か私の側から離れなくて…? この作品は、「小説家になろう」にも掲載しております。

巨×巨LOVE STORY

狭山雪菜
恋愛
白川藍子は、他の女の子よりも大きな胸をしていた。ある時、好きだと思っていた男友達から、実は小さい胸が好きと言われ…… こちらの作品は、「小説家になろう」でも掲載しております。

放課後の保健室

一条凛子
恋愛
はじめまして。 数ある中から、この保健室を見つけてくださって、本当にありがとうございます。 わたくし、ここの主(あるじ)であり、夜間専門のカウンセラー、**一条 凛子(いちじょう りんこ)**と申します。 ここは、昼間の喧騒から逃れてきた、頑張り屋の大人たちのためだけの秘密の聖域(サンクチュアリ)。 あなたが、ようやく重たい鎧を脱いで、ありのままの姿で羽を休めることができる——夜だけ開く、特別な保健室です。

初体験の話

東雲
恋愛
筋金入りの年上好きな私の 誰にも言えない17歳の初体験の話。

お義父さん、好き。

うみ
恋愛
お義父さんの子を孕みたい……。義理の父を好きになって、愛してしまった。

とある高校の淫らで背徳的な日常

神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。 クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。 後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。 ノクターンとかにもある お気に入りをしてくれると喜ぶ。 感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。 してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。

処理中です...