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第三話
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セッション1
【水戸のノートより】
私たちが用意したその部屋は、7、8人の人間が会議できる程度の中スペースだ。
壁面はその部屋が展示室としても使えるように考慮したためか、窓がつけられていない。狭く閉鎖的な空間である。
カウンセリングをイニシエーションの儀式になぞらえた心理学者がいたが、この空間は外部からの隔離性という意味ではとてもよく目的に合っていた。私たちの計算通りだといえる。
扉がノックされた。私は、部屋に入るように声をかける。
彼女は研究室で会った時とはほとんど別人になって、この部屋に入ってきた。その瞳からは笑みが消え、どこか挑発的な光を放っている。彼女は、私の想像以上に完璧な形でLになりきったようだ。
Lは会議卓をはさんで、私と向かい合う形で座る。
「ねえ、すぐ始めるの?」
Lの言葉に、私は頷く。
「じゃあ、K先生。私は何から話せばいいのかしら」
「君の話したいことを、話せばいい」
「ふうーん」
Lはどこか悪意を秘めたような瞳で、私を見ている。
「私はねぇ、絵を描くことを職業にしているの。でもねぇ、今は描けなくなってしまったの。なぜだか判る?」
私は無言で首をふる。ただ、Lの瞳を真っ正面から受け止めていた。
「私はねえ、魂を無くしてしまったの。魂を持っていない人間には、どんな形であれ作品なんてつくれないのよ。判る? 無くなったのは小さくて大事な私の魂」
Lは、笑う形に口を歪める。
「ねぇ、K先生。あなたは魂の実在を信じるの?」
「少なくとも、魂の実在は証明できないと思っている。それが無いことを証明できないのと同様にね」
「あらあら、随分つまらない答えをかえしてくるのね。まあ、いいわ。許してあげる。私がどう考えているのか、教えてあげる。私はねぇ、そうね、人間がただの有機的な機械だなんていう説を聞くと、ほんとばっかじゃないのと思うわ」
Lの瞳は、次第に強い光を放ちはじめているようだ。
【水戸のノートより】
私たちが用意したその部屋は、7、8人の人間が会議できる程度の中スペースだ。
壁面はその部屋が展示室としても使えるように考慮したためか、窓がつけられていない。狭く閉鎖的な空間である。
カウンセリングをイニシエーションの儀式になぞらえた心理学者がいたが、この空間は外部からの隔離性という意味ではとてもよく目的に合っていた。私たちの計算通りだといえる。
扉がノックされた。私は、部屋に入るように声をかける。
彼女は研究室で会った時とはほとんど別人になって、この部屋に入ってきた。その瞳からは笑みが消え、どこか挑発的な光を放っている。彼女は、私の想像以上に完璧な形でLになりきったようだ。
Lは会議卓をはさんで、私と向かい合う形で座る。
「ねえ、すぐ始めるの?」
Lの言葉に、私は頷く。
「じゃあ、K先生。私は何から話せばいいのかしら」
「君の話したいことを、話せばいい」
「ふうーん」
Lはどこか悪意を秘めたような瞳で、私を見ている。
「私はねぇ、絵を描くことを職業にしているの。でもねぇ、今は描けなくなってしまったの。なぜだか判る?」
私は無言で首をふる。ただ、Lの瞳を真っ正面から受け止めていた。
「私はねえ、魂を無くしてしまったの。魂を持っていない人間には、どんな形であれ作品なんてつくれないのよ。判る? 無くなったのは小さくて大事な私の魂」
Lは、笑う形に口を歪める。
「ねぇ、K先生。あなたは魂の実在を信じるの?」
「少なくとも、魂の実在は証明できないと思っている。それが無いことを証明できないのと同様にね」
「あらあら、随分つまらない答えをかえしてくるのね。まあ、いいわ。許してあげる。私がどう考えているのか、教えてあげる。私はねぇ、そうね、人間がただの有機的な機械だなんていう説を聞くと、ほんとばっかじゃないのと思うわ」
Lの瞳は、次第に強い光を放ちはじめているようだ。
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