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第十一話
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セッション3
【水戸のノートより】
今回のLはとても物憂げだった。いつもの刺すような瞳ではなく、何か投げやりな目を私に投げかける。私たちは、暫く話しをせず向かいあったままだった。
「ねぇ、今日は何を話すの」
Lのポツリといった言葉に、私が応える。
「何でもいいよ。君の話したいことを話せばいい」
「そおねぇ」
Lは視線をそらし、暫く考える。唐突に、Lは私のほうを見る。
「じゃあ、今日は夢の話にしようか」
私は頷く。
「君の見た夢だね。話てみなさい」
「うーん。それはね。凄く高い塔の物語なの」
Lの話は時系列が錯綜し、ゆきつ戻りつしながら話をしたため、そのストーリーはとても判りにくかった。以下にその物語を要約して時系列に並べ直して書いてみる。
Lの語った高い塔の物語
『それはいつの時代ともしれぬ時。そして、どことも知れぬ場所。
その国ではもう何百年も塔の建設が行われていた。いったい誰が始めて、なんの為に建設されているのかは判らないが、その巨大な塔は天上へ向かい延々と築きあげられてゆく。
その塔は、ただ、建設されるためだけに存在しているといってもよかった。塔自体あまりに巨大になりすぎたため、誰ももうその全体像を把握しているものはいなかった。ただ、皆、自分に割り当てられた役割を行っているだけで、その全体を統括しているはずの存在を誰も知らなかった。
塔の巨大さは、その中にいてもその規模が判らないほどのものである。何キロも離れた遠い場所から塔を眺めたとしても、その先端はかろうじて朧気に見えるだけであり、天候によっては雲につつまれて見えない時もあった。塔の中に入り込むと、巨大な迷宮都市にいるようなものであり、自分が塔のどの部分にいるのかすぐに判らなくなってしまう。
塔はそれでも自分自身が意志を持っているかのように、天空を目指して成長していった。塔には何百万もの人間が住んでいたが、その全てが塔の建設に従事するものたちである。下層部は居住区域となっており、それ自体が巨大な国家を形成しているようなものだ。
私はその塔の再深部に住んでいた。どの位高いところに居たのかは判らないが、そこが塔の中心部であることは確かなようである。私は、全ての壁が黒く塗られた部屋にいた。決して光の差し込むことのないその部屋に、私は横たわっていた。私はその部屋から外へ、決して出ることは無い。
けれども、私はその塔でおこるできごとを把握することができた。あたかも、塔が私の精神とリンクしているかように、塔のあちこちで起こる出来事を私は認識している。
塔の崩壊は唐突に始まった。その始まりは、一艘の船が天上から降りてきたことである。その船は白く輝きながら天空を航海していた。白い羽を持つ天使たちが金色に輝く楽器を吹き鳴らしながら、その船を操っている。
船は煌びやかな音楽を奏で、塔の回りを旋回した。それは巨大な船であったが、塔と並ぶと、ごくちっぽけなものに見える。
その船を操る天使たちが奏でた音楽に反応したのは、子供たちであった。子供たちはその音楽を聞くと、空を飛べるようになる。空を飛ぶことを覚えた子供たちは、皆塔から離れ、船に向かっていった。
渡り鳥が飛び去ってゆくように、子供たちは群をなして船へ向かって飛んでゆく。子供たちが一人もいないくなるまで、一週間もかからなかった。何万もの子供が皆、船に乗せられ、天上へ上ってゆく。船は子供を乗せて空の彼方へ去った。
【水戸のノートより】
今回のLはとても物憂げだった。いつもの刺すような瞳ではなく、何か投げやりな目を私に投げかける。私たちは、暫く話しをせず向かいあったままだった。
「ねぇ、今日は何を話すの」
Lのポツリといった言葉に、私が応える。
「何でもいいよ。君の話したいことを話せばいい」
「そおねぇ」
Lは視線をそらし、暫く考える。唐突に、Lは私のほうを見る。
「じゃあ、今日は夢の話にしようか」
私は頷く。
「君の見た夢だね。話てみなさい」
「うーん。それはね。凄く高い塔の物語なの」
Lの話は時系列が錯綜し、ゆきつ戻りつしながら話をしたため、そのストーリーはとても判りにくかった。以下にその物語を要約して時系列に並べ直して書いてみる。
Lの語った高い塔の物語
『それはいつの時代ともしれぬ時。そして、どことも知れぬ場所。
その国ではもう何百年も塔の建設が行われていた。いったい誰が始めて、なんの為に建設されているのかは判らないが、その巨大な塔は天上へ向かい延々と築きあげられてゆく。
その塔は、ただ、建設されるためだけに存在しているといってもよかった。塔自体あまりに巨大になりすぎたため、誰ももうその全体像を把握しているものはいなかった。ただ、皆、自分に割り当てられた役割を行っているだけで、その全体を統括しているはずの存在を誰も知らなかった。
塔の巨大さは、その中にいてもその規模が判らないほどのものである。何キロも離れた遠い場所から塔を眺めたとしても、その先端はかろうじて朧気に見えるだけであり、天候によっては雲につつまれて見えない時もあった。塔の中に入り込むと、巨大な迷宮都市にいるようなものであり、自分が塔のどの部分にいるのかすぐに判らなくなってしまう。
塔はそれでも自分自身が意志を持っているかのように、天空を目指して成長していった。塔には何百万もの人間が住んでいたが、その全てが塔の建設に従事するものたちである。下層部は居住区域となっており、それ自体が巨大な国家を形成しているようなものだ。
私はその塔の再深部に住んでいた。どの位高いところに居たのかは判らないが、そこが塔の中心部であることは確かなようである。私は、全ての壁が黒く塗られた部屋にいた。決して光の差し込むことのないその部屋に、私は横たわっていた。私はその部屋から外へ、決して出ることは無い。
けれども、私はその塔でおこるできごとを把握することができた。あたかも、塔が私の精神とリンクしているかように、塔のあちこちで起こる出来事を私は認識している。
塔の崩壊は唐突に始まった。その始まりは、一艘の船が天上から降りてきたことである。その船は白く輝きながら天空を航海していた。白い羽を持つ天使たちが金色に輝く楽器を吹き鳴らしながら、その船を操っている。
船は煌びやかな音楽を奏で、塔の回りを旋回した。それは巨大な船であったが、塔と並ぶと、ごくちっぽけなものに見える。
その船を操る天使たちが奏でた音楽に反応したのは、子供たちであった。子供たちはその音楽を聞くと、空を飛べるようになる。空を飛ぶことを覚えた子供たちは、皆塔から離れ、船に向かっていった。
渡り鳥が飛び去ってゆくように、子供たちは群をなして船へ向かって飛んでゆく。子供たちが一人もいないくなるまで、一週間もかからなかった。何万もの子供が皆、船に乗せられ、天上へ上ってゆく。船は子供を乗せて空の彼方へ去った。
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