闇の中での悦楽

ルサルカ

文字の大きさ
11 / 15

第十一話

しおりを挟む
 セッション3

【水戸のノートより】

 今回のLはとても物憂げだった。いつもの刺すような瞳ではなく、何か投げやりな目を私に投げかける。私たちは、暫く話しをせず向かいあったままだった。

「ねぇ、今日は何を話すの」

 Lのポツリといった言葉に、私が応える。

「何でもいいよ。君の話したいことを話せばいい」

「そおねぇ」

 Lは視線をそらし、暫く考える。唐突に、Lは私のほうを見る。

「じゃあ、今日は夢の話にしようか」

 私は頷く。

「君の見た夢だね。話てみなさい」

「うーん。それはね。凄く高い塔の物語なの」

 Lの話は時系列が錯綜し、ゆきつ戻りつしながら話をしたため、そのストーリーはとても判りにくかった。以下にその物語を要約して時系列に並べ直して書いてみる。

Lの語った高い塔の物語

『それはいつの時代ともしれぬ時。そして、どことも知れぬ場所。
 その国ではもう何百年も塔の建設が行われていた。いったい誰が始めて、なんの為に建設されているのかは判らないが、その巨大な塔は天上へ向かい延々と築きあげられてゆく。
 その塔は、ただ、建設されるためだけに存在しているといってもよかった。塔自体あまりに巨大になりすぎたため、誰ももうその全体像を把握しているものはいなかった。ただ、皆、自分に割り当てられた役割を行っているだけで、その全体を統括しているはずの存在を誰も知らなかった。
 塔の巨大さは、その中にいてもその規模が判らないほどのものである。何キロも離れた遠い場所から塔を眺めたとしても、その先端はかろうじて朧気に見えるだけであり、天候によっては雲につつまれて見えない時もあった。塔の中に入り込むと、巨大な迷宮都市にいるようなものであり、自分が塔のどの部分にいるのかすぐに判らなくなってしまう。
 塔はそれでも自分自身が意志を持っているかのように、天空を目指して成長していった。塔には何百万もの人間が住んでいたが、その全てが塔の建設に従事するものたちである。下層部は居住区域となっており、それ自体が巨大な国家を形成しているようなものだ。
 私はその塔の再深部に住んでいた。どの位高いところに居たのかは判らないが、そこが塔の中心部であることは確かなようである。私は、全ての壁が黒く塗られた部屋にいた。決して光の差し込むことのないその部屋に、私は横たわっていた。私はその部屋から外へ、決して出ることは無い。
 けれども、私はその塔でおこるできごとを把握することができた。あたかも、塔が私の精神とリンクしているかように、塔のあちこちで起こる出来事を私は認識している。
 塔の崩壊は唐突に始まった。その始まりは、一艘の船が天上から降りてきたことである。その船は白く輝きながら天空を航海していた。白い羽を持つ天使たちが金色に輝く楽器を吹き鳴らしながら、その船を操っている。
 船は煌びやかな音楽を奏で、塔の回りを旋回した。それは巨大な船であったが、塔と並ぶと、ごくちっぽけなものに見える。
 その船を操る天使たちが奏でた音楽に反応したのは、子供たちであった。子供たちはその音楽を聞くと、空を飛べるようになる。空を飛ぶことを覚えた子供たちは、皆塔から離れ、船に向かっていった。
 渡り鳥が飛び去ってゆくように、子供たちは群をなして船へ向かって飛んでゆく。子供たちが一人もいないくなるまで、一週間もかからなかった。何万もの子供が皆、船に乗せられ、天上へ上ってゆく。船は子供を乗せて空の彼方へ去った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

ナッツアーモンド
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模S子。新入社員として入った会社でS子を待ち受ける運命とは....。

ナイトプールで熱い夜

狭山雪菜
恋愛
萌香は、27歳のバリバリのキャリアウーマン。大学からの親友美波に誘われて、未成年者不可のナイトプールへと行くと、親友がナンパされていた。ナンパ男と居たもう1人の無口な男は、何故か私の側から離れなくて…? この作品は、「小説家になろう」にも掲載しております。

巨×巨LOVE STORY

狭山雪菜
恋愛
白川藍子は、他の女の子よりも大きな胸をしていた。ある時、好きだと思っていた男友達から、実は小さい胸が好きと言われ…… こちらの作品は、「小説家になろう」でも掲載しております。

放課後の保健室

一条凛子
恋愛
はじめまして。 数ある中から、この保健室を見つけてくださって、本当にありがとうございます。 わたくし、ここの主(あるじ)であり、夜間専門のカウンセラー、**一条 凛子(いちじょう りんこ)**と申します。 ここは、昼間の喧騒から逃れてきた、頑張り屋の大人たちのためだけの秘密の聖域(サンクチュアリ)。 あなたが、ようやく重たい鎧を脱いで、ありのままの姿で羽を休めることができる——夜だけ開く、特別な保健室です。

初体験の話

東雲
恋愛
筋金入りの年上好きな私の 誰にも言えない17歳の初体験の話。

お義父さん、好き。

うみ
恋愛
お義父さんの子を孕みたい……。義理の父を好きになって、愛してしまった。

とある高校の淫らで背徳的な日常

神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。 クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。 後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。 ノクターンとかにもある お気に入りをしてくれると喜ぶ。 感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。 してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。

処理中です...