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第十四話
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【高松教授のノートより】
私が、精神科医の水戸氏から彼の病院にかつての私の教え子である藤崎かおりが入院しており、その治療を手伝ってほしいという依頼を受けた時、酷く戸惑いを感じた。
それは、水戸氏のやろうとしていること、つまり妄想を構築してその中に留まっている患者の妄想をうち破るために、現実をロールプレイとして患者に演じさせるという計画があまりに無謀と思えたからだけでは無い。確かに水戸氏のやったことは、結果としていい方向へ事態を向かわせることができたが、どういう結果を生むにしても常識を外れているのは間違いなかった。そんなことより、私が疑問を感じたのは、藤崎かおりが治る必要があるかということだった。
むろん、彼女は統合失調症的な妄想の中にいたのは間違いない。私が疑問に思っていたのは、彼女が妄想の中にいるのは妄想の中にいることによって精神を安定させることができるからであり、通常境界症例の患者は妄想によって苦しめられ死の危険に晒されるため妄想を取り除く必要があるが、もし、その妄想が精神の安定を保つものであれば取り去るのは危険な行為ではないかということだ。
しかし、水戸氏とディスカッションするうちに、彼の主張が正しいと感じることになる。妄想が危険な形で崩壊するのを防止するには、我々の提供したフィクションとしての現実の中で妄想から離脱したほうがいいだろうということだ。
本来、彼女の妄想を取り除くには、もっと時間を要するはずだった。しかし、ロールプレイ中のアクシデントに着想を得た水戸氏の作戦が成功し、私たちはより早い段階で彼女を妄想から離脱させることができた。
4回のロールプレイを経た後、彼女は水戸氏のカウンセリングを受け始めている。
症状が安定すれば、彼女は裁判を受けることになるかもしれない。何にしても彼女にとって現実は決して平穏なものではなく、危険に満ちたものであることは間違いなかった。次に彼女の幻想が噴出した時に、前のように彼女を安定させるものであるとは保証できない。いずれにせよ、彼女はもう、現実の中に足を踏み込んでしまった。
ロールプレイは予想以上に我々の意図した通りに展開していった。ただ、黒い本についてだけは、我々の想像外の出来事であった。その黒い本については、ロールプレイ後のカウンセリングの中で、彼女が水戸氏に語っている。
その部分を以下に記す。
私が、精神科医の水戸氏から彼の病院にかつての私の教え子である藤崎かおりが入院しており、その治療を手伝ってほしいという依頼を受けた時、酷く戸惑いを感じた。
それは、水戸氏のやろうとしていること、つまり妄想を構築してその中に留まっている患者の妄想をうち破るために、現実をロールプレイとして患者に演じさせるという計画があまりに無謀と思えたからだけでは無い。確かに水戸氏のやったことは、結果としていい方向へ事態を向かわせることができたが、どういう結果を生むにしても常識を外れているのは間違いなかった。そんなことより、私が疑問を感じたのは、藤崎かおりが治る必要があるかということだった。
むろん、彼女は統合失調症的な妄想の中にいたのは間違いない。私が疑問に思っていたのは、彼女が妄想の中にいるのは妄想の中にいることによって精神を安定させることができるからであり、通常境界症例の患者は妄想によって苦しめられ死の危険に晒されるため妄想を取り除く必要があるが、もし、その妄想が精神の安定を保つものであれば取り去るのは危険な行為ではないかということだ。
しかし、水戸氏とディスカッションするうちに、彼の主張が正しいと感じることになる。妄想が危険な形で崩壊するのを防止するには、我々の提供したフィクションとしての現実の中で妄想から離脱したほうがいいだろうということだ。
本来、彼女の妄想を取り除くには、もっと時間を要するはずだった。しかし、ロールプレイ中のアクシデントに着想を得た水戸氏の作戦が成功し、私たちはより早い段階で彼女を妄想から離脱させることができた。
4回のロールプレイを経た後、彼女は水戸氏のカウンセリングを受け始めている。
症状が安定すれば、彼女は裁判を受けることになるかもしれない。何にしても彼女にとって現実は決して平穏なものではなく、危険に満ちたものであることは間違いなかった。次に彼女の幻想が噴出した時に、前のように彼女を安定させるものであるとは保証できない。いずれにせよ、彼女はもう、現実の中に足を踏み込んでしまった。
ロールプレイは予想以上に我々の意図した通りに展開していった。ただ、黒い本についてだけは、我々の想像外の出来事であった。その黒い本については、ロールプレイ後のカウンセリングの中で、彼女が水戸氏に語っている。
その部分を以下に記す。
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