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5月
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「林間合宿の班決めろー」
ホームルームで先生にそう言われた瞬間、
教室のあちこちで声が上がる。
「璃恋、こっち来なよ」
陽奈が手を振る。
その隣には、晴翔と——爽太。
「もうこの4人でよくない?」
さらっと言う晴翔に誰も反対しなかった。
「じゃあ決定な」
爽太がそう言って笑う。
その何気ない一言に少しだけ胸が軽くなった。
当日。
バスに揺られて、
向かったのは森の近くの自然体験施設。
一泊二日で、
近くの旅館に泊まるらしい。
窓の外に広がる緑の景色に、
少しだけ気分が上がる。
「うわ、めっちゃ緑」
陽奈がはしゃいだ声を出す。
「テンション高」
晴翔が笑う。
そんなやり取りを聞きながら、
私は窓の外を眺めた。
気づけば、隣には爽太がいる。
それだけで、
少しだけ特別な気がした。
現地に着いてからは、
4人で自由に行動することになった。
木々の中を歩いたり、
落ち葉を踏みながら進んだり。
特別なことはしてないのに、
時間がやけに楽しく感じる。
「璃恋ってさ」
「なに」
「方向音痴っぽいよな」
「は?」
思わず睨む。
「ほら、こっちじゃね?」
そう言われて、
適当に歩いていたら——
「あれ、待って」
気づいた時には、
周りに誰もいなかった。
「やば、はぐれた?」
爽太が少し笑いながら言う。
「笑ってる場合じゃないでしょ」
でも、不思議と嫌じゃなかった。
風で葉が揺れる音だけが聞こえる中、
2人で歩く。
「まあ、いっか」
爽太がそう言って、
木の間の景色を見る。
「戻ればなんとかなるだろ」
その横顔を見て、
少しだけ安心する自分がいた。
「あのさ」
爽太がぽつりと呟く。
「一緒の班でよかった」
風の音に紛れそうなくらいの声なのに、
ちゃんと届いてしまう。
「……うん」
それしか言えなかった。
この時間が、少しだけ特別に思えた。
そのあと、なんとか合流できて。
「どこ行ってたの2人」
陽奈にそう言われて、
少しだけ気まずく笑った。
そのまま旅館に戻って、
みんなでご飯を食べたり、
部屋で騒いだりして。
あっという間に時間が過ぎていった。
そして——帰りの日。
帰りのバス。
朝よりも静かで、
みんな疲れているみたいだった。
席はくじ引きで決まって、
私は窓側。
その隣に座ったのは——爽太。
「2日間、なんだかんだ楽しかったな」
「うん」
短い会話なのに、
胸の奥が少しあたたかくなる。
しばらくして。
隣が、静かになった。
「……爽太?」
目を向けると、
眠っているみたいだった。
そのまま、バスが揺れて——
「……っ」
肩に、重さがかかる。
爽太の頭が、
そっと私の肩にもたれていた。
近い。
近すぎる。
離れた方がいいのに、
なぜか動けない。
さっきまでの時間と、
この距離が繋がっているみたいで。
「……ずるい」
小さく呟く。
こんな距離、反則だ。
でも——
少しだけ、このままでいたいと思ってしまった。
ホームルームで先生にそう言われた瞬間、
教室のあちこちで声が上がる。
「璃恋、こっち来なよ」
陽奈が手を振る。
その隣には、晴翔と——爽太。
「もうこの4人でよくない?」
さらっと言う晴翔に誰も反対しなかった。
「じゃあ決定な」
爽太がそう言って笑う。
その何気ない一言に少しだけ胸が軽くなった。
当日。
バスに揺られて、
向かったのは森の近くの自然体験施設。
一泊二日で、
近くの旅館に泊まるらしい。
窓の外に広がる緑の景色に、
少しだけ気分が上がる。
「うわ、めっちゃ緑」
陽奈がはしゃいだ声を出す。
「テンション高」
晴翔が笑う。
そんなやり取りを聞きながら、
私は窓の外を眺めた。
気づけば、隣には爽太がいる。
それだけで、
少しだけ特別な気がした。
現地に着いてからは、
4人で自由に行動することになった。
木々の中を歩いたり、
落ち葉を踏みながら進んだり。
特別なことはしてないのに、
時間がやけに楽しく感じる。
「璃恋ってさ」
「なに」
「方向音痴っぽいよな」
「は?」
思わず睨む。
「ほら、こっちじゃね?」
そう言われて、
適当に歩いていたら——
「あれ、待って」
気づいた時には、
周りに誰もいなかった。
「やば、はぐれた?」
爽太が少し笑いながら言う。
「笑ってる場合じゃないでしょ」
でも、不思議と嫌じゃなかった。
風で葉が揺れる音だけが聞こえる中、
2人で歩く。
「まあ、いっか」
爽太がそう言って、
木の間の景色を見る。
「戻ればなんとかなるだろ」
その横顔を見て、
少しだけ安心する自分がいた。
「あのさ」
爽太がぽつりと呟く。
「一緒の班でよかった」
風の音に紛れそうなくらいの声なのに、
ちゃんと届いてしまう。
「……うん」
それしか言えなかった。
この時間が、少しだけ特別に思えた。
そのあと、なんとか合流できて。
「どこ行ってたの2人」
陽奈にそう言われて、
少しだけ気まずく笑った。
そのまま旅館に戻って、
みんなでご飯を食べたり、
部屋で騒いだりして。
あっという間に時間が過ぎていった。
そして——帰りの日。
帰りのバス。
朝よりも静かで、
みんな疲れているみたいだった。
席はくじ引きで決まって、
私は窓側。
その隣に座ったのは——爽太。
「2日間、なんだかんだ楽しかったな」
「うん」
短い会話なのに、
胸の奥が少しあたたかくなる。
しばらくして。
隣が、静かになった。
「……爽太?」
目を向けると、
眠っているみたいだった。
そのまま、バスが揺れて——
「……っ」
肩に、重さがかかる。
爽太の頭が、
そっと私の肩にもたれていた。
近い。
近すぎる。
離れた方がいいのに、
なぜか動けない。
さっきまでの時間と、
この距離が繋がっているみたいで。
「……ずるい」
小さく呟く。
こんな距離、反則だ。
でも——
少しだけ、このままでいたいと思ってしまった。
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