奴隷吸血鬼の世界旅行〜転生したら最底辺奴隷スタートだったので見返して金に物言わせまくってやる〜

しゃる

文字の大きさ
10 / 11

第九話 お金の稼ぎ方と服屋

しおりを挟む
 私はレミリエルさんの後に続く、迷いなく歩いている所からこの国の土地勘があるんだろうか。
 なら安心してついて行っていいのかな。

「あの、洋服屋って何処なんでしょう」

「え、知らないで歩いてたんですか?」

 困り果てた様子でこちらを振り返るレミリエルさん。さっきまで一体何処に行こうとしていたのか。

「とりあえず街の人に聞いてみましょうか」

「私、こう見えて全く知らない人に話しかけるの苦手なのでエルノアさんお願いします」

 私の提案にレミリエルさんは、私に縋り付くように懇願してくる。人見知りには見えなかったけど、断る理由もないので了承する。

「あの、すみません。お洋服屋さんってどちらにありますか?」
 適当に通行人を捕まえて声をかける。

「服屋は真っ直ぐ行ったら直ぐにあると思うけど⋯⋯。君、すごい格好してるねぇ」

「ありがとうございます。まあ、お気になさらず」

 通行人の方に服装を指摘されたが、だから服屋に行く必要があるんだと察して欲しい。
 私はレミリエルさんに、通行人から頂いた情報をそのまま伝え、服屋に向かって歩いた。

「アレじゃないですか?」
 レミリエルさんが指さしたお店には確かに、ガラス張りに服が展示されている。
 ただ何となく高級そうな予感がする⋯⋯。

「まあ、お金はあるんですし入ってみましょうよ」

 レミリエルさんは、店の扉を開ける。
 店内に入ると、直ぐに店員さんが私たちの元へやってきた。なんだか煌びやかな装飾品が沢山着いた服を着た、貴婦人のような方だ。

「いらっしゃいませ~。本日はどのようなお召し物をお探しで?」

「ああ、この子に似合う服を探しに来ました」
 そう言って私を指すレミリエルさん。

「あらまぁ!なんて粗末な格好をしているの!女の子なんだからきちんとしたお洋服を着ないと!」

 店員さんは散々驚いた素振りを見せた後に、「直ぐに似合う物を持ってくるわ!」と店置くへとパタパタと駆け込んで行った。

「騒がしい店員さんですね」

「めちゃくちゃ粗末な格好って言われたんですけど⋯⋯。この世界ではアレ、普通なんですか?」

 私の問いかけに、レミリエルさんは「んー」と考え込んでから、「普通に異常ですね」と言った。

 やっぱり⋯⋯。

 程なくして、店員さんが慌ただしく息を切らしながら幾つか服を持ってきた。
「厳選してきましたわ!」と私に幾つか服を手渡してきた。

「これ、全部フリルの着いたやつ⋯⋯。可愛い子が着るやつじゃないですか?」

「何言ってるの。アナタは可愛いわよ、顔だけかもしれないけど」

 店員さんは至って真面目な顔をしている。普通に貶してきたかと思った。
 私は厳選されたであろう服を幾つか見やる。どれにしよう⋯⋯。
 レミリエルさんは「私と同じ道を往くのなら黒服ですね、吸血鬼っぽいですし」と黒をゴリ押してくる。

「まあ、吸血鬼っぽいですけど⋯⋯。露骨に吸血鬼ってわかり易いのは⋯⋯」

「吸血鬼とバレるのは嫌ですか?吸血鬼差別をする国は少ないと思うんですけど」

 例え吸血鬼差別をする国は少なくとも、一度奴隷にさせられている身だし、あまり全面には出したくない。
 だから私としては吸血鬼らしからぬ色合いで攻めていきたい。

「この白い服、可愛くないですか?」

「可愛いと思いますけど、私の好みでは無いですね」

 私が掲げて見せた服をレミリエルさんは不貞腐れたように否定する。白い服に恨みでもあるのか。というか天使なら好んで着る色味では。

「まあ、エルノアさんの好きな色を着るといいですよ、私は気にしませんので」

「はぁ⋯⋯。じゃあお言葉に甘えて」

 何故か絶対に気にしているであろうレミリエルさんを放っておき、私は店員さんに服を見せる。

「これがいい⋯⋯です」

「白のワンピースね。貴女、自分に似合いそうな服を見つけるのが上手いのね!」

 店員さんは私を一通り褒めると、「一度試着してみるといいわ」と試着室へと案内してくれた。
 私は試着室の扉を閉め、ボロボロの服、服と言っていいか分からない布切れを脱ぎ捨て、白いワンピースを身に纏う。
 肩が出るから夜は少し寒いかもしれない。

「どう、着れたかしら」

「あ、はい、今行きます」

 私は試着室の扉を開け、店員さんの前に出る。レミリエルさんも見ているせいか少し気恥しい。

「あら、とっても似合うじゃない!可愛いわ」

「まあ⋯⋯白もありなのかもしれませんね。考えを見直します」

 謎に考えを見直してくれたレミリエルさん。そして安定に褒めてくれる店員さん。
 悪い気はしないが、やはり気恥しいので早くお会計を済ませて立ち去りたい。

「あの⋯⋯お会計お願いしてもいいですか?」

「はいはい、ちょっと待ってね」

 私が幼女さんの母親から頂いたお金から支払おうとすると、レミリエルさんが「私からのプレゼントです」と私の手を止め、代わりにお金を支払ってくれた。

「あの、ありがとうございます⋯⋯。大事に着ますね?それと、黒じゃなくてすみません⋯⋯」

「ああ、いえ。別に気にしなくてもいいですよ?」

 何故か謝り、何故か許されたのでこれで心置き無くこの白いワンピースを着れる。そう思って店員さんに「ありがとうございました」と告げて店を出ようとした。
 しかし、後ろから「助けて⋯⋯助けてください⋯⋯」とレミリエルさんの死にそうな声が聞こえてきた。
 え、何事、と思い振り返って見るとレミリエルさんが店員さんに肩を掴まれ動けなくなっていた。

「貴女のお買い物がまだじゃなくて?レミリエルさん?」

「べ、別に私は洋服には困っていないので⋯⋯」

 買わないなら死ね、とでも言いたげな店員さんにレミリエルさんは愛想笑いで返すが、どうやら通じなかった様で、次から次へとレミリエルさんの腕に洋服が積まれていく。

「ちょ、重、やめてください」

「んー、貴女に似合うのはそれくらいかしら。あ、お会計はねぇ⋯⋯」

 店員さんが私に聞こえないように、ボソリとレミリエルさんの耳元で呟く。
 呟かれたレミリエルさんは途端に顔色が青ざめて、「は、はははは払えませんよ、私、そんなに。ご飯も食べられなくなるしお風呂にも入れなくなります」とガタガタと震え出した。

「フフフ、レミリエルさん?お洒落の為には節約しなくちゃ⋯⋯?」

「ひっ⋯⋯や、やめてください。買いませんよっ!私そんなにお金ないです!」

 涙目で抗議するレミリエルさんを圧倒する勢いで、店員さんは凄まじく、店を出る頃には両手に大量に服の入った手提げ袋を持つ羽目になっていた。

「くっ⋯⋯。あんなゴミみたいな店二度と行きません!巻き上げたお金の殆どを巻き上げられました!」

「ま、まあまあ⋯⋯」

 怒り、震えるレミリエルさんを宥めつつも、私は「ああいう稼ぎ方もあるのか」と感心していた。成程、時としては押しが大切。そしてレミリエルさんの様に強引な稼ぎ方をすると、強引にお金を消費されられる可能性があるということも肝に銘じておこう⋯⋯。

 また一つ、異世界での儲け方を学んだ私だった。







しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

出来損ないと追放された俺、神様から貰った『絶対農域』スキルで農業始めたら、奇跡の作物が育ちすぎて聖女様や女騎士、王族まで押しかけてきた

黒崎隼人
ファンタジー
★☆★完結保証★☆☆ 毎日朝7時更新! 「お前のような魔力無しの出来損ないは、もはや我が家の者ではない!」 過労死した俺が転生したのは、魔力が全ての貴族社会で『出来損ない』と蔑まれる三男、カイ。実家から追放され、与えられたのは魔物も寄り付かない不毛の荒れ地だった。 絶望の淵で手にしたのは、神様からの贈り物『絶対農域(ゴッド・フィールド)』というチートスキル! どんな作物も一瞬で育ち、その実は奇跡の効果を発揮する!? 伝説のもふもふ聖獣を相棒に、気ままな農業スローライフを始めようとしただけなのに…「このトマト、聖水以上の治癒効果が!?」「彼の作る小麦を食べたらレベルが上がった!」なんて噂が広まって、聖女様や女騎士、果ては王族までが俺の畑に押しかけてきて――!? 追放した実家が手のひらを返してきても、もう遅い! 最強農業スキルで辺境から世界を救う!? 爽快成り上がりファンタジー、ここに開幕!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

白いもふもふ好きの僕が転生したらフェンリルになっていた!!

ろき
ファンタジー
ブラック企業で消耗する社畜・白瀬陸空(しらせりくう)の唯一の癒し。それは「白いもふもふ」だった。 ある日、白い子犬を助けて命を落とした彼は、異世界で目を覚ます。 ふと水面を覗き込むと、そこに映っていたのは―― 伝説の神獣【フェンリル】になった自分自身!? 「どうせ転生するなら、テイマーになって、もふもふパラダイスを作りたかった!」 「なんで俺自身がもふもふの神獣になってるんだよ!」 理想と真逆の姿に絶望する陸空。 だが、彼には規格外の魔力と、前世の異常なまでの「もふもふへの執着」が変化した、とある謎のスキルが備わっていた。 これは、最強の神獣になってしまった男が、ただひたすらに「もふもふ」を愛でようとした結果、周囲の人間(とくにエルフ)に崇拝され、勘違いが勘違いを呼んで国を動かしてしまう、予測不能な異世界もふもふライフ!

ちっちゃくなった俺の異世界攻略

ちくわ
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた! 精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!

真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます

難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』" ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。 社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー…… ……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!? ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。 「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」 「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族! 「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」 かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、 竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。 「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」 人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、 やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。 ——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、 「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。 世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、 最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕! ※小説家になろう様にも掲載しています。

1歳児天使の異世界生活!

春爛漫
ファンタジー
 夫に先立たれ、女手一つで子供を育て上げた皇 幸子。病気にかかり死んでしまうが、天使が迎えに来てくれて天界へ行くも、最高神の創造神様が一方的にまくしたてて、サチ・スメラギとして異世界アラタカラに創造神の使徒(天使)として送られてしまう。1歳の子供の身体になり、それなりに人に溶け込もうと頑張るお話。 ※心は大人のなんちゃって幼児なので、あたたかい目で見守っていてください。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

処理中です...