引きこもり天使の救済奇譚〜引きこもりだった天使が親のいいつけで人間界に舞い降りて嫌々アナタを助けてくれます〜

しゃる

文字の大きさ
15 / 65
第一章カトリの街

エピソード15 冒険者ギルドと吸血鬼

しおりを挟む
 ある日、私が今日の宿賃を納めに安宿の受付に言った際、中々に気になる話を宿主さんから聞きました。


「はい?吸血鬼?」

「そうだ、お嬢ちゃん。吸血鬼だ」

 最近、辺りが闇に包まれた頃無差別に血液を吸われる事件が起こっているらしいです。

 店主さん曰く、血液を吸われたのは全員女性だそうで、「俺には関係ねぇけどな」だそうです。

「えーーー」

「まっ、お嬢ちゃんも気を付けるんだな。なんでも血を吸われた女性はその吸血鬼の虜になってしまうそうだからな」

「へぇ、虜にですか。その吸血鬼って外見の特徴ははっきりしてるんですか?」

「あー。はっきりというか目撃者が言うにはだな。髪の長い銀髪に赤い瞳だそうだ」

「赤い瞳に銀髪。如何にもな感じですね」

「だろ。オマケに美少女ってんだ。くー、吸われてみてぇ、俺を虜にしてくれ」

 男性という者はみなこうなのでしょうか。

 まあ、いい話を聞きました。警戒する事には越したことはないので戸締りはきちんとする様にしましょう。

  
 吸血鬼事件について少し興味があったので、何か情報はないかと街を散策することに決めました。特にやることもないので。

 お、気になる物発見。


「冒険者ギルドの張り紙ですか」

 冒険者ギルド、魔物討伐や物騒な事件解決に当たる冒険者たちに依頼をする施設です。

「吸血鬼討伐を求む、ですか」

 話によると死傷者は出ていないみたいですし、まあ精神面では支障をきたしているみたいですが、そこまで重大なんですかね。

「一度冒険者ギルドという物も見てみた方がいいかもしれませんね」


 張り紙に小さく書いてある地図を頼りに、何とか冒険者ギルドへとたどり着きました。

 建物はやはり中々に立派で、内装は壁に武器が色々と取り付けられていました。

「随分と殺ってやる精神が高い内装ですね」

 初めて来たのもあり、辺りをキョロキョロ見回していると、「初めての方ですか?」と受付のお姉さんに捕まってしまいました。

「あ、はい⋯⋯」

「冒険者志望の方ですか?」

「いや、そういう訳では」

 受付のお姉さんって眼鏡でキリッとした美人の方が多い印象があります。そして大抵仕事ができるため言い逃れがしにくい印象もあります。

「吸血鬼について少し知りたくて」


「ああ、吸血鬼ですか。今冒険者ギルドが総力を上げて討伐にあたっているのでご心配なく」


「総力をって、そこまでして討伐しなければ行けない程凶悪なんですか?」


「凶悪というか、誰だって夜中に勝手に血を吸われたら嫌でしょう?」

 まあ、確かにその通りですね。返す言葉もないので黙って頷いておきましょう。

「よーよー、嬢ちゃん見ない顔だな」

「へっ?」

 不意に柄の悪い男に呼び止められ素っ頓狂な声が出てしまいます。外見の特徴からして、赤い鎧を身に纏っているので恐らく冒険者の方でしょう。

「お嬢ちゃんももしかして冒険者志望か?やめときな、お嬢ちゃんなんかが務まる仕事じゃねえよ」


「いや、冒険者志望じゃないので」


「あ、え、そうなんだ⋯⋯」


 なんだコイツムカつきます。ただ、恐らく彼の仲間たちは、勘違いした彼を見てクスクスと笑っています。

「とにかく!  ここは弱え奴の来るところじゃねえんだよ!」


「ひっ⋯⋯」

 情けないかな、私の読んでいた本ではこういう時にブチ切れて相手に力の差を見せつけてやるのが定番だというのに、私は主人公じゃないということで怒鳴られて震え上がることしかできませんでした。

 冒険者ギルド、治安悪すぎです。コイツらも魔物じゃないんですか?


「こら!!エリク!!どうして女の子を虐めるの!」

「あっ、いやこれは⋯⋯」

 意外にも、私に助け舟を出してくれたのは先程の眼鏡をかけた受付のお姉さんでした。先程の冒険者はエリクというらしく、お姉さんを前に狼狽えています。何故。

「違うんだよ。サシャ、別に虐めてるとかそういう訳じゃ」

 口篭る彼に、彼の仲間たちは「コイツ、冒険者志望の子潰して、サシャちゃんに良いとこ見せるって言ってたのに勘違いでよ。立つ瀬がねぇんだよ」と受付のお姉さんもといサシャさんに告げ口しました。エリクさんは「ちょ、やめろよー」等と照れた表情をしています、可愛くない。


 なるほど、エリクさん恐らく意中の相手、サシャさんに良いところを見せたくて新人潰しをしようと言うことですか。え、それってクソダサくないですか?


「エリク、普通にそれクソダサいわよ」

 やっぱりクソダサかったみたいです。

「そ、そうかぁ?ならもうやめる」

「やめるの前にさっきの女の子に謝りなさい!」

 サシャさんに促され、エリクさんはこちらに気まずそうな顔をして近寄ってきます。

「その、さっきはすまなかった。許してくれ」

「嫌です」

「そうか、許してくれるか。次からは弱いとか関係なしにいつでも来ていいから」

「ですから嫌です。というか貴方に許可されなくても勝手に来ます」

 私の態度の急変には理由があります。サシャさんです。サシャさんがいる限りこの男は私にデカい態度を取れないということを見込んでこのような態度に出ている次第です。つまり私は主人公ではなくただの小者です。


「えーー許してくれよ」

 ただ、主人公感があまりにないなと本が好きで物語ばかり読んでいた私的には思うので、最後に「貴方よりは強いと思いますよ?」と添えておきました。さっき弱いって煽られましたし。

「今なんて?流石にそれは聴き逃せないぞ」

 ヤバい、思ったよりガチっぽい感じできた。イキって言わなきゃ良かったです。

「表でろ」

「随分と古典的な⋯⋯」

「ちょっと!エリク!」

「サシャちゃん。大丈夫だ、怪我はさせねぇ」

 結局、冒険者ギルドの外に出され、決闘をする羽目になりました。

 相手は木製の剣を持っています。彼の力で振り下ろしたものが当たったら、恐らく軽く骨はいかれますね。


「お嬢ちゃん。武器は?」

「いりません、魔法が使えるので」

「魔法か。あんなチャッチイもんは俺は好きじゃない、勝負とは己の腕、足、身体を痛めつけてするもんだ」

 なんだか、随分古典的な人ですね。ただ、かなりの誇りを持って冒険者をしているような雰囲気も感じられます。


「ぐはぁっ!!!」


 まあ、そんな誇りなどお構い無しで取っ払うのが私です。


「あの、大丈夫ですか?」


 魔弾で相手のお腹を軽く仕留めたつもりでしたが、力加減を誤ってしまったのかもしれません。エリクさんはその場に転げ落ちました。


「うぐぅぅ、まさかこんなお嬢ちゃんに」

「本当に大丈夫ですか?お腹ですか?お腹ヤバいですか?」

 ここまで痛がられると、いくら絡んできたのが向こうでも、なんだか悪い事をしてしまった気になってしまいます。

「吸血鬼討伐、お嬢ちゃんに任せた⋯⋯ぜ⋯⋯」

「あ、それはお断りします」

 ガクっと力尽きてしまったエリクさんに周りの仲間達が駆け寄ってきます。

 一瞬、もしかしたら報復で仲間達から袋叩きに合うのではとひやっとしましたが、どうやらそうではないよで。

「エリクを倒すなんてお嬢ちゃんやるな」


「エリクはここいらの冒険者ギルドでは最強だったんだけどな」


「吸血鬼討伐、お嬢ちゃんに任せてもいいかもな」


 一般人してる私に討伐を任せるとか、何のために冒険者ギルドがあるんですかね。


「私からもお願いするわ」


「えーーーー」


 気乗りはしませんが、サシャさんからお願いされたら断る訳にはといくわけもなく、丁重にお断りしました。


 まあ、吸血鬼が私に危害を加えてくるなら必然的に討伐することにはなると思いますけど。








しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

異世界ママ、今日も元気に無双中!

チャチャ
ファンタジー
> 地球で5人の子どもを育てていた明るく元気な主婦・春子。 ある日、建設現場の事故で命を落としたと思ったら――なんと剣と魔法の異世界に転生!? 目が覚めたら村の片隅、魔法も戦闘知識もゼロ……でも家事スキルは超一流! 「洗濯魔法? お掃除召喚? いえいえ、ただの生活の知恵です!」 おせっかい上等! お節介で世界を変える異世界ママ、今日も笑顔で大奮闘! 魔法も剣もぶっ飛ばせ♪ ほんわかテンポの“無双系ほんわかファンタジー”開幕!

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます

難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』" ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。 社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー…… ……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!? ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。 「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」 「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族! 「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」 かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、 竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。 「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」 人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、 やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。 ——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、 「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。 世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、 最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕! ※小説家になろう様にも掲載しています。

異世界転生したおっさんが普通に生きる

カジキカジキ
ファンタジー
 第18回 ファンタジー小説大賞 読者投票93位 応援頂きありがとうございました!  異世界転生したおっさんが唯一のチートだけで生き抜く世界  主人公のゴウは異世界転生した元冒険者  引退して狩をして過ごしていたが、ある日、ギルドで雇った子どもに出会い思い出す。  知識チートで町の食と環境を改善します!! ユルくのんびり過ごしたいのに、何故にこんなに忙しい!?

異世界に転生したら?(改)

まさ
ファンタジー
事故で死んでしまった主人公のマサムネ(奥田 政宗)は41歳、独身、彼女無し、最近の楽しみと言えば、従兄弟から借りて読んだラノベにハマり、今ではアパートの部屋に数十冊の『転生』系小説、通称『ラノベ』がところ狭しと重なっていた。 そして今日も残業の帰り道、脳内で転生したら、あーしよ、こーしよと現実逃避よろしくで想像しながら歩いていた。 物語はまさに、その時に起きる! 横断歩道を歩き目的他のアパートまで、もうすぐ、、、だったのに居眠り運転のトラックに轢かれ、意識を失った。 そして再び意識を取り戻した時、目の前に女神がいた。 ◇ 5年前の作品の改稿板になります。 少し(?)年数があって文章がおかしい所があるかもですが、素人の作品。 生暖かい目で見て下されば幸いです。

転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする

ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。 リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。 これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。

【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活

シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!

処理中です...