引きこもり天使の救済奇譚〜引きこもりだった天使が親のいいつけで人間界に舞い降りて嫌々アナタを助けてくれます〜

しゃる

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第一章カトリの街

エピソード23 犯人を見つける

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「ふふ、この水こそが秘訣です」


 決まりました。私史上最強のドヤ顔です。


「はぁ?」


「はい?なんでしょう」


「え、いやごめんね。どういう事か説明して欲しい」


「これはお風呂で溜めた水です」


「はぁ?」


 カムさんが辛辣です。「はぁ?」とか言われると結構引きずるタイプなのでやめて欲しいです。


 私はわざとらしく咳払いをします。


「い、一から説明しますね。それは聖水です」


「この空中に浮いてるのが聖水⋯⋯?」


「少量ばらまくだけでめちゃくちゃに発光します」


「夜だとめちゃくちゃ迷惑じゃない?」


「この聖水は周囲で人を殺せる程度の魔力を放った場合にのみ発光します」


「という事は?」


「迷惑の心配はご無用です。そして、この聖水が発光した場所こそ犯人の居場所です」


 カムさんは「おぉ」と驚いた様な顔をしつつも「実は私も⋯⋯」と謎の砂を差し出してきました。


「これは?」


 砂を受け取ります。どの角度から見ても普通の砂ですね。


「いやぁそれさ、ばら撒くとレミリエルさんと同じ原理で知らせてくれるの」


「マジですか、よく夜になるまでの短時間で作れましたね」


 考えることが同じとは驚きです。しかも三歳下。


 考えが合致した私達はお互いにカトリの街を飛び回り、要所ごとに水と砂を振りまいていきました。直ぐに発光しているのが分かるように、私ち二人は空中で街の様子を眺めながら待機です。


「ねぇ、水と砂って言い方ダサくないかな」


「事実じゃないですか。聖水と砂とでもいいますか?」


「いや、砂はそのまんまだし、砂だけしょぼく聞こえるじゃん」


 他愛ないやりとりを繰り返しながらも、聖水と砂の知らせを待ちました。


 こういう時に限り、冷たく気味の悪い風が吹き荒れます。何時間待ったでしょうか、体温は奪われ思考は鈍るようになり、何も起きない事が理想なのに特に何も変化が訪れない事への苛立ちすらも感じます。


「今日はあらわれないのでしょうか」


 だとしたら日を改めてまた明日見張るという事でもいいような気がします。


 ちらりとカムさんの方へ視線を流すと、スピールさんに見せた時の様な真剣な眼差しをしています。


「あの、カムさん?何かありましたか?」


「あるよ。きっとこれから」


 カムさんはツインテールに縛った、紫がかった髪を強風で揺らしながら呟きます。正直私は今日は何事もなく終わる、そんな予感さえしていたのでカムさんの考えがイマイチ掴めませんでした。


「根拠はあるんですか?」


「あるよ。納得させられるような根拠」


 先程の私のように、自信たっぷりとでも言いたいのが顔に出ているカムさん。ほうほう、ではお聞きしましょう。


「何故ですか?」


「それはね、女の勘っていうやつだよ」


 女の勘、ですか。それで納得させられるとでも?と笑ってしまいそうになります。ただ、私は好奇心は旺盛な生き物ですので納得させられてあげたという事にしておきましょう。


「仕方ないですねぇ。もう少し待ちましょう」


「ありがと。きっと何かある気がする」


「全く⋯⋯十四年しか生きていないのに女の勘とか言わないでください」


 私の突きに、シンプルに恥ずかしかったようでカムさんは少し頬を染めます。あらあら、です。


 そこから更に時は流れます。「女の勘(笑)外れたじゃないですか」と少しからかって差し上げようと思った時です。


 空中で待機している私たちがすぐに気付く事ができる程の眩い光で街は包まれました。


「レミリエルさん、行くよ」


「はい」


 最小限の会話で、光源地へ向かいます。魔法を使ったという事は既に攻撃を開始しているという事、急がなければどなたかの命に関わります。


 間に合ってください。間に合え。


 光源地へ着く頃には、光は止まっており犯人と地に横たわる被害者と思われる女性の姿が目に入りました。


 被害者の下半身は氷漬いており、混乱による嗚咽を洩らしています。


「カムさん、その方の氷を溶かしてください」


「分かった、レミリエルさん気を付けてね」


 私が犯人と対峙することを察したカムさんは指示通り、早急に被害者の手当に当たってくれました。


「で、貴方が犯人で間違いない無いですね」


 私の目の前には犯人と思われる、痩せほった男性、歳は私より上な様ですが、恐らく二十代でしょう。魔法使いと思われる彼は黒いローブを身に纏っています。


「なんだ君は、僕の邪魔をするな」


 彼は杖を大振りし、火柱を私に向けて発射して来ました。ので、丁寧に水魔法で全て消化して差し上げました。


「前に見たカムさんの炎魔法よりかなり劣りますね」


「あんなショボイ魔法と一緒にしないでよ」


 カムさんはどうやら被害者様の氷を全て溶かしきった様で、あんな奴の魔法と一緒にして欲しくない、というのが顔に出ています。


「なっ、なんだ⋯⋯お前ら魔法使いか!」


「なんでって私はローブ着て⋯⋯あ、今日は普通の私服だったんだ」


 カムさんの今日の服装はいつもの黒いローブに三角帽子ではなく、珍しく白衣装を着込んでいます。


 そして私はいつもの襟付きの黒ワンピース。これだけの情報では相手が魔法使いとは分からないでしょう。


「くそっ、魔法使いだったのかよ⋯⋯」


 目の前の彼は私達が魔法を使える事が判明すると、先程の余裕たっぷり、という態度は見る影もなく、焦りの色が丸見えです。


「随分焦っているじゃないですか。まさか魔法の使えない自分より非力な相手を選んで襲っていたとでも?」


「黙れっ⋯⋯」


「ああっ、察したのでもういいですよ。屑の方ですか」


 彼は早くこの場を切り抜けたいのか、再び私に向けて杖を振ります。ほほう、強行突破のつもりですか。


「甘いですよ」


「うわぁっ!」


 魔力の弾を彼の手元目掛けて放ち、彼の杖を強制的に落下させます。

 牽制のつもりで放った魔弾に余程驚いたのか、犯人は情けない声を上げました。


「うわっ⋯⋯だっさ」


「カムさん、いくら何でも失礼ですよ。もっと言ってあげて下さい」


「うぅ⋯⋯」


 あの反応を見ると、中途半端に力を持ってしまったが為に、人の痛みを知らずに犯行の限りを尽くしていたのでしょう。

 魔法使いともあればそう簡単に捕まることもありませんしね。


 ただ、それも今日で終わりです。


「さぁ、お縄の時間ですよ。私と一緒にエリスへ行きましょう」







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