引きこもり天使の救済奇譚〜引きこもりだった天使が親のいいつけで人間界に舞い降りて嫌々アナタを助けてくれます〜

しゃる

文字の大きさ
29 / 65
第一章カトリの街

エピソード29 不幸な少年

しおりを挟む
 どうも、レミリエルです。いきなりですが、ある少年の話をしましょう。


 カトリの街に一人の恵まれない少年がいました。


 その少年は幼い頃から身体が弱く、友達と遊ぶどころか外に出る事さえままなりませんでした。


 外に出ると日の光が彼の身体を蝕むそうで、いつも薄暗い部屋でベッドに一人でした。

 少年の家は特別裕福ではありませんでしたが両親が無いお金を振り絞って、医者に何度も診察をして貰ったそうです。


「特段、悪い所は見当たりませんね」


 いつも言われるのはこの言葉でした。最後にはどの医者も原因不明と匙を投げ、少年から離れていきました。


「ごめんね、丈夫に産んで挙げられなくて」


 少年の母親はいつもすすり泣きながら言いました。

 少年は母親に泣いて欲しくなかった為に困ってしまいました。


「お母さん、僕は大丈夫だから」


 大丈夫では無いのに、次第に母親に泣いて欲しくないがために嘘を重ねるようになりました。父親にも同様にです。


 少年の人生はとても辛いものでしたが、神は彼にさらなる不幸を与えました。


 少年の病状が悪化したのです、激しく咳き込み、胸が苦しくなり意識を失う事は日常茶飯事でした。


「このままでは、うちの子は死んでしまう」


 少年の両親は決して、少年を見捨てようとしませんでした。その時、カトリの街に悪魔が現れました。


 悪魔は一度現れたら数百、数千の命を奪い取っていきます。そこで家族はこのまま死ぬのもありかもしれないと本気で死を覚悟していました。


 けれども悪魔は勇敢な天使によって退治してしまいました。死を覚悟していた家族は大層落ち込みましたが、同時に僅かな光を見出しました。

 そう、天使の存在です。元々カトリの街は人々の信仰心の強い事が有名な街。


 少年の家族は「天使に頼れば、この子の病気は治るかもしれない」


 という事で、現在私は少年の両親に依頼されてその少年の家にお邪魔しています。


「ああ、天使様、どうかこの子をお救い下さい」


 少年の母親がベッドで眠る、まだ幼い少年の頭を撫でながら私に懇願をしてきます。そして、父親も同じく私に何度も頭を下げてきました。


 医者に何度も見放されて、私を手放したら終わりだと思っているのでしょう。自分たちより遥かに年齢が低い私に対してとても下手にでてきています。


 それ程までに、我が子を救いたいのでしょう。


「分かりました、私はまだ彼の症状を間のあたりにしていないので少し時間がかかるかもしれません」


「それでも構いません、命さえ救っていただければ」


 ご両親の希望は少年の命を救う事ですか。


「分かりました。彼の命は、救う事をお約束します」


 妙に含みのある言い方にご両親は怪訝そうな顔をしていますが。本来、約束とは果たせる範囲で行うものです。

 私が彼をなんの代償もなしに救えるとは限りませんから。


 自分の中で、最低限は命は救う事というラインを決めておきます。


「それでは、少しの間彼とお話させて下さい」


 両親は部屋から出ていき、私と少年を二人きりにさせてくれました。


 ここは少年の部屋でしょうか、本が数冊と衣装台がある程度で、幼い少年の部屋らしさは感じられません。


「なんというか、殺風景な部屋ですねぇ」


「う、んん⋯⋯」


 私の独り言のせいか、眠っていた少年は目を覚まします。


「ん、お姉ちゃん⋯⋯誰?」


「初めまして、私の名前はレミリエル。お母様とお父様からのお願いでやってきました」


 少年は私を見ると口をパクパクさせて、驚いた様子です。


「もしかして天使様? 僕の病気を治してくれるの?」


「はい、天使様です。治せるように努力しようと思います」


 少年はギュッとベッド横に置いてあったクマのぬいぐるみを抱きしめます。


「クマさん、好きなんですか?」


 私はその場にしゃがみこみ、少年と同じ目線で語りかけます。無理に笑顔を作って怖がられた経験があるので、等身大な私で話しかけます。


 少年は口篭りながらも答えてくれます。


「あの、クマはあんまり好きじゃない」


 え、あんまり好きじゃないんですか。


「でもこのぬいぐるみは好きなんた」


 少年はぬいぐるみを再び抱きしめます。

 少年の髪は、私と同じ白髪で翠色の瞳をしています。

 外に出ていないからか、肌は随分と白いです。傍から見たら姉弟と勘違いされてしまうかもしれません。


「そうだ、お名前を聞いていませんでしたね。良かったら教えてくれませんか?」


「僕の名前、リシャ」


 少年は細々とした声で名乗りました。


「リシャさんですか。いい名前じゃないですか」


 怒られるかも、と思いましたが勇気をだしてそっと頭を撫でてみます。


「んん⋯⋯天使様、どうして頭を撫でるの?」


「え、どうしてと言われましても。可愛いから?」


 リシャさんは照れた様に俯きました。あらあらです、シャイなんでしょうか。


「コホッ、コホッ」


「ちょ、大丈夫ですか?」


 突然リシャさんが咳き込み始めました。慌てて背中をさすってあげます、効果があるかどうかは知りませんが。


 そろそろ本題に入った方が良いですね。


「リシャさん、本題に入ります。私はこれから貴方の病気を治します」


「う、うん」


「ただ、そう簡単には治りません。病気を治すにはかなりの代償が必要です」


 リシャさんは代償?と首を傾げています。

 そうなりますよね、貴方の病気はただの難病なんかではないんです。


 一目見て分かりました、貴方は治療不可の病気にかかり、命を落とすという理不尽な運命を神から定められているんです。


 これは神や天使にしか気が付けないことです。


 神が定めた運命はそう簡単には覆りません。

 なので、リシャさんの両親がいくら名医を呼んだところで何も変わりません。


 運命を変えるには、天界の者、つまり私がリシャさんの何かを代償にしないといけません。


 例えば、今までの記憶を代償にするとか。



しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

異世界ママ、今日も元気に無双中!

チャチャ
ファンタジー
> 地球で5人の子どもを育てていた明るく元気な主婦・春子。 ある日、建設現場の事故で命を落としたと思ったら――なんと剣と魔法の異世界に転生!? 目が覚めたら村の片隅、魔法も戦闘知識もゼロ……でも家事スキルは超一流! 「洗濯魔法? お掃除召喚? いえいえ、ただの生活の知恵です!」 おせっかい上等! お節介で世界を変える異世界ママ、今日も笑顔で大奮闘! 魔法も剣もぶっ飛ばせ♪ ほんわかテンポの“無双系ほんわかファンタジー”開幕!

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます

難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』" ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。 社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー…… ……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!? ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。 「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」 「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族! 「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」 かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、 竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。 「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」 人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、 やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。 ——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、 「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。 世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、 最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕! ※小説家になろう様にも掲載しています。

異世界召喚されたけどスキルが地味だったので、現代知識とアイテムボックスで絶品料理を作ったら大商会になっちゃいました

黒崎隼人
ファンタジー
手違いで剣も魔法もない異世界に召喚された、しがない日本のサラリーマン、湊カイリ。 彼に与えられたのは、無限に物が入る【アイテムボックス】と、物の名前が分かる【鑑定】という、あまりにも地味な二つのスキルだけだった。 戦闘能力は皆無。途方に暮れるカイリだったが、異世界の食事が絶望的に不味いことを知り、大きなチャンスに気づく。 現代日本の「当たり前」の知識は、この世界ではとんでもない「宝」なのだと! 「醤油?味噌?そんなものがあれば、この世界の食文化はひっくり返るぞ!」 ひょんなことから出会った没落貴族の美少女・リリアナと共に、カイリは現代知識と地味スキルを駆使して屋台から商売をスタート。 絶品料理で人々の胃袋を掴み、さらには便利な生活用品を次々と発明していく。 伝説の神獣の幼体「フェン」やドワーフの鍛冶師など、頼れる仲間たちも加わり、彼らが立ち上げた「サンライズ商会」は瞬く間に大躍進! 迫り来る悪徳商会や腐敗した貴族の妨害も、現代のマーケティング術と知恵で痛快に打ち破る! これは、平凡なサラリーマンが異世界の常識を覆し、食と生活に革命を起こして一代で大商会を築き上げる、痛快成り上がりファンタジー! 美味しい料理と、もふもふな相棒、そして仲間との絆。 人生、逆転できないことなんて何もない!

異世界転生したおっさんが普通に生きる

カジキカジキ
ファンタジー
 第18回 ファンタジー小説大賞 読者投票93位 応援頂きありがとうございました!  異世界転生したおっさんが唯一のチートだけで生き抜く世界  主人公のゴウは異世界転生した元冒険者  引退して狩をして過ごしていたが、ある日、ギルドで雇った子どもに出会い思い出す。  知識チートで町の食と環境を改善します!! ユルくのんびり過ごしたいのに、何故にこんなに忙しい!?

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

処理中です...