引きこもり天使の救済奇譚〜引きこもりだった天使が親のいいつけで人間界に舞い降りて嫌々アナタを助けてくれます〜

しゃる

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第一章カトリの街

エピソード28 サキュバスとお友達に

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「やめてくださいっ!やめて⋯⋯」


 後半は消え入りそうな声で懇願をしました。

 それでも、止まる様子は無かったのでせめてもと、目を瞑りました。


 お母様、私、汚れた天使になってしまいそうです。不本意なんです、許してくださいますか?


「うぅ⋯⋯」


 私の身体がこれは無理、と判断したのか強張っていた身体が脱力しました。

 そして、待てど、デビさんの唇が触れる事はありませんでした。


 不思議に思い、目を開けてみると。デビさんは先程とは違い、私から離れてベッドに腰掛けていました。


「た、助かった⋯⋯?」


 気が変わったのでしょうか、しかしデビさんは名残惜しそうな顔をしています。


「私、女の子をからかうのは好きだけど、虐めるのは好きじゃないの」


 そして、「そんなに嫌そうにされたらキスなんて出来ないじゃない」と付け加えました。


「はぁ、良かった⋯⋯です」

 

 安心した途端、再び身体の力が抜けました。


「まっ、私以外のサキュバスだったらそのまま襲われてたわよ?」


「マジですか⋯⋯鬼畜ですね」

 

 サキュバス集団、恐ろしいです⋯⋯。

 まだデビさんはサキュバスの中だと情けのある方だったようです。


「それで、私はもう返して頂けるんですか?」


「んー、どうしようかな。仕切り直しでもいいんだけど」


 デビさんがまたもや獲物を捕える眼で見つめてきました。その眼、トラウマなので本当に辞めていただきたいです。


「ひっ⋯⋯!」


「嘘だから、帰っていいから」


 デビさんが「本気にしないでよ、もう」という困り顔をしていますが、ふざけるな。


「貴女がいうと冗談にならないんですよ」


「あ、いや。それは⋯⋯ごめんね?」


 私の怒りが顕になったタイミングで、デビさんは機嫌を取るように謝罪を入れてきます。


「ほら、疲れたでしょう?コーヒーでも飲んでいきなよ。クッキーもあるよ」


 全く、誰のせいで疲れたと思っているんですか⋯⋯。腹いせにこの部屋のクッキー全て平らげてやりましょうか。


「ん、頂きます」


 程なくして、デビさんが「お待たせ~」とコーヒーとクッキーを持ってきてくれました。


 美味しそう。食べてもいいですか?と目線を送ると、デビさんは微笑みながら「どうぞ」と返してくれたので、遠慮なく頂くことにします。


「いただいますっ⋯⋯ん!」


 クッキーをひとかじりしてみると、ミルク味の程よい甘みが口の中に広がります、美味しいです。

 次々とクッキーを手に取り口の中へと放り込んでいきます。

 

「あはは、コーヒーも飲んで。そんなに急いで食べると喉詰まっちゃうよ」


 そんなに急いで食べていたでしょうか、少し恥ずかしくなりつつも言われた通りコーヒーを口に含みます。


 私好みのブラックコーヒーでした。


「よく私の好みを知っていましたね」


「ん?レミリエルちゃんの好みは知らないけど、美味しいなら良かったよ」


 ⋯⋯前にも似たようなやり取りがあったような気が。


 クッキーとコーヒーをそのまま食べ進めていると、あっという間に最後の一つになってしまいました。


「もう最後のひとつ⋯⋯」


 楽しい時間はあっという間、と言いますが美味しい時間もあっという間ですね。


 クッキーをつまみ、口へと放ります。

 最後のミルク味が口の中に広がります、まだまだ食べられますね。


「ご馳走様です、美味しかったです」


「んー?良かったよ。所で、サキュバスから食べ物貰って良かったの?怪しい薬とか入ってるかもよ」


「あ」


 馬鹿ですか私は。痺れ薬とか入っていたらどうするんですか、不用心にも程があります。


 今回ばかりは自分で自分を責めてしまいます、いや騙すような真似をする相手が悪いですよね、私は悪くないです。


「レミリエルちゃん、もしかしておバカ?」


「お勉強はできる方でした」


 失礼な、私の天使学校での成績表を叩きつけてやりたいところです。出席日数以外は完璧ですよ。


「ふぅ~ん。でもレミリエルちゃん、友達いなさそう」


「ぐはっ」


 何故見抜かれたんですか。天使学校時代にも一人くらい友達居ましたよ、と反論したい所ですが焼け石に水なのでやめておきましょう。


 デビさんは「毒っぽい所もあるけどなんか基本おどおどしてるな~って」と付け足します。


「そ、ですか⋯⋯」


「まあまあ、私が友達になってあげるからさ」


 デビさんが私の両手をギュッと掴みます。


「いや、遠慮しておきます。貴女とお友達になると襲われそうなので⋯⋯」


「ええー?その代わり美味しいクッキーとコーヒー用意するんだけどなぁ?」


 なんですか、結局襲われるんじゃないですか。

 嫌ですよそんなの、とキッパリとお断りしようと思いましたが「美味しいケーキもあるよ」と言われ、陥落しました。


「ふふ、私たちお友達~」


 デビさんは喜んでいるかどうか分かりませんが、朗らかな笑を零します。


「じゃ、キスの続きしようか」


「それはお断りします」


 どうやら人間界に来て、いちばん珍妙なお友達が出来たようです。


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