引きこもり天使の救済奇譚〜引きこもりだった天使が親のいいつけで人間界に舞い降りて嫌々アナタを助けてくれます〜

しゃる

文字の大きさ
27 / 65
第一章カトリの街

エピソード27 私史上最大の危機

しおりを挟む
「実はね、私サキュバスなの」


 こんにちは、もしかしたらこんばんはなんて事もありますかね。


 どうも、レミリエルです。只今絶賛サキュバスに捕まってしまい、人生最大のピンチです。


 え?悪魔と戦った時の方が危なかったって?

 何言ってるんですか、私の貞操が今失われるかもしれない危機なんですよ。


 どちらが重大かなんて考えたら分かるでしょう。

 あ、悪魔召喚の方が重大ですか、そうですか。


 潰します。


「フフ、レミリエルちゃん。浮かない顔してどうしたの?」


 耳元に吐息が吹き掛かります。やめて欲しい。


 分かっているでしょう、浮かない顔は完全に貴女のせいですよ。


 はてさて、ここからどうしましょうか。

 このままでは完全に流れてしまいそうなので、そろそろ帰らせて頂きたいのですが。


「あの、帰りたいです」


「ダメー」


 駄目でした。

 最悪、力ずくでお帰りさせて貰いましょう。

 天使とは純潔で無ければいけないものです、こんな所で汚されてはたまりません。


「ねぇ、レミリエルちゃんって本当に女の子だよね?」


「いや、見て分からないんですか?」


 デビさんは、なにを疑っているのか知りませんが謎の問い掛けをしてきます。


「いや、胸貧相だからもしかしてって」


「はぁ?マジで力ずくでかましますよ」


 確かに視線は胸元に感じましたが、随分舐めたこと考えてくれてるじゃないですか。


「まっ、お顔はとっても可愛いから自信もって」


「そういうのいいですから⋯⋯」


 貶してきたり、お世辞を言ったり。

 正直あまり良い気分ではなく、早く帰して欲しい気持ちがより一層強くなります。


「ごめんね?嫌な気持ちにさせちゃった?」


 デビさんは私の頬を手の平で撫でながら申し訳なさそうに謝罪の言葉を述べました。


 まぁ、謝ってくれるなら良いですが。


「私、女の子にしか興味無いから良かったわ」


「サキュバスって男性に淫らな夢を見せるのが普通じゃないんですか?」


 デビさんは「んー」と指を唇に当てながら私にかける言葉を探しているようです。


「まあ、一般的にはそうだね。でもサキュバス一人一人で違うから、私みたいなのも結構いるんだよ?」


「へぇ、そうなんですか。じゃあ私としては厄介な方に捕まってしまったと」


「あはは、まあ気になるのならここの宿に泊まってる他のサキュバス達に聞いてみなよ」


 ん?ここの宿に泊まっている他のサキュバス達?おかしいですね、聞き間違いでしょうか。


 デビさんは「もしかして」という顔をする私に確信付けるかのように、次の言葉を述べました。


「ここはね、私たちサキュバス達しかいない宿。さっきの受付さんも、もちろんサキュバスだよ」


 そこで私は合点がいきました。妙に引っかかっていた「お楽しみください」の意味を。


 成程、私は単身でサキュバス達の本拠地に乗り込んでしまったわけですか。

 つまり、ここで暴れようものならサキュバス総出で鎮圧される可能性があると。


「卑怯ですよ⋯⋯」


「フフ、何がかなぁ」


 デビさんは妖艶な笑みを浮かべながら、私の髪や頬を撫で回します。


「髪はさらさら、肌はすべすべ。何か特別な手入れでもしているの?」


 うっとりとした様子で質問を投げかけてくるデビさん、特別な手入れですか。


「特に何もしていませんね」


 カトリの街にひしめき合っている露店から、化粧水や保湿液を購入して入浴後に使っている程度です。それ以外は得に思いつきません。


 髪に関しても、同様です。


「へぇ、それでこんなに綺麗な状態を維持しているんだ」


「驚く程のものでもないですよね」


 私の目の前のデビさんの方こそ、透き通った髪と肌。きっとかなりのお手入れをして維持している物なのでしょう。


「あ、そういえばサキュバスって大抵夜中に現れるものですよね。今昼間ですよ」


 窓の外には日が当たり前のように昇っています。


「だって、夜更かしは美容の大敵でしょ?」


 あ、やっぱりこれは努力されてるやつだ。

 夜更かしが嫌なサキュバスなんて聞いた事ないですよ。


「じゃ、そろそろ遊びは終わりだよ」


 瞬間。デビさんの目が獲物を捕える獣の目に変わりました。空気が変わったのを肌で感じます。


 デビさんの口調は穏やか、なんの代わりもないはずなのに私は完全に捕えられる側になってしまいました。


 これから何をされるのか、私ももう子供では無いので容易く想像がつきます。


 脳内で想像したのがいけませんでした、意にそぐわない行為に全身が強張ります。


 これでは、抵抗ができません。した所で宿屋のサキュバスたちに鎮圧されるでしょうが。


「艶やかな唇ね」


 舌なめずりの後、彼女の顔は徐々に唇へと近付いてきます。


「やっ、やだ!やめてくださっ!」


 怖い、助けて欲しい。抵抗しようにも身体が動かない。

 意にそぐわない、嫌だ、こんな不当な事があってもいいのでしょうか。

 私の目には次第に涙が浮かびます。


 無慈悲にも、彼女の唇は勿体ぶるように迫ってきます。




しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

異世界ママ、今日も元気に無双中!

チャチャ
ファンタジー
> 地球で5人の子どもを育てていた明るく元気な主婦・春子。 ある日、建設現場の事故で命を落としたと思ったら――なんと剣と魔法の異世界に転生!? 目が覚めたら村の片隅、魔法も戦闘知識もゼロ……でも家事スキルは超一流! 「洗濯魔法? お掃除召喚? いえいえ、ただの生活の知恵です!」 おせっかい上等! お節介で世界を変える異世界ママ、今日も笑顔で大奮闘! 魔法も剣もぶっ飛ばせ♪ ほんわかテンポの“無双系ほんわかファンタジー”開幕!

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

異世界召喚されたけどスキルが地味だったので、現代知識とアイテムボックスで絶品料理を作ったら大商会になっちゃいました

黒崎隼人
ファンタジー
手違いで剣も魔法もない異世界に召喚された、しがない日本のサラリーマン、湊カイリ。 彼に与えられたのは、無限に物が入る【アイテムボックス】と、物の名前が分かる【鑑定】という、あまりにも地味な二つのスキルだけだった。 戦闘能力は皆無。途方に暮れるカイリだったが、異世界の食事が絶望的に不味いことを知り、大きなチャンスに気づく。 現代日本の「当たり前」の知識は、この世界ではとんでもない「宝」なのだと! 「醤油?味噌?そんなものがあれば、この世界の食文化はひっくり返るぞ!」 ひょんなことから出会った没落貴族の美少女・リリアナと共に、カイリは現代知識と地味スキルを駆使して屋台から商売をスタート。 絶品料理で人々の胃袋を掴み、さらには便利な生活用品を次々と発明していく。 伝説の神獣の幼体「フェン」やドワーフの鍛冶師など、頼れる仲間たちも加わり、彼らが立ち上げた「サンライズ商会」は瞬く間に大躍進! 迫り来る悪徳商会や腐敗した貴族の妨害も、現代のマーケティング術と知恵で痛快に打ち破る! これは、平凡なサラリーマンが異世界の常識を覆し、食と生活に革命を起こして一代で大商会を築き上げる、痛快成り上がりファンタジー! 美味しい料理と、もふもふな相棒、そして仲間との絆。 人生、逆転できないことなんて何もない!

真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます

難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』" ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。 社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー…… ……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!? ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。 「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」 「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族! 「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」 かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、 竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。 「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」 人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、 やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。 ——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、 「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。 世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、 最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕! ※小説家になろう様にも掲載しています。

異世界転生したおっさんが普通に生きる

カジキカジキ
ファンタジー
 第18回 ファンタジー小説大賞 読者投票93位 応援頂きありがとうございました!  異世界転生したおっさんが唯一のチートだけで生き抜く世界  主人公のゴウは異世界転生した元冒険者  引退して狩をして過ごしていたが、ある日、ギルドで雇った子どもに出会い思い出す。  知識チートで町の食と環境を改善します!! ユルくのんびり過ごしたいのに、何故にこんなに忙しい!?

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

処理中です...