引きこもり天使の救済奇譚〜引きこもりだった天使が親のいいつけで人間界に舞い降りて嫌々アナタを助けてくれます〜

しゃる

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第二章 世界旅行

エピソード56 経営難のケーキ屋と天使初コンサル(前編)

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さて、プロデュースと言ったもののまずは何をしましょうか。

    この街には既に昔から馴染んでいるお菓子屋さんがありますし、信頼も勝ち取られています。
なので、中々思いつかない様な突拍子もない案が必要でしょう。

「宣伝力ですね」

「はぁ⋯⋯宣伝力?」

    先程までキラキラした視線を向けてきた料理長さんは素っ頓狂な顔で首を傾げています。

    後、これからビジネスパートナーになるのならまずはこれが必要ですね。

「私の名前はレミリエル。旅の天使です」

「て、天使!?何言ってんのコイツやば!あ、私の名前はベリーです」

    やっぱり救けるのやめちゃいましょうか。天使ってこと信じてないみたいですし。

    私が頬をふくらませて露骨に不服な態度を取っていたせいか、ニイナさんは「わ、私はいいと思うわよ?天使」と機嫌を取ってきました。

    完全に痛い子扱いです。

    私はわざとらしく咳払いをした後、取り分け思い付いた案を発表しました。

「甘さ控えめチーズケーキを出すのはどうでしょうか?女性受けすると思いますよ?」

「な、なるほどっ」、ニイナさんはメモ用紙を手に取って忙しなく私の言った事をメモを取ります。

「あと、先程頂いたショートケーキ、甘過ぎるので、低糖ショートケーキで売り出しましょう」

「ほうほう」、これまた忙しなくメモを取り出すニイナさん。

「んー、全体的に甘さを無くして売り出しましょう」

    ニイナさんは「ん?」と、メモを取る手を止めました。

「それ、ただレミリエルさんの好み似合わせてるだけじゃ⋯⋯」

「私の好みは世界共通です」

    したり顔で無い胸を張る私に、ニイナさんは「無い胸をそこまで⋯⋯、この人なら信用できるかも」と羨望の眼差しを向けてきました。信頼の勝ち取り方がムカつきますがまあいいでしょう。

「分かりました、少し寂しいですが、店の味を変えて低糖で勝負してみます!」

「はい、私の舌を信じてください。そしてお腹空いたので甘さ控えめのケーキ下さい」

    もちろん無料でなぁ。です。

「はい、レミリエルさんの口に合いそうなの持ってきました」、私は運ばれたケーキを頂きもぐもぐ食べ始めます。

「あの、試食はもういいのでお代下さい」

「コンサル料です」

「⋯⋯⋯⋯」

     半ば強引にニイナさんを黙らせ、私は難を逃れました。天使のやる所業ではないと思いますけど、お財布の中身的にどちらにせよ払えなかったでしょうし。

「と、とりあえず明日から低糖で売り出してみます」

「ふふふ、儲かったらお小遣い下さいね」

    私はいい事をしたなぁなんて爽快な気分でケーキ屋さんを出ました。清々しい顔をしていた事でしょう。

    きっとあのお店は大繁盛間違いなし、いい事をしましたね。この街を出る前にもう一度あのお店を訪れてみましょうか、私好みこと世界標準の味になっているはずです。

    私はあれから一週間、この街で人助けをしていました。

    重い荷物を持った老婆の代わりに荷物を持ってあげたり、転んだ老婆を起こしてあげたり、お礼に煮物なるものを貰って食いつないでいました。

     私がこの街を出ようと思い立った頃にはすっかり老婆に餌付けされていました。

「あらぁ、レミリエルちゃんもう行くのね。貴女みたいな良い子中々居ないわよ?」、私の頭をまるで孫の様に撫でる老婆。

「う、うわぁぁん。おばあちゃん、私おばあちゃんから離れたくないですぅぅぅ!」、すっかり飼い慣らされ号泣する私。

「レミリエルちゃん泣かないの。世界中にレミリエルちゃんの助けを待っている人がいるんでしょ?   おばあちゃんはもう沢山助けられたからいいのよ?」

「違うんですっ、私がおばあちゃんから離れたくないです。おばあちゃん大好きです、うわぁぁん」

    おばあちゃんの大天使様のような優しさオーラに当てられた私は完全におばあちゃんっ子に調教されています。もはや泣きながら抱き着いています。

「ほら、レミリエルちゃん涙拭いて?可愛いお顔が台無しよ?」

    私はおばあちゃんからハンカチを頂き、「鼻かんでも?」と聞くと「いい訳ねぇだろうがボケ」と言われました。

「ぐすっ⋯⋯私、行きます。ありがとうございました」

「これ、旅先で食べてね。気をつけて行ってらっしゃい」

    私はおばあちゃんから最後の煮物を頂き、大事そうにカバンにしまい、その場を後にしました。

「最後にあのケーキ屋さんに立ち寄って見ましょうか、繁盛したお礼にお小遣いが貰えるかもしれません」

    私はもう一度ケーキ屋さんに訪れる事を決め、店先の扉を開けました。

    中にはお客は誰もいません。たまたま空いている時間に来てしまったのでしょうか⋯⋯。

「れ、レミリエルさん⋯⋯。来たんですね⋯⋯」

「はい、その後の進捗はどうですか?」

    ベリーさんは溜息をつきながら言いました。

「あのっ、全然売れないんですけど。なんならうちの店の固定客もこんなのケーキじゃないって、余計売上が減りました」

    え、嘘でしょ。世界標準の味ですよ?売れないわけがないです⋯⋯。

「レミリエルさん、責任取ってもらいますね?」

    私は威圧的なベリーさんにたじろぎ、気付けばお店の隅まで追いやられていました。

「は、はい⋯⋯責任取らせて頂きます⋯⋯」

    はてさて、どうなってしまうのか。


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