引きこもり天使の救済奇譚〜引きこもりだった天使が親のいいつけで人間界に舞い降りて嫌々アナタを助けてくれます〜

しゃる

文字の大きさ
58 / 65
第二章 世界旅行

エピソード57 経営難のケーキ屋と天使初コンサル(後編)

しおりを挟む
「責任とってくれますよね?」

    ニイナさんに店の隅まで追い詰められ、これは断れないと踏んだ私は渋々了解しました。

「責任って、どのように取れば⋯⋯」

「ふふふ、これを着て売り子をしてもらうわ」

    ニイナさんはどこからか、「可愛い子しか来たらあかん!!」とでも良いだけな可愛らしい衣装を持ち出しました。

「ちょ、無理ですよ。私そんなの着ても似合わないですよ」

「私ももう一児の母だし、レミリエルさん顔だけは良いから大丈夫よ!」

     前回とは立場が代わり、私はニイナさんに押されるがままに服を受け取りました。

    シャツは着ますが、受け取ったのはフリフリの付いたシャツ。そして黒いフリルの付いたスカート。丈が短い。

    これを着て売り子とは些かハードルが高いのではないでしょうか。ちなみにそのような視線をニイナさんに送りましたが、「ダメですよ?」という微笑ましい視線が帰ってきました。ダメだそうです。

「レミリエルさん、貴女の的はずれなアドバイスで、娘を路頭に迷わす訳にはいかないの、分かるでしょ?」

    別人の様な圧で、確かに私に詰め寄ってくるニイナさん。これが母たる者の覚悟ですか⋯⋯。

「わ、分かりました⋯⋯着ます」

     結局私はニイナさんの圧に負け、売り子の衣装を着る羽目になりました。

「レミリエルさん、着替え終わった?」

「はい、今行きます⋯⋯」

    私は観念した様に、貸していただいた着替え用の部屋から出ました。こんなの私に似合うわけないのに⋯⋯。

「似合ってるわよ、レミリエルさん!」

「そういうのいいですから⋯⋯私こんなの人生で一度も着た事無いですし」

「うちの娘には数段劣るけど、流石顔だけは良い事あるわ!」、興奮気味なニイナさんに褒められる私、何故だろう貶されている気がする。

「じゃあ外に行って来てね。最初は私もついてるから」

「えっ」

    私はニイナさんに押されるがままに、店の外へ出ました。

    ミニスカートの丈が短いせいで足が寒いです⋯⋯というか今日そこそこ寒いです、つらい。

「ほら、レミリエルさん。声張って宣伝して。お店の名前はストロ・ベリーよ」

「とこで区切ってるんですか⋯⋯うぅ、ケーキ店、ストロ・ベリー如何ですかー?   美味しいですよー?」

    外で声を張ったこと等ないので、羞恥からかどうしても小声になってしまいます。

「ダメ!声張りなさい!」

そのせいでニイナさんにガチな方なお叱りを受けてしまいました。ニイナさんは「私がいない方が出来るのかしら」と言い残し店内に戻ってしまいました。

「やるしか⋯⋯ない⋯⋯」

    私は腹を括りました。というか腹を括らないとニイナさんの圧がさらにやばい事になりそうですし。

「ケーキ屋、ストロ・ベリー! 絶賛営業中です!  甘々夢かわなケーキが多数取り揃えられています!  」

    やってしまいました。いきなり大声で叫ぶ輩がいたら誰しもが振り返ってみてしまうでしょう。私だってそうです。

    通りすがる人達の視線を一心に感じます。こんな姿の私を見ないで下さい、死にそう。

「へえ、なに?   ケーキ屋さん?」、興味を示したのか話しかけてくる男性。

「あっ、はい。美味しいケーキが沢山で、その⋯⋯」、説明をし終える前に、男性は途中で口を挟みました。

「俺はケーキじゃなくてお姉さんを買いたいな」

予想外の申し出にぞわりと鳥肌がたちました。何を隠そう男性は驚く程にドヤ顔だったのです。

「あはは、冗談は顔だけにして、どうぞ」、なので私は男性の背中を押して「一名様ご来店でーす」と無理やり入店させました。

    ちなみに帰る頃には大量にケーキを買わされたようで手さげ袋を二つほど持っていました。

    その後、吹っ切れ調子の私はどんどんと売り子として覚醒していきました。

「ストロ・ベリー開店中でーす!  私の舌には合わないですがめちゃくちゃ美味しいでーす!」

    ちなみに後でこの発言は怒られました。

     そして、段々と店の前で立ち止まる方が増えてきました。

「え、あの子ミニスカートで寒くないのかな」「んなことより可愛くね?」「まあ付き合ってあげられる位かな」「胸ちっさいのがなー」「馬鹿それが良いんだろ」

なんて口々にケーキについてでは無く下衆な会話を私に向けて言ってきました。なので一人一人、「あのぉ⋯⋯お話が⋯⋯」とあざとく手招いて近付いた瞬間に、無理くり背中を押し店内へと流し込みました。

流し込みさえすればニイナさんの圧で買わざる負えませんから。

「ふう⋯⋯疲れました」、そんな事を数時間繰り返した後、そろそろ疲労が見えてきました。

疲れた、座りたい、喉乾いた、そればかりが頭の中をぐるぐると駆け巡ります。けれど人は次から次へとやってきて私に話しかけてきます。

「ねえ、彼氏はいるの?」

「ケーキ買ってくれたらお答えします」

「きみ可愛いね。この後宿屋にでも行かない?」

「ケーキ買え」

「あ、お前。俺の三人目の彼女にしてやってもいいぜ?」

「死ね」

と言った感じで、お客様なので一応丁寧に次から次へと店内へと捌いていきます。

ちなみに皆店内から出てくる時には両手にケーキの入った手さげ袋を持って出てきます。ニイナさん恐るべし手腕です。

そうして今日の営業は終了しました。

私とニイナさんは店内でお疲れ様会をしました。ケーキは全て完売したそうで、コーヒー飲みを啜っています。

「大盛況でしたね」

「まあ、そうなんだけどね⋯⋯」

ニイナさんはどうした事か浮かない顔をしています。おいおい、私の努力が水の泡になるような事は言わないでくれよ、です。

「レミリエルさんがいなくなった後はどうしたらいいのかしら⋯⋯、売り子がいないわ」

まあ、確かにそうですよね。私がいなければ今日程の反響はうまないでしょう。

「困ったものですねぇ」

「ま、とにかく明日も頼むわ」

「えっ、明日もですか」

    ニイナさんは明日の事は明日にでも考えるわ、といった様子で私は明日も売り子をしなければならない羽目になりました。くそっ。

    翌日、「最初からケーキ屋さんの復興なんて協力しなければ良かったのに」とブツブツ文句を垂れながら、衣装に着替えて売り子として愛想を振る舞いました。

「あ、昨日の売り子さんじゃん、彼氏とかいるの?」

「私の事はいいのでお金だけ落として帰ってください」、男性の背中を押して無理やり店内へ流し込む私。

    今度は女性が話しかけてきました。

「あっ、お姉さん、ここのオススメって何かしら」

「んー、チーズケーキが強いですね。あと、店内に試食コーナーがございますのでお客様のお口に合うものを選べますよ」

    私の答えにどうやら満足言ってくれた様子で、店内へと入っていく女性。

    なんだかガヤから「女の子だけ扱いが違う」、等と聞こえてきますが、普通に接して頂ければ普通に接し返すのです。
 
    しかし、困りましたねぇ。私がいなくなった後に売り子を雇うというのもありなのでしょうか。

    私が思慮を巡らせていると、店内からニイナさんが出てきました。ニイナさんは若干興奮気味な様子で「看板娘キタコレ」等と呟いております。

    なんの事かと思っていると、ニイナさんの後ろから私と同じフリフリ衣装を着た五歳程度の少女が出てきました。どことなく髪の色や瞳など、ニイナさんに似ています。

「うちの娘よ」、少女を指さして自慢げに紹介するニイナさん。

「でしょうね」、何となく察していました。

    ふと、何だか周りが騒がしいなと思ったら少女の前に人だかりが出来ていました。

    そして「なんだこの少女は⋯⋯」、「可愛すぎる⋯⋯」
「売りの子交代したら?」「売り子の時代終わったな、てかあの子サービス悪いし」「次からこの子が看板娘」、と少女を絶賛する声と何故だか私を罵倒する声で包まれました。

「これは、うちの娘通用するかも⋯⋯!」

「小さい子には勝てませんね」、私はやれやれ、やっと出番が終わりそうだと安堵の気持ちに包まれました。

    やがて、ニイナさんから「ポン」、と肩に手を置かれました。

「用済み、レミリエルさん解雇」

「辞めたかったですけどその解雇の仕方は腹立ちますね⋯⋯」

    こうして、ストロ・ベリーには新たなニイナさんの娘という看板娘が出来て、私は無事に解雇という形になりました。

    ちなみにストロ・ベリーは新たな看板娘のおかげでめちゃくちゃ繁盛したそうです。
   
    なんか納得いかない⋯⋯。

しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

異世界ママ、今日も元気に無双中!

チャチャ
ファンタジー
> 地球で5人の子どもを育てていた明るく元気な主婦・春子。 ある日、建設現場の事故で命を落としたと思ったら――なんと剣と魔法の異世界に転生!? 目が覚めたら村の片隅、魔法も戦闘知識もゼロ……でも家事スキルは超一流! 「洗濯魔法? お掃除召喚? いえいえ、ただの生活の知恵です!」 おせっかい上等! お節介で世界を変える異世界ママ、今日も笑顔で大奮闘! 魔法も剣もぶっ飛ばせ♪ ほんわかテンポの“無双系ほんわかファンタジー”開幕!

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

異世界召喚されたけどスキルが地味だったので、現代知識とアイテムボックスで絶品料理を作ったら大商会になっちゃいました

黒崎隼人
ファンタジー
手違いで剣も魔法もない異世界に召喚された、しがない日本のサラリーマン、湊カイリ。 彼に与えられたのは、無限に物が入る【アイテムボックス】と、物の名前が分かる【鑑定】という、あまりにも地味な二つのスキルだけだった。 戦闘能力は皆無。途方に暮れるカイリだったが、異世界の食事が絶望的に不味いことを知り、大きなチャンスに気づく。 現代日本の「当たり前」の知識は、この世界ではとんでもない「宝」なのだと! 「醤油?味噌?そんなものがあれば、この世界の食文化はひっくり返るぞ!」 ひょんなことから出会った没落貴族の美少女・リリアナと共に、カイリは現代知識と地味スキルを駆使して屋台から商売をスタート。 絶品料理で人々の胃袋を掴み、さらには便利な生活用品を次々と発明していく。 伝説の神獣の幼体「フェン」やドワーフの鍛冶師など、頼れる仲間たちも加わり、彼らが立ち上げた「サンライズ商会」は瞬く間に大躍進! 迫り来る悪徳商会や腐敗した貴族の妨害も、現代のマーケティング術と知恵で痛快に打ち破る! これは、平凡なサラリーマンが異世界の常識を覆し、食と生活に革命を起こして一代で大商会を築き上げる、痛快成り上がりファンタジー! 美味しい料理と、もふもふな相棒、そして仲間との絆。 人生、逆転できないことなんて何もない!

真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます

難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』" ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。 社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー…… ……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!? ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。 「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」 「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族! 「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」 かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、 竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。 「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」 人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、 やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。 ——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、 「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。 世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、 最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕! ※小説家になろう様にも掲載しています。

異世界転生したおっさんが普通に生きる

カジキカジキ
ファンタジー
 第18回 ファンタジー小説大賞 読者投票93位 応援頂きありがとうございました!  異世界転生したおっさんが唯一のチートだけで生き抜く世界  主人公のゴウは異世界転生した元冒険者  引退して狩をして過ごしていたが、ある日、ギルドで雇った子どもに出会い思い出す。  知識チートで町の食と環境を改善します!! ユルくのんびり過ごしたいのに、何故にこんなに忙しい!?

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

処理中です...