13 / 62
第二章
紫藤さんに膝枕
しおりを挟む
……いないのかな?
やっぱ、見間違えだった?
戻ろうかなとも思ったけどやっぱりどうしても気になったので、とりあえずベンチの所までは確認してみようと思って足を進めた。
ゆっくりと慎重に進む僕の目の前に、ベンチに横たわる足の裏が見えた。頭が向こう側だから顔までは見えないけれど、あのピンクバイオレットが時々チラチラと見えるから紫藤さんに絶対間違いない。
やっぱりいた。
……眠ってるのかな?
そーっと起こさないようにさらに慎重に近づいてみた。
紫藤さんが、綺麗な瞳を閉じて気持ちよさそうに眠っている。
「紫藤さんのとこも自習なのかな……?」
覗き込む僕の瞳に、ベンチを歩くありんこが目についた。一匹だけだけど、そいつが紫藤さんの体に近づいて行っている。
僕は無意識に、アリから紫藤さんを守ろうと、そいつをペシッと叩き落とした。
「……えっ!?」
その僕の行為とほぼ同時に、反射的に紫藤さんが起き上がった。そしてびっくりしたような表情で僕を見て、だけどすぐに不思議そうな表情に変わった。
「……歩? お前、何でここにいるんだ……?」
まだ少し眠いのか、ちょっぴりぼんやりしながら額を手で擦っている。
「起こしちゃってすみません。……あの、僕ら今自習で、窓から紫藤さんが見えたから気になって……」
「ふうん……」
「あ、邪魔でしたよね! すみません。僕もう戻りますから」
「ちょっと待て!」
「っ、え?」
踵を返そうとしたところで呼び止められて、慌てて振り向いたので転びそうになった。
もちろん踏ん張ったけど。
「今、自習なんだな?」
「はい」
「てことは、教室に戻らなくても叱られないと」
「……はい」
多分。
「じゃあ、ちょっとこっち来い」
紫藤さんに手招きされて呼ばれた先は、芝生が青々と茂っているところだ。
紫藤さんはそこにポンポンと掌を当てて、何かを確認してそれから僕を見た。
「ここ、足投げ出して座れ。湿ってないし汚れないから」
「え? あ、はい」
何だろうと思いながら近づくと、紫藤さんは何やら考えた末その芝生の上に持っているハンカチを広げた。
「大丈夫だと思うけど万が一な」
え? 紫藤さんのハンカチの上に座れと?
「紫藤さん、あの。ハンカチなら僕持ってます」
「いいから、いいから。頼んでるのは俺なんだからそこに座れ」
「はい……」
何だか悪いなとは思ったけど、無理に僕の我を押し通すのもなんだか微妙な感じがしたので、僕は素直にそのハンカチの上に座った。
そしたらそこに、
その僕の太腿の上に、紫藤さんが頭を乗っけて寝転んだ。
やっぱ、見間違えだった?
戻ろうかなとも思ったけどやっぱりどうしても気になったので、とりあえずベンチの所までは確認してみようと思って足を進めた。
ゆっくりと慎重に進む僕の目の前に、ベンチに横たわる足の裏が見えた。頭が向こう側だから顔までは見えないけれど、あのピンクバイオレットが時々チラチラと見えるから紫藤さんに絶対間違いない。
やっぱりいた。
……眠ってるのかな?
そーっと起こさないようにさらに慎重に近づいてみた。
紫藤さんが、綺麗な瞳を閉じて気持ちよさそうに眠っている。
「紫藤さんのとこも自習なのかな……?」
覗き込む僕の瞳に、ベンチを歩くありんこが目についた。一匹だけだけど、そいつが紫藤さんの体に近づいて行っている。
僕は無意識に、アリから紫藤さんを守ろうと、そいつをペシッと叩き落とした。
「……えっ!?」
その僕の行為とほぼ同時に、反射的に紫藤さんが起き上がった。そしてびっくりしたような表情で僕を見て、だけどすぐに不思議そうな表情に変わった。
「……歩? お前、何でここにいるんだ……?」
まだ少し眠いのか、ちょっぴりぼんやりしながら額を手で擦っている。
「起こしちゃってすみません。……あの、僕ら今自習で、窓から紫藤さんが見えたから気になって……」
「ふうん……」
「あ、邪魔でしたよね! すみません。僕もう戻りますから」
「ちょっと待て!」
「っ、え?」
踵を返そうとしたところで呼び止められて、慌てて振り向いたので転びそうになった。
もちろん踏ん張ったけど。
「今、自習なんだな?」
「はい」
「てことは、教室に戻らなくても叱られないと」
「……はい」
多分。
「じゃあ、ちょっとこっち来い」
紫藤さんに手招きされて呼ばれた先は、芝生が青々と茂っているところだ。
紫藤さんはそこにポンポンと掌を当てて、何かを確認してそれから僕を見た。
「ここ、足投げ出して座れ。湿ってないし汚れないから」
「え? あ、はい」
何だろうと思いながら近づくと、紫藤さんは何やら考えた末その芝生の上に持っているハンカチを広げた。
「大丈夫だと思うけど万が一な」
え? 紫藤さんのハンカチの上に座れと?
「紫藤さん、あの。ハンカチなら僕持ってます」
「いいから、いいから。頼んでるのは俺なんだからそこに座れ」
「はい……」
何だか悪いなとは思ったけど、無理に僕の我を押し通すのもなんだか微妙な感じがしたので、僕は素直にそのハンカチの上に座った。
そしたらそこに、
その僕の太腿の上に、紫藤さんが頭を乗っけて寝転んだ。
19
あなたにおすすめの小説
フードコートの天使
美浪
BL
西山暁には本気の片思いをして告白をする事も出来ずに音信不通になってしまった相手がいる。
あれから5年。
大手ファストフードチェーン店SSSバーガーに就職した。今は店長でブルーローズショッピングモール店に勤務中。
そんなある日・・・。あの日の君がフードコートに居た。
それは間違いなく俺の大好きで忘れられないジュンだった。
・・・・・・・・・・・・
大濠純、食品会社勤務。
5年前に犯した過ちから自ら疎遠にしてしまった片思いの相手。
ずっと忘れない人。アキラさん。
左遷先はブルーローズショッピングモール。そこに彼は居た。
まだ怒っているかもしれない彼に俺は意を決して挨拶をした・・・。
・・・・・・・・・・・・
両片思いを2人の視点でそれぞれ展開して行こうと思っています。
好きな人がカッコ良すぎて俺はそろそろ天に召されるかもしれない
豆ちよこ
BL
男子校に通う棚橋学斗にはとってもとっても気になる人がいた。同じクラスの葛西宏樹。
とにかく目を惹く葛西は超絶カッコいいんだ!
神様のご褒美か、はたまた気紛れかは知らないけど、隣同士の席になっちゃったからもう大変。ついつい気になってチラチラと見てしまう。
そんな学斗に、葛西もどうやら気付いているようで……。
□チャラ王子攻め
□天然おとぼけ受け
□ほのぼのスクールBL
タイトル前に◆◇のマークが付いてるものは、飛ばし読みしても問題ありません。
◆…葛西視点
◇…てっちゃん視点
pixivで連載中の私のお気に入りCPを、アルファさんのフォントで読みたくてお引越しさせました。
所々修正と大幅な加筆を加えながら、少しづつ公開していこうと思います。転載…、というより筋書きが同じの、新しいお話になってしまったかも。支部はプロット、こちらが本編と捉えて頂けたら良いかと思います。
完結·氷の宰相の寝かしつけ係に任命されました
禅
BL
幼い頃から心に穴が空いたような虚無感があった亮。
その穴を埋めた子を探しながら、寂しさから逃げるようにボイス配信をする日々。
そんなある日、亮は突然異世界に召喚された。
その目的は――――――
異世界召喚された青年が美貌の宰相の寝かしつけをする話
※小説家になろうにも掲載中
聖女の兄で、すみません!
たっぷりチョコ
BL
聖女として呼ばれた妹の代わりに異世界に召喚されてしまった、古河大矢(こがだいや)。
三ヶ月経たないと元の場所に還れないと言われ、素直に待つことに。
そんな暇してる大矢に興味を持った次期国王となる第一王子が話しかけてきて・・・。
BL。ラブコメ異世界ファンタジー。
伯爵令息アルロの魔法学園生活
あさざきゆずき
BL
ハーフエルフのアルロは、人間とエルフの両方から嫌われている。だから、アルロは魔法学園へ入学しても孤独だった。そんなとき、口は悪いけれど妙に優しい優等生が現れた。
最弱白魔導士(♂)ですが最強魔王の奥様になりました。
はやしかわともえ
BL
のんびり書いていきます。
2023.04.03
閲覧、お気に入り、栞、ありがとうございます。m(_ _)m
お待たせしています。
お待ちくださると幸いです。
2023.04.15
閲覧、栞、お気に入りありがとうございます。
m(_ _)m
更新頻度が遅く、申し訳ないです。
今月中には完結できたらと思っています。
2023.04.17
完結しました。
閲覧、栞、お気に入りありがとうございます!
すずり様にてこの物語の短編を0円配信しています。よろしければご覧下さい。
弟がガチ勢すぎて愛が重い~魔王の座をささげられたんだけど、どうしたらいい?~
マツヲ。
BL
久しぶりに会った弟は、現魔王の長兄への謀反を企てた張本人だった。
王家を恨む弟の気持ちを知る主人公は死を覚悟するものの、なぜかその弟は王の座を捧げてきて……。
というヤンデレ弟×良識派の兄の話が読みたくて書いたものです。
この先はきっと弟にめっちゃ執着されて、おいしく食われるにちがいない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる