僕の王子様

くるむ

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第五章

おまじない…

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僕の目の前にある綺麗な澄んだ瞳。スッと通った鼻筋に、色っぽくて形のいい唇。

こんな綺麗な男の人が本当に存在するんだなって、礼人さんを見ていると何度も何度もそう思ってしまう。

するり。
ピクン。

礼人さんの綺麗な指先が、僕の頬を撫でた。
何度も頬を行き来するその指のせいで、引きかけていた僕の頬の熱がまたじわじわとぶり返してきている。
ううう……、恥ずかしい。

でも……、うれしいし気持ちいいからやめて欲しくは無いけど。


「……おまじない、しておいてやろうか?」
「おまじない?」

至近距離で僕を見つめる綺麗な瞳がキラキラと輝いている。
うっとりと、僕の瞳は礼人さんのそれに引き込まれて、離すことが出来ない。

「そう、おまじない。緊張しないであっという間に終わって、そんでもって盛り上がるおまじない」
「……そんなおまじない、あるんですか?」
「あるよ。ホラ、目閉じてみな」
「…………」

ゆっくりと微笑む礼人さんのその表情がなんだかとても色っぽくて、僕はドキドキしながら言われたとおりに目を閉じてみた。


ふわり……。

あ……。

びっくりしてピクンと体が反応した。

ふわりと優しく僕の唇に押し当てられた柔らかく温かい感触。
柔らかく何度も食むように啄まれて、頭も体も沸騰したように熱くなった。


キ……、キス!
キスされてるよ、僕!

うれしさと緊張と興奮で、ボムッと正常な思考回路がショートした。
固まって上手く力の入らない指で、礼人さんの腕を必死で掴む。

それにほんの少しクスリと笑った礼人さんが、硬直した僕の後頭部に掌をあてがい支えてくれた。


「礼人さ……」
「――黙って。もうちょっと」
「……え? !?」

し……、し、舌!!


ぼ……、僕の口の中に礼人さんの舌が入ってきてるーーーーーーっ!!


熱く柔らかく。
そして少しざらざらとした弾力のある艶めかしいそれが、僕の舌を甘く絡めとる。


舐めてなぞって絡めとり……、息も絶え絶えな僕は、礼人さんにされるがままただただ翻弄され続けた。



「……ふっ、あ……」


「かわいい……」


ぼんやりと開いた僕の目に映るとても綺麗な顔。
そんな綺麗な人が、僕なんかに「かわいい」だなんて……。


「歩……」
「礼人……さん」

僕の名を呼びながら、礼人さんが掌で僕の頬をするりと撫でる。そしてそのままその手のひらを首筋に下ろした。

ビクン!

何かに反応したように、体が突然跳ねた。
な、なにコレ!?

「あー、もう! 可愛くてたまんねーな歩は」

言うなりグイッと引き寄せられて、ギュッと抱きしめられた。

 
どうしよう、熱いよ。体中が沸騰したように熱い。

――でも、その熱さが不思議と心地いい。

礼人さんの背中に腕を回す。僕だけじゃなくて、それ以上に熱い礼人さんの体も……、凄く凄く心地よかった。
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