無自覚美少年の男子校ライフ♪

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無自覚美少年の男子校ライフ♪

嫉妬という名の不安2

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昼休み。
学食に向かう人たちや、そのまま持参した弁当を広げる者。 
だいたいがほぼ同じ面々だ。
僕らは学食派なので、財布を手に廊下へと出る。

いつもは僕は蓮先輩と途中で合流するか、学食の入り口で蓮先輩を待って浩太たちとは別々に席に着くんだけど、今日はあの光景が頭から離れなくて先輩と2人きりにはなりたくないと思った。

だって、どうしても気になっちゃうじゃないか…。
もしかしたらあの取り巻きの彼と、付き合っていたことがあるんじゃないかとか、彼の方はまだ蓮先輩の事を好きなんじゃないかとか…。
そんな嫉妬にまみれた事を、思い余って先輩に聞いてしまいそうで怖かった。


「伸之助」

僕がそんな暗くじめじめした事を考えているだなんて思いもしない先輩は、いつものように明るく僕を呼び止める。
それに一瞬身構えてしまって、僕は思わず傍にいた候のシャツを掴んでしまった。

「え?」

それに候が驚いて、彼のシャツを握りしめる僕の手に視線を送る。そしてその後眉間にしわを寄せ、その状況を見つめる蓮先輩を確認し、また視線を僕の手に戻し目をぱちくりさせた。そしてポコリと僕の額を小突く。

「今更変に恥ずかしがんな。会長に俺が睨まれるだろ? ホラ、行って――」
「たまには大勢で食おうぜ」
候の言葉に被せるように、浩太がそう提案した。

浩太がまるで睨むように蓮先輩を見てそう言ったので、僕の居た堪れなさは更に増し、視線を蓮先輩に持って行く事が出来なかった。
そんな僕の態度に先輩も何か感じることがあったのか、「分かったよ」とため息交じりに了承する。

その微妙な雰囲気に、僕の心臓がギュッと痛んだ。

…何やってるんだろ、僕…。
勝手にいじけて嫉妬して、こんなの…。

「だけどな――」

候のシャツを掴んでいる僕の手を、誰かの手がいきなり覆う。ビックリして顔を上げると、困ったような顔をした蓮先輩が、僕を見ていた。

「その手が掴むのは、そこじゃないだろ」

まるでさも当然と言わんばかりに、蓮先輩の手が僕の手をギュッと握った。そして僕を引き寄せて歩き出す。
その途中途中で出会うほとんどの人が、先輩に当たり前のように声をかけて行く。
同級生らしき人はからかい気味に、そして下級生は眉根を寄せて僕を見て、だけど先輩には「こんにちは」とにこやかに挨拶をして行くのだ。
その波がようやく途切れた時に、先輩がやっと僕の顔を覗き込んでくれた。

「何かあったのか?」
「あ…。や…」

どうしよう。なんて言ったらいいんだろう。
こんなどす黒い醜い気持ち、先輩に言えるわけがない。
そんな事知られたら、きっと引かれてしまうし嫌われるかもしれない…。

メンドクサイ奴だって…。

「あー、蓮さまー。今から学食ですか? …と、あ~」
「バカ。もう、俺らとは今までみたいには出来ないんだから!」

「一葉」

あ…。
彼の顔を見た途端、僕の心臓がドクンと跳ねた。

さっき、先輩と一緒に居たあの人…。
一葉…って言うんだ。
間近で見ると、ホントに可愛い人だよな、男だなんて思えないくらい。

特別な会話をしているわけでもないのに、三人でにこやかに話す姿に気持ちがだんだん塞いでくる。
しかもさっきから蓮先輩とは手を繋いだままなので、間近で彼らを見る羽目に陥り僕の気持ちはさっきから下降線の一途をたどり続けていた。

「いつまで話し続けてるんだよ。いい加減、腹減ってんだけど」

浩太の不機嫌な声に、一葉とか言う人とその連れ…石田とか呼ばれてたっけ。その二人が、「え?」という顔をして浩太を見た。

「今日は2人っきりじゃないんですか?」
「ああ、たまにはね」

にこやかに答える先輩に、石田が「じゃあ」と勢いづく。

「2人っきりじゃないんなら、こっちも一緒で良いですよね」
「え?」
思わずドキッとして、声が漏れてしまった。
そんな僕に、石田が軽く睨むように僕を見た。

「おい、石田。蓮さまに迷惑かけたらダメだろ?」
「なんだよ。そりゃ付き合ってる人を優先するのは当然かもだけど、向こうは友達連れなんだろ? だったら俺らも一緒だって構わないじゃないか」

ある意味正論をかます石田に、僕らは何も言えなかった。

「まあ、たまにはいいか。な、伸之助」

蓮先輩が僕の手を握りなおして、僕をクイッと引き寄せた。その反動で僕の体が先輩の胸の中に一瞬すっぽりと収まる。
視界の縁に、一葉のキュッと結ばれた唇が目に入った。


やっぱり、彼はまだ先輩の事が好きなんだ…。

僕の胸に、言いようのない鈍い疼きが広がって行った。 
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