悪行を重ねた令息は断罪されたくないので生き方を変えました。誰の愛も欲しがらないと決めたのに、様子がなんだか変なんです

くるむ

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第一章

これからは邪魔しないよ

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 交流会が近づくにつれ、浮き足立つ人たちが増えてきた気がする。その中には玉砕して、消沈している人も見かけることは見かけるのだけど。
 まあ、僕は壁の花確定だから今更焦るも何もないんだけどね。

 エリックがフローラ譲と交流会に着ていくドレスのことで盛り上がっていたので、僕はトイレに行ってくるねと言って席を立った。
 フローラ嬢は僕が有名な癇癪持ちだとわかっていたようなのに、エリックが友達と紹介すると受け入れてくれて、エリックが居ない所で僕とはち合わせをしてもあいさつをしてくれるようになった。エリックが好きになるだけあって、優しいいい子だ。

 トイレから出て教室に向かう途中でブライアンを見かけた。どうやら呼び出されて交流会のパートナーに誘われたようだ。離れていく令嬢の様子を見るに、どうやら断られたようだ。
 彼にはジェイミーがいるからな。かわいそうに。

 なんて思いながら見ていると、ブライアンと目が合ってしまった。

 しまったと思ったけれど、ジェイミーがいない今ならブライアンに一言ぐらいは言えるような気がした。僕が近づくと、ブライアンは一瞬身構えるような態度をとった。

 まあ、そうなるよね。

「ブライアン、ちょっとだけいいかな」
「何?」
 警戒しているのか眉を寄せる。

「今までごめんね」
「えっ?」
「君にはジェイミーがいるのにうるさくまとわりついて。これからは邪魔しないから」
「えっ、いや……」
 突然の謝罪に驚いたのか、ブライアンは困惑した表情だった。
「じゃ、それだけだから」 

 これでいい。僕から話しかけなければブライアンとこれから接することはないだろう。
 誰からも好かれるブライアンに、憧れがなかったわけじゃない。だからちょっぴり寂しい気もするけれど、それだけだ。
 毒殺される未来なんかよりもずっといい。
 
 僕は吹っ切るようにして、教室まで走った。


 
 今日は久しぶりにエリックと自習室に来ていた。勉強を教えてもらうためだ。向かい側にはフローラ嬢とエリックのいとこのキャトリン嬢が座っている。

「良かったのかい? フローラ嬢と2人で話すこととかあるんじゃないの? ほら、交流会のこととか」
 2人に聞こえないようにボソッと小さくささやいた。
「別に大丈夫です。それに僕らまだ始まったばかりなので、みんなと一緒で、彼女と話すことに慣れる方が嬉しいです」
「そういうものなの?」
「そういうものです」

「よう、勉強か? 頑張ってるな」
「ひゃっ!」
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