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第一章
エリックの好きな子
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「ところで、君の名前は?」
エイドリアンがにゅっと顔を出してエリックに聞いた。
「は、はじめまして、エイドリアン様。エリック・L・グリーンです」
「エリックか、よろしくな」
「ついでで悪いがタイソン・チャップリン・インマンだ、よろしくな」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
エリックは緊張しているみたいだ。
それはそうだよな。いきなり公爵家の、しかも目立つエイドリアンから声をかけられたらびっくりするに違いない。
それにしても、交流会か。どんなに頑張っても僕にパートナーはできるわけないし、おとなしく壁の花でいるかな。いや、僕なんかじゃ花にもなれないか。
昼食を終えた僕らは、エイドリアンらと別れて教室に向かった。
「エリックは、誰か誘いたい相手はいるの?」
「僕ですか? そんなの考えたこともないです」
「好きな子とかいないの?」
「……かわいいなと思う子はいますけど」
「ええっ、本当? 誰、誰」
「しーっ、大きな声出さないでくださいよ」
「ご、ごめん。教えてもらってもいい?」
「誰にも言わないでくれますか?」
「もちろん!」
うんうんと、僕は首を縦に振った。
「フローラ・エミリー・クレーブン。僕のいとこの友人です」
「フローラ嬢? いとこの友人って、君とは仲いいの?」
「仲がいいという段階ではないです。いとこも一緒にお茶を2、3回したくらいですから」
「お茶を2、3回したくらいって、……かわいい子なんだ?」
「はい。目立つことはないんですけど、どちらかというと控えめなタイプだし。でも僕に言わせると、とても愛らしい子なんです」
フローラ嬢の話をするエリックの目はとても優しい。
本当は、言ってるよりもかなり好きなんじゃないだろうか。
「今度頑張って、パートナーを申し込んだらどうだい?」
「えっ? いえ、急に僕なんかに申し込まれたら、彼女びっくりしちゃいます」
「びっくりしたっていいじゃん! 僕だったら、君に申し込まれたら嬉しいよ?」
「えっ?」
エリックの目が真ん丸になった。なんだ、本気にしちゃった?
「例え話だよ。それくらいエリックは自信を持っていいってことだ」
「ありがとうございます。でもやっぱり自信ないです」
「そんなこと言って。ぐずぐずしてるうちにフローラ嬢が誰かに誘われても良いのか?」
「――それは、嫌ですけど」
「だろ? だったらがんばらないと。――気を付けるのはさ、しつこくしないってことだけだよ。僕はそれで失敗しちゃったから」
大事な僕の親友のためだ。彼が失敗しないようにと、僕にできる助言もしっかりした。
エリックはじっと僕の顔を見ている。
「ショーン様ありがとうございます。あっ、」
「何、どうしたの?」
「フローラです」
エリックの視線の先には、控えめな感じのおとなしそうな子が、友人らしき人とおしゃべりしながら歩いていた。
「……僕、頑張って行ってきます」
「友達と一緒みたいだけど大丈夫?」
「大丈夫です。あれ、いとこなんで」
エリックは僕ににこっと笑って、彼女たちの元に走っていった。
どうなるだろうとドキドキしながら見ていたけれど、エリックはどうやらフローラ嬢にちゃんと申し込むことができたようだ。彼女の顔が真っ赤になり、こくこくと頷いている。どうやら彼の申し込みは成功したようだ。
やったねという思いで拳を振ると、それに気がついたエリックが真っ赤な顔で僕にピースサインをした。
エイドリアンがにゅっと顔を出してエリックに聞いた。
「は、はじめまして、エイドリアン様。エリック・L・グリーンです」
「エリックか、よろしくな」
「ついでで悪いがタイソン・チャップリン・インマンだ、よろしくな」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
エリックは緊張しているみたいだ。
それはそうだよな。いきなり公爵家の、しかも目立つエイドリアンから声をかけられたらびっくりするに違いない。
それにしても、交流会か。どんなに頑張っても僕にパートナーはできるわけないし、おとなしく壁の花でいるかな。いや、僕なんかじゃ花にもなれないか。
昼食を終えた僕らは、エイドリアンらと別れて教室に向かった。
「エリックは、誰か誘いたい相手はいるの?」
「僕ですか? そんなの考えたこともないです」
「好きな子とかいないの?」
「……かわいいなと思う子はいますけど」
「ええっ、本当? 誰、誰」
「しーっ、大きな声出さないでくださいよ」
「ご、ごめん。教えてもらってもいい?」
「誰にも言わないでくれますか?」
「もちろん!」
うんうんと、僕は首を縦に振った。
「フローラ・エミリー・クレーブン。僕のいとこの友人です」
「フローラ嬢? いとこの友人って、君とは仲いいの?」
「仲がいいという段階ではないです。いとこも一緒にお茶を2、3回したくらいですから」
「お茶を2、3回したくらいって、……かわいい子なんだ?」
「はい。目立つことはないんですけど、どちらかというと控えめなタイプだし。でも僕に言わせると、とても愛らしい子なんです」
フローラ嬢の話をするエリックの目はとても優しい。
本当は、言ってるよりもかなり好きなんじゃないだろうか。
「今度頑張って、パートナーを申し込んだらどうだい?」
「えっ? いえ、急に僕なんかに申し込まれたら、彼女びっくりしちゃいます」
「びっくりしたっていいじゃん! 僕だったら、君に申し込まれたら嬉しいよ?」
「えっ?」
エリックの目が真ん丸になった。なんだ、本気にしちゃった?
「例え話だよ。それくらいエリックは自信を持っていいってことだ」
「ありがとうございます。でもやっぱり自信ないです」
「そんなこと言って。ぐずぐずしてるうちにフローラ嬢が誰かに誘われても良いのか?」
「――それは、嫌ですけど」
「だろ? だったらがんばらないと。――気を付けるのはさ、しつこくしないってことだけだよ。僕はそれで失敗しちゃったから」
大事な僕の親友のためだ。彼が失敗しないようにと、僕にできる助言もしっかりした。
エリックはじっと僕の顔を見ている。
「ショーン様ありがとうございます。あっ、」
「何、どうしたの?」
「フローラです」
エリックの視線の先には、控えめな感じのおとなしそうな子が、友人らしき人とおしゃべりしながら歩いていた。
「……僕、頑張って行ってきます」
「友達と一緒みたいだけど大丈夫?」
「大丈夫です。あれ、いとこなんで」
エリックは僕ににこっと笑って、彼女たちの元に走っていった。
どうなるだろうとドキドキしながら見ていたけれど、エリックはどうやらフローラ嬢にちゃんと申し込むことができたようだ。彼女の顔が真っ赤になり、こくこくと頷いている。どうやら彼の申し込みは成功したようだ。
やったねという思いで拳を振ると、それに気がついたエリックが真っ赤な顔で僕にピースサインをした。
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