悪行を重ねた令息は断罪されたくないので生き方を変えました。誰の愛も欲しがらないと決めたのに、様子がなんだか変なんです

くるむ

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第一章

苦い記憶

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「おい、アラン。向こうに二つ席が空いているから、レオと一緒に座ってこいよ」
「えっ?」
「これだけ混んでいると、とてもじゃないけど4人一緒の席を探すのは面倒だ。俺とタイソンはこっちに座るから」
「ああ、わかった」
 兄上はちらりとこちらに視線を向けた後、レオと一緒にエイドリアンが指した席へと向かった。

 エイドリアンは僕の隣に腰掛けた。タイソンはその隣に。
 そのせいなのかなんなのか、ジェイミーたちは静かになった。時々授業の話をする声が聞こえてくる程度だ。

「そういえば、一月後に交流会があるんだけど知ってるか?」
 エイドリアンが僕の方に顔を向けて聞いた。長い睫毛が目について、ちょっぴりドキッとした。

 これだから顔のいい人は嫌なんだ。今までの僕だったらちょっと気を抜くと、こんな風に間近で話しかけられただけできっと変な期待をしたはずだ。

「……き、聞きましたよ。ようするに、政略結婚で婚約した人たちの交流を目的としたパーティーでしょう? 一応全員参加なので参加はしますけど、僕には関係ないものです」

「そんなことはないさ」
「えっ?」
「婚約者はいなくても、貴族には将来的に社交が必須だろう? その練習と捉えればいいさ。この学園のみんなに交流は必要だ。それに、この交流会で気になってる相手をパートナーに申し込むことで、その後進展していく可能性もあるだろう?」

「まあ、そうですね」

 相槌を打ちながらも、僕は苦々しい気分になる。
 ああ、嫌だな。黒歴史をやり直さないといけないなんて。

 この交流会でも僕は必死だった。ブライアンにパートナーになって欲しくて、ジェイミーとあちらこちらで言い争いをしていた。おかげで余計に、ブライアンに嫌われていったんだよな。
 ため息しか出ない。 

「エイドリアンは、パートナー決まったのか?」
 パンを頬張りながら、タイソンが聞いた。
「いや、まだ」
「あれだけたくさん申し込まれると、やっぱりなかなか決められないか?」
「というか、ちょっと様子見してる」
「これだからな、モテる奴は」
「そうでもないよ」

 タイソンの言う通り、エイドリアンはモテる。精悍だけど、色気ある顔つきが人目をひくのだ。それに加えて気さくな人柄にギャップを感じる人が多いのだろう。ブライアンとは違う意味でモテる人だ。

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